発表

2D-074

数・数表記の発達とその関連性 -年少幼児と年長幼児の分析-

[責任発表者] 山形 恭子:1
[連名発表者] 古池 若葉:2
1:京都ノートルダム女子大学, 2:京都女子大学

【目的】筆者ら(2013,2014)はこれまで年少幼児ならびに年長幼児を対象に研究が少ない数表記に焦点を当てて計数・基数などの数発達との関係を検討してきた。数表記は数読字と数書字に分けられるが,筆者らの研究結果では数読字が3.5歳から増加し,4歳に10までの数字をほぼ読み,4歳以降に10以上の数も読み始め, 5歳と6歳では10以上や20以上の数に関して多くの対象児が読めるようになることを示してきた。一方,数書字に関しては4歳から10まの数字の約半分を書き,その後の5歳から6歳にかけて書字数の増加が認められた。それでは,こうした数表記の発達は数課題とどのように発達的に関連しているのだろうか。また,数課題間の発達的関連性は年齢にともなって変化すると考えられるが,年少幼児と年長幼児ではその関連性の様相はどのようであろうか。本報告ではこれらの問題を明らかにするために年少幼児と年長幼児における数・数表記課題に対する遂行を取り上げてその発達的関連性を分析した。
【方法】調査対象児:保育園児99名(男児48名,女児51名)。年少幼児59名(2歳7ヵ月~4歳5ヵ月)と年長幼児40名。年少幼児は2.5歳(平均年齢2歳9ヵ月),3歳(3歳2ヵ月),3.5歳(3歳8ヵ月),4歳(4歳3ヵ月)の4群に,年長幼児は5歳(5歳6ヵ月)と6歳(6歳6ヵ月)に分けた。
 課題:数課題として年少幼児に新版K式発達検査から丸数え・積木数え・数選び(基数)を,その他に数唱・数認識・数読字・数書字の課題を与えた。年長幼児には数選びとK-ABC検査から選んだ多少判断・順序数課題ならびに数読字・数書字・加算減算計算・数式表記の課題を課した。数読字と数書字課題では0~9(~10)までの数字と10以上の4数字(10~),20以上(20~)の2数字をカードに記して与え,それらを読むように求めた。数書字課題では数読字課題と同じ数字をランダムに与えて書くように求めた。また,
年長幼児では数字の大小によって難易度が異なると推定されることから,計算問題において計算の答えが5以下,5~9、10以上の3種類の問題をそれぞれ2種類,計6問題を作成して対象児に与えた。なお,年少幼児では年齢を尋ねるとともに人物描画を求め,描画紙に名前書字も課した。本報告では数認識・数式表記・描画課題等は取り上げない。
 手続き:個別面接調査。課題の提示順序は年少幼児では数認識・丸数え・積木・数選び・数唱・数読字・数書字表記課題の順序で,年長幼児では数表記・数選び・多少判断・順序数・加減計算・数式表記課題の順序で実施した。なお,計算問題では絵カードを示して文章題を述べて回答を求めた。
【結果】1.各課題における平均正反応数 結果を年少幼児と年長幼児別に表1と表2に示す(一部の資料は発表済みである)。各課題において年齢にともなって正反応数の増加が見られたが,年長幼児では数選び・多少・順序数課題においていずれも高い正反応数を示した。多少・順序数課題は6歳相当の問題であるが,5歳で可能であることが判明した。
2.課題間の関係 課題の関係を検討するために先ず年齢を統制した偏相関を求めた。年少幼児では数読字と数唱・丸課題の間に有意な相関が見られた。年長幼児では数選びと数読字と数書字の大きい数の間ならびに減算の間に有意な相関が見られた。また,順序数と数読字10以上と20以上との間に,数選びと順序数の間にも有意な相関がえられた。
計算問題では回答が大きい数の計算問題間で関連が見られた。ただし,計算課題と数読字・数書字の間には関連がえられなかった。
回帰分析の結果では年少幼児で数唱・積木・丸・年齢が数読字に寄与し(R²=.64***),また数唱と数読字10以上が数書字に寄与した(R²=.64***)。他方,年長幼児では数選びに順序数と減算が有意に寄与した(R²=.69***)。 
【考察】年少幼児では数読字に数唱・計数(積木・丸)が寄与し,数書字に数唱・数読字10以上が寄与することが見出されたが,年長幼児では数読字・数書字と数課題の関連が見られず,順序数・減算が数選びに寄与することが示された。これは年長幼児で数表記習得による天井効果が影響したと推定される。本結果から年少幼児と年長幼児における数表記の数発達における位置づけの違いが明らかになった。さらに,年長幼児では数選びが習得済みの計数を基礎として順序数と計算問題に関連することが示唆された。今後の検討課題としては年少幼児における数読字・数書字の数発達における役割や年長幼児における加減計算問題との関連,数・数表記発達への他の影響要因を精査する必要があると考えられる。
引用文献 山形恭子・古池若葉(2013)数表記の理解と産出の初期発達(1)日発心学会第24回大会発表論文集p595.山形恭子・古池若葉(2014)数式表記と数操作の発達(1)日心第78回大会論文集p1048. (本研究は科研基盤研究Cの助成を受けた)




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