発表

2D-072

小中学生用攻撃行動の捉え方尺度の作成

[責任発表者] 関口 雄一:1
1:山形大学

目 的
 いじめや校内暴力などの児童・生徒の心理社会的適応に関わる重要な問題として,攻撃行動が挙げられる。攻撃行動の問題について,児童・生徒は加害者と被害者の両方の立場を経験しうると考えられている(国立教育政策研究所,2016)。そのため,加害者・被害者という立場の観点だけなく,児童・生徒個人の攻撃性などの内的側面に注目することも重要であると考えられる。そして,攻撃行動を促進させる内的側面のひとつに,攻撃行動を許容する捉え方があげられる。関口・濱口(2015)は,攻撃行動の中でも無視,仲間外れ,陰口を中心とする関係性攻撃を促進させる捉え方と実際の攻撃行動の関連を検討した。その結果,関係性攻撃の捉え方には「否定的認識」,「身近さ」,「正当化」,「利便性」の4下位尺度があり,そして,関係性攻撃を許容する「正当化」や「身近さ」,「利便性」が高いほど,実際に攻撃行動に従事することが示された。しかし,上記の研究で検討されたのは,関係性攻撃についてのみであり,関係性攻撃と中程度の相関関係にあるといわれる外顕的攻撃に関しては扱われなかった。そこで本研究では,児童・生徒の外顕的的攻撃と関係性攻撃の両方の攻撃行動に対する捉え方を測定可能な質問紙尺度を作成し,信頼性・妥当性を検証することを目的とする。

方 法
調査対象者 茨城県,埼玉県の7校の公立小中学校に在籍する小学5年生~中学3年生1011名(男子527名,女子484名)を調査対象者とした。
調査内容 (a)攻撃行動の捉え方尺度暫定項目24項目。本研究で独自に作成した外顕的攻撃と関係性攻撃の捉え方について問う質問項目。4件法であった。(b)小学生用P-R攻撃性質問紙(坂井・山崎, 2004)から「表出性攻撃」と「関係性攻撃」7項目ずつ計14項目を抜粋した。4件法であった。(c)中学生用攻撃行動尺度(高橋・佐藤・野口・永作・嶋田,2009)より「身体的攻撃」,「言語的攻撃」,「関係性攻撃」3項目ずつ計9項目,5件法であった。中学生のみに回答を求めた。
調査手続き 調査協力の同意を得られた学校にて,学級ごとに一斉配布で調査を実施した。
倫理的配慮 調査協力の同意における児童・生徒の自己決定の権利,個人情報の保護等を質問紙表紙に記載の上,調査時に口頭で説明を行った。なお,本研究は著者の所属機関の研究倫理委員会の許可のもと実施された。
調査時期 2016年6月−7月であった。

結 果 と 考 察
小中学生用攻撃行動の捉え方尺度の因子分析 暫定項目24項目に対して,最尤法,プロマックス回転で因子分析を行った。その結果,20項目3因子解が得られた。第1因子は,
“たたかれたら,たたき返してもよいと思う”,“かげ口を言われた時は,かげ口をし返してもよいと思う”など6項目から構成されていた。ゆえに,外顕的攻撃と関係性攻撃について報復を許容する捉え方と解釈し,「正当化」と命名した。また,第2因子には,“誰かが押しのけられることは,よくあることだと思う”,“かげ口は,やりやすいことだと思う”など8項目から構成されていた。これらは,外顕的攻撃と関係性攻撃の頻度や有用性に関する捉え方と解釈し,「頻度・有用性」と命名した。次に,第3因子には,“誰が相手でも,他の人をたたくことは問題だと思う”,“無視は,どんな時でも間違っていると思う”など6項目から構成されていた。よって,外顕的攻撃と関係性攻撃について許容しない認知と解釈し,「否定的認識」と命名した。
信頼性の検討 攻撃行動の捉え方の下位尺度ごとにα係数を算出したところ,.87,.82,.80と十分な値が示された。この結果に基づき,各下位尺度を構成する項目群の得点を加算平均し,下位尺度得点を算出した。その記述統計量を以下に示す(Table 1)。
攻撃行動との関連 攻撃行動に対して許容的な捉え方の項目群から構成される「正当化」と「頻度・有用性」の下位尺度得点は「表出性攻撃」と「関係性攻撃」と有意な正の相関係数を示し,攻撃行動に対して許容的ではない「否定的認識」は「表出性攻撃」と「関係性攻撃」と有意な負の相関係数を示した(Table 1)。
 以上から,「正当化」,「頻度・有用性」,「否定的認識」の3下位尺度からなり,十分な信頼性と妥当性を有する小中学生用攻撃行動の捉え方尺度が作成されたと考えられる。

引用文献
国立教育政策研究所 (2016). いじめ追跡調査2013-2015国立教育政策研究所 Retrieved from http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/2806sien/tsuiseki2013-2015_3.pdf(2017年5月18日)
関口 雄一・濱口 佳和 (2015). 小学生用関係性攻撃観尺度の作成——2種類の攻撃性との関連の検討—— 教育心理学研究 63, 295-308.

本研究はJSPS科研費16K20941の助成を受けたものです。

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