発表

3A-004

擬態語性格尺度」は何を測っているか(2) 「緩やかさ」尺度に関する事例的検討

[責任発表者] 向山 泰代:1
[連名発表者] 小松 孝至:2, [連名発表者] 酒井 恵子:3, [連名発表者] 西岡 美和:4
1:京都ノートルダム女子大学, 2:大阪教育大学, 3:大阪工業大学, 4:甲南女子大学

目 的
 性格を表す擬態語は、日常生活でのどのような行動と関連し、いかなる感情や印象を伴って使用されているのだろうか。女子大学生への面接調査をもとに一連発表(1)では、擬態語性格尺度(小松ら, 2012)の淡白さ尺度について検討した。本発表では淡白さと同様、Big Fiveとの関連が相対的に低い緩やかさ尺度を取り上げ、この尺度の意味内容を分析・考察する。なお、緩やかさ尺度については、FFPQ(5因子性格検査(FFPQ研究会, 2002)の外向性(r=-0.31)と統制性(r=-0.17)に弱い負の相関がみられ(小松ら, 2012)、大学生の親しい同性友人ペア間でのリーダー/フォロワー認知に関する調査では、フォロワー役割との関連が示されている(小松ら, 2016)。
方 法
研究協力者:擬態語性格尺度を用いた3種の調査(A.調査協力者の自己評定、B.調査協力者による友人評定、C.友人による自己評定)の回答が有効であった215名(男子23名、女子192名)のうち、面接への参加協力が得られた女子33名。なお、“友人”として、調査協力者の親しい友人で、高校から現在までの間のどこかで付き合いのある(あった)、同年代、同性のよく知っている人物を選んで回答するよう教示した。
面接手続きと内容:2011年7月~2012年2月に、本発表者のうち女性2名が個別の半構造化面接を実施。友人評定(上記Bの調査)で「友人の性格によく当てはまる(評定値5か4)」と評定された語から2語を選び、「友人の○○という特徴を表す具体的エピソード」「友人の○○という面をどう思うか」等を尋ねた(○○は擬態語)。面接時間は平均21分、内容はメモとICレコーダに記録し、後に逐語録として文章化した。
結 果
 友人の緩やかさについて面接を受けた研究協力者は15名であった。選出されたのは、ほんわか・おっとり・のほほん・のんびり・ふんわり・まったり(各2名)、ぼんやり・ふわふわ・ぼうっとした・ぼけっとした(各1名)の語であった。逐語録から、上述の擬態語に関連する友人の具体的行動や特徴、それらに対する研究協力者の感情や印象を抜き出し、比較・検討しながら内容が共通すると思われる記述をまとめた。以下、内容のまとまりごとに3つに分けて結果を報告する。
1.行動のペース・テンポの緩慢さ 最多は動作や反応の遅さ・焦らなさについての語り(7名)であり、食事や移動のスピード、手紙やメールの返信、会食でのメニュー決定、遅刻といった例が挙げられた。また、例示された具体的行動(提出物への取組み、学校に来ない等)から、遅さ・焦らなさに関連した表現と思われる“マイペース”を挙げた者も3名いた。これらに対し、「せかせかしてない」「急かさない」と比較的ポジティブな捉え方がある一方で、「のんびりし過ぎ、遅い」「自分に迷惑がかかるんだったらちょっと、と思う」といった批判や嫌悪に近い感情や、「待たせる」「予定が決まらない」「揉める」「怒らせる」等の表現を伴って対人的な揉め事を想起した者もいた。また、「大丈夫かな」「焦る」「ドキドキ」「心配になる」「お節介に言ってしまう」といった発言もあり、遅さや焦らなさといった行動が、他者の心配・焦燥感情や援助行動を喚起することが示された。その他、話し(しゃべり)方・受け答えのペースやテンポを挙げた者も5名と多く、これらに対して「落ち着く」「一緒にいて安心」「一緒にいて楽」「知的過ぎず、冷たく感じない」「厳しくない、きつそうな雰囲気でない」といったポジティブな感情や印象が語られた。
2.対人面での受容性・控えめさ・優しさ ここには6名の語りが含まれ、中でも“話を聞く”行動を挙げた者が3名と多かった。その他、“きつく話をしない”“怒らない”“ニコニコ”“大人しい“私の半分後ろにいつもいる”“気配りが細かい”等の行動や、“柔らかい”“何でも受け入れてくれる”といった印象もあった。これらに対し、「なごむ」「落ち着く」「接しやすい」「話しやすい」「一緒にいて気を遣わない」「居心地が良い」等のポジティブな感情や印象と併せ、友人間での揉め事が予測される場面で、緩やかな人の存在が「周囲を和やかにする」「問題が起きずに済む」「助かる」「険悪な雰囲気にしない」といった緊張緩和をもたらす可能性が示された。
3.注意の散漫さ・抜け ここには4名の語りが含まれた。“しゃべっている時に聞いていない”“しゃべっているのにわれ関せず”“授業中にあたったのに気づかない”“当番を把握していない”“人に言われて気づく”等の行動が繰返し生起することが語られ、これらに対し、「ちょっとだけイラッと」「トンチンカン」「能天気」「完璧人間じゃない」「つっこめる感じがすごくいい」「もう、しょうがないな、みたいな感じ」等の感情や評価に加え、「発破かけたくなる」「お姉さんみたいな気持ちになる」「世話をしてあげたくなる」等の援助や保護に関わる感情や行動が誘発されることを示唆する発言があった。
以上に加え、旅行や遊びの際に計画を立てない自在さ、落着きや冷静さ、丸々した・派手でない等の見た目(各2名)、よく寝る・ゴロゴロ等の非活動性(1名)への言及もあった。
考 察
性格を表す擬態語から想起された具体的な行動や感情、印象等についての事例的な分析を通じ、緩やかさの3つの主たる側面をまとめることができた。各側面の違いから、擬態語が広汎な内容を含むことが再確認された。緩やかさは、周囲の人々にポジティブとネガティブ両方の感情や評価を生じさせ、援助・保護・世話に関連する感情や行動を喚起すること、緩やかな人物の存在やその行動が、対人場面でのトラブル抑制や緊張緩和といった積極的機能を果たす可能性が示された。

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