発表

2D-083

グループ学習における教師の支援の効果(1)—グループ学習中の行動に焦点を当てた国語・算数間の比較—

[責任発表者] 児玉 佳一:1,2
[連名発表者] 車田 梓#:1
1:東京大学, 2:日本学術振興会

目   的
 協働学習は認知的側面,社会的側面の双方に効果的な学習方法とされている。近年では,学習者の主体的・能動的な活動だけでなく,その学習者を支える教師についての関心も高まっている(秋田・一柳・石橋・児玉・松木・中谷, 2016)。
 協働学習における教師の支援,特にグループ学習における支援の効果について,例えば,観察による事例研究(e.g., Chiu, 1999; 2004)や質問紙による研究(出口, 2002)がある。質問紙による研究に着目すると,これらの研究では,「討議に関する指導」と「参加・協力に関する指導」など,教師の支援行動が抽象化されており,具体的な教師の支援の影響を検討できていなかったり,特定の教科(e.g., 理科)に焦点が当てられており,教科間による相違が検討されていなかったりする。また,観測値の独立性が捨象された分散分析が行われており,統計的な問題点も指摘できる。
 そこで本研究は,国語科と算数科において,教師の具体的な支援行為を項目として設定した質問紙調査でその効果を検討する。分析には教師間変動を考慮してマルチレベル分析を採用する。本研究では学習者の「グループ学習中の行動」と「教師の支援」の関係に焦点を当てて報告する。
方   法
 調査協力者 関東および東北の小学校3校の4~6年生16学級の児童および担任教師に回答を依頼した(児童:459名)。調査は2016年12月~翌年3月に行った。
 調査内容 (1)児童版質問紙:国語科および算数科において,普段のグループ学習中の行動頻度(意見表出,説明,質問,指名,賞賛,談笑,言い争い,拒否:出口, 2002,2項目ずつ),教科へのポジティブな態度(2項目),共感性(認知的・情緒的:4項目ずつ),教科得意度(1項目ずつ),グループ学習が得意な程度(1項目),グループ学習が好きな程度を尋ねた。(2)教師版質問紙:国語科および算数科において,普段のグループ学習中の支援行動頻度(挑戦促進,アドバイス,状況確認,一時的参入,賞賛,援助促進,目的確認,一時的解体,見守り:児玉, 2015などを参考に作成,3項目ずつ)を尋ねた。いずれも6件法である。
結   果
 信頼性と級内相関の確認 各変数の信頼性を確認し,信頼性を低下させる項目については適宜削除した(αs<.72)。また,目的変数となる“グループ学習中の行動”における各変数の級内相関は算数における“意見表出”を除いて.01以上であり,マルチレベル分析の適用に値すると判断した(算数“意見表出”でも便宜的にマルチレベル分析を行った)。
 マルチレベル分析 レベル1の説明変数は事前に全サンプルを用いた重回帰分析(ステップワイズ法)より選定した。マルチレベル分析では,教師の支援行動を投入しないモデルによって有意な教師間変動のある変数を確認した上で,教師間変動が確認された変数に対して教師の支援行動をレベル2として投入した。推定法には制限つき最尤法を用いた。
 分析の結果,直接効果については,「意見表出」において算数では教師間変動が有意とならない一方で国語科では有意となり,“挑戦促進(γ01=-0.61, SE=0.28)”や“状況確認(γ03=1.83, SE=0.45)”など6つの教師の支援の効果が確認された。また,「言い争い」における“状況確認”については,国語科では負の効果を示す一方で(γ03=-1.43, SE=0.55),算数科では正の効果を示す(γ03=1.60, SE=0.41)など教科によって異なる支援の効果も示された。調整効果については,一方の教科でのみ教師間変動が有意となる変数が多数確認された。例えば,国語科においては“アドバイス”が調整効果をもつ変数が2つ確認され,算数科においては“賞賛”が調整効果をもつ変数が3つ示された(Figure 1は特に効果の大きい交互作用効果を示す)。
考   察
 まずレベル1の効果として,先行研究ではグループ学習において認知的共感性の重要性が指摘されてきた(e.g., 出口, 2002; 倉盛, 1999)。一方で本研究では情緒的共感性の効果も示された。特に「説明」や「言い争い」といった社会的側面には情緒的共感性が関与しているといえる。
 直接効果として,教科によってグループ学習中の行動への有意な教師の支援の効果が異なっていた。特に,「言い争い」に対しては,同じ支援であるにもかかわらずその効果の正負が異なることも示された。また,調整効果においても教科によって有意となる部分が異なっていた。これらの結果は,教科に即したグループ学習における教師の支援のあり方を考える必要を指摘する。ただし本研究はサンプルサイズがまだ十分ではないため,推定値に不安が残る。今後も継続してデータ収集を行う予定である。
付   記
 本研究はJSPS科研費(特別研究員奨励費:16J08823)の助成を受けて行われた。

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