発表

2D-081

児童の積極的授業参加に関する研究(29)−教師の考える授業行動の生起因−

[責任発表者] 布施 光代:1
[連名発表者] 安藤 史高:2, [連名発表者] 小平 英志:3
1:明星大学, 2:岐阜聖徳学園大学, 3:日本福祉大学

目 的
 児童の積極的授業参加行動を検討してきたこれまでの研究から,積極的授業参加行動とは「注視・傾聴」,「挙手・発言」,「準備・宿題」の3つにまとめられること,授業に対する動機づけと最も関連が強いのは「注視・傾聴」であることが明らかとなっている(布施ら, 2006)。
これらの積極的授業参加行動は,動機づけの他にも教師からの働きかけによって,生起頻度に変化が生じると考えられる。そして,教師からの働きかけは,積極的授業参加行動の生起因に対する教師の捉え方に影響を受けるであろう。布施ら(2014)は,積極的授業参加行動の生起因に対する教師の捉え方を探索的に検討するために,小学校の教師に対するインタビューを行った。その結果,3つの積極的授業参加行動それぞれに対して,教師が多く言及する生起因が異なることが示された。しかし,対象者数が少なく,探索的検討であったため,結果の一般化には課題が残されている。本報告では,布施ら(2014)のデータにさらに公立小学校の教師に対する面接のデータを加え,テキストマイニングを用いて定量的な分析を行う。
方 法
 面接対象者:中部地方の私立小学校勤務の教員7名(男性5名,女性2名),関東地方・中部地方の公立小学校勤務の教員13名(男性7名,女性4名)計20名の小学校教員を対象とした。平均年齢は38.9歳(23歳~57歳),平均教職歴は14.7年(2年~35年)であった。
手続き:個別の半構造化面接を行った。面接時間は30分程度であり,面接対象者の同意のもとにICレコーダに録音した。
面接内容:児童の積極的授業参加行動の生起因,その発達的変化,指導上の工夫などについて質問を行った。本報告では,これらのうち「3つの積極的授業参加行動をよく行う児童,行わない児童の特徴」を分析の対象とする。
面接時期:2012年10月~2015年01月。
結果と考察
 教員養成課程の学生を対象とした同様の面接調査を解析した小平ら(2015)に倣い,それぞれの積極的授業参加行動に関する発話を形態素に分解(SPSS TAfSを使用)した後,布施ら(2014),小平ら(2015)に準じてカテゴリを作成した。3つの積極的授業参加行動のそれぞれについてカテゴリの使用比率を求め,その差異についてCochranのQ検定を実施した(Figure)。その結果,「学力・理解度」,「自信・効力感」,「意欲・動機づけ」,「感情」,「友達・教室」,「家族・家庭」のカテゴリにおいてそれぞれの積極的授業参加行動によって言及率に有意な差が見られることが得られた。McNemar検定による多重比較(Ryan法,p<.05)を実施したところ,まず「学力・理解度」では,挙手・発言と比べて準備・宿題で言及が多く,「自信・効力感」と「友達・教室」では注視・傾聴,準備・宿題よりも挙手・発言の出現頻度が高いことが明らかとなった。また,「感情」では準備・宿題よりも挙手・発言が多く,「家族・家庭」では,挙手・発言よりも注視・傾聴が,また注視・傾聴よりも準備・宿題の言及率が高いことが示された。一方,「意欲・動機づけ」では,有意傾向は見られたものの有意な差は得られなかった。布施ら(2014)と同様に,学力等の能力に関する言及が多くみられること,また,準備・宿題では家庭の要因が多く挙げられることなどが確認された。一方で,「自信・効力感」や「意欲・動機づけ」が多く言及される行動は限定的であるという違いも見られた。
 それぞれの積極的授業参加行動によって,生起因として言及される要因が異なることが確認された。こうした教師の捉え方が,授業中の教師の行動や児童への働き方に与える影響については,さらに検討する必要があると考えられる。
引用文献
布施光代・安藤史高・小平英志 (2014). 児童の積極的授業参加に関する研究(18)−教師に対する面接調査を用いた探索的検討− 日本心理学会第78回大会発表論文集, 1164.
布施光代・小平英志・安藤史高 (2006). 児童の積極的授業参加行動の検討−動機づけとの関連及び学年・性による差異− 教育心理学研究, 54, 534-545.
小平英志・安藤史高・布施光代 (2015). 児童の積極的授業参加に関する研究(22) −教員養成課程の学生の捉える授業行動の背景要因− 日本教育心理学会第57回総会発表論文集, 373.

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