発表

2D-076

学習行動の促進・阻害要因の検討~小学生の内発的動機づけを中心に~

[責任発表者] 磯 友輝子:1
[連名発表者] 小林 寛子:1, [連名発表者] 角山 剛:1, [連名発表者] 大坊 郁夫:1
1:東京未来大学

目 的
 「勉強は大切だ」という意見を否定する児童は少ないであろう。しかし、それが学習という行動に結びつくか否かには、学習意欲の程度や家庭環境、友人や教員との関係など様々な要因が介在することが予測される。
自己決定理論(Deci & Ryan,2000)では学習意欲の自律性の度合いが考慮され、賞罰に統制された外発的動機づけよりも、勉強が楽しいといった内発的動機づけや、将来のために勉強が必要だといった同一化調整のような自律性の高い動機づけが学習成果と関連することが知られる(e.g.西村・河村・櫻井, 2011)。それゆえ、学校現場にとっては学力向上のために内発的動機づけの促進が課題になるであろうが、それは、学びの楽しさを知ってもらいたいという教職者としての願いともいえる。また、家庭にとっては子どもの自発的な学びのための支援方法を知りたいと願うだろう。
そこで、本研究では小学生を対象とした質問紙調査を行い、自発的な学習行動の促進・阻害要因の因果関係を検討する。桜井(1997)などを参考に、学習行動を促す内発的動機づけの背景に他者受容感、自己肯定感、自己効力感を想定した。一方で、学習行動の阻害要因としては、勉強を面倒に思う程度(コスト感)を想定し、外発的動機づけの高さと関連しているものと予測した。
方 法
調査対象者 東京都内の公立小学校4-6年生556名に調査協力を依頼した。このうち、回答に不備がなく、且つ、今後関連性を検討予定である2016年4月の全教科の学習到達度調査と対応可能な497名の回答を分析に用いた。
調査項目 先行研究を参考に学習意欲や自発的な学習行動などを測定する45項目を作成し、(1)-(3)、(4)-(7)で因子分析(n=534,523)を行って想定した変数の構造を確認した。質問紙には(1)-(7)以外の変数も含まれたが、本報告では割愛する。以下は全て4件法であった。
(1)他者受容感(6項目,α=.84):友人や周囲からの受容感や、頼りにされていると感じる程度(自尊感情測定尺度東京都版、高野ら(1992)などを参考)。
(2)自己効力感(5項目,α=.89):自分は勉強ができるという自信(Pintrich & De Groot(1990)などを参考)。
(3)自己評価と自己受容(4項目α=.86):自分を尊重し、肯定できる自己肯定感(自尊感情測定尺度東京都版を参考)の一部として測定した。
(4)内発的動機づけ(6項目, α=.92):自律性の高い学習意欲であり、学習や思考、新奇なことへの楽しさ、好奇心の高さの程度(Elliot & Church(1997)などを参考)。
(5)外発的動機づけ:自律性の低い学習意欲(岡田・中谷(2006)を参考)。賞罰に統制される「外的動機づけ」(2項目,α=.68)と、勉強するのは当たり前だといった考え方のような「取り入れ入れ的調整」(3項目,α=.55)の2因子5項目。
(6)コスト感(3項目,α=.86):勉強することの見返りを低く見積もり、勉強よりも他の楽しいことを優先する程度。
(7)学習行動(3項目α=.78):1日に勉強する時間を決めたり、予習復習をするなどの自発的学習行動。
手続き 質問紙は2016年12月に各学校に郵送し、クラス担任に教室内での一斉配布と回収を依頼した。
結 果 と 考 察
 IBM SPSS Amos ver.24を用い、各変数を潜在変数に投入して共分散構造分析を行った。最終的に採択されたモデルを図1に示す。適合度は高くはないが(GFI =.82, AGFI=.79, RMSEA=.08)、概ね予想した通りのモデルとなった。
友人や周囲の人たちに支えられていることを認知することで、自分自身や自らの学習の成果を受け入れることができるようになり、その結果、学習への自信につながったものと考えられる。「問題に答える自信がある」といった気持ちが、難しい問題にチャレンジしたり、頭を使うことへの抵抗感をなくして内発的動機づけを高め、自ら進んで学習計画を立てるなどの自律的学習を促したと思われる。これは先行研究(e.g.,桜井,1997)で示されたモデルと合致する。
外発的動機づけのうち、取り入れ調整は、他者との関係性の中で勉強をすることへの期待を感じることで高められ、いくぶん学習行動に影響を与えていた。一方で、外的動機づけは他者受容感からのパスは有意ではなく、仕方なく勉強しているという思いがコスト感を高め、その結果、非常にわずかではあるが学習行動を抑制する傾向が示された。
 今後は、学習方略や学習行動から成績への流れも含めた調査を行い、周囲からの支援の在り方を考えていきたい。

注)本報告は、平成28年度すみだ教育研究所・東京未来大学モチベーション研究所連携事業「学習意欲向上測定尺度の開発」の一環で行われた調査結果の一部である。

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