演題情報

特別講演

開催回
第60回・2015年・横浜
 

「腎性貧血」から「CKDに伴う貧血」へ

演題番号 : SL-1-1

平方 秀樹:1

1:福岡赤十字病院

 

1977年、Miyakeらは、再生不良性貧血患者から採取した約2.6トンもの大量の尿から高力価エリスロポエチン(EPO)蛋白の純化・精製に成功したことを発表した.この業績を基礎にrHuEPOが誕生し、erythropoiesis stimulating agent (ESA) 時代が始まった.発売開始25年、欧米で行われた、ヘモグロビン濃度(Hb)正常化を目指す大規模臨床試験の結果はすべてネガティブで、Hbの自在なコントロールとEPOの直接的な細胞保護効果への期待は見事に覆された.欧米ではESA治療に強い挫折感が漂い、KDIGOは鉄剤投与をESA投与よりも優先させる貧血治療ガイドライン(GL)を提示した.わが国では正常値までの高Hbを目指す臨床研究は行われなかったが、ダルベポエチンの治験に際して行われた比較的高いHbを目指した臨床研究では高Hb群で腎死率が抑制されることが明らかになり、心血管合併症や癌死の増加などの問題は生じなかった.外来透析におけるESA包括化以後、鉄剤投与が増加したが、極めて低用量で、フェリチン値は低値に留まり、しかも、“適正な”Hbを維持している.欧米との国際比較研究、DOPPSは、わが国の透析患者粗死亡率が依然として最も低いと報告した.
ESA治療において、わが国と欧米では目標Hbや鉄剤投与や鉄管理について見解を異にする.また、欧米と共通して臨床課題になっているのはESA低反応性の問題である.低反応性を評価する指標として、TSAT低値、CRP高値、血清アルブミン低値などが利用され、鉄欠乏を除けば、炎症・低栄養に関する因子がほとんどである.低反応例でESAが過剰に投与されると有害事象が発生する.この際、造血効率が評価できれば無用なESA投与を回避できる可能性がある.そのバイオマーカーが模索され、特に、肝で生成される鉄代謝調節蛋白、ヘプシジンや、新たに発見された骨髄造血細胞由来のエリスロフェロンなどが期待されている.また一方で、この状況で造血効率を促進して貧血を是正する治療法としてヘプシジン抑制薬が検討されている.
我々のGLは “腎性貧血”治療に限定してきた.しかし、実臨床の対象は“CKDに伴う貧血”の治療で、常にESA抵抗性の病態を包含している.この立場での目標Hbや鉄剤投与と鉄管理への姿勢を示す必要がある.次回改訂へのテーマを考えてみたい.

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