発表

2D-070

日本のStrange Situation法分類の割合についてー乳幼児の年齢に焦点を当てた検討ー

[責任発表者] 梅村 比丘:1
[連名発表者] 岩本 沙耶佳#:2,3, [連名発表者] 北川 恵:2,4
1:広島大学, 2:甲南大学人間科学研究所, 3:甲南大学心理臨床カウンセリングルーム, 4:甲南大学

目 的
 Strange Situation法(以下,SSP)は,当初1歳の乳児の母親に対するアタッチメント安定性を評価するために考案された。現在,6歳までの幼児に使われている。SSPでは,乳幼児が知らない部屋で見知らぬ女性に会い,2回の母親との分離というストレスを経験することによって,アタッチメント欲求が高まる状態を導く。そこで,再会した母親に向ける行動により,以下のアタッチメント・パターンに分類される。乳幼児が不安な場面で,母親へ近づいたり,身体的に接触したりするなどのアタッチメント行動を示し不安感を沈静する「安定型(B型)」,無視するなどの回避を示す「不安定−回避型(A型)」,不安を鎮静化できない「不安定−アンビバレント型(C型)」のいずれかにまず分類する(3分類)。次に,母親を怖がるなど,混乱した行動が示された場合,3分類結果に加えて,「無秩序・無方向型(D型)」という判断がなされ,最終的に4パターンに分類される(4分類)。
SSPは標準化されたアタッチメント測定法であり,欧米では多くの研究が蓄積されている。各国のSSP結果を比較した結果,どの文化圏でもB型がもっとも多いことは共通していた。一方不安定型について,欧米ではA型が多い一方,日本などアジアではC型が多いことが報告されている(van IJzendoorn & Kroonenberg,1988)。一つの理由として,アジア圏では欧米よりも,乳幼児が日常生活において母親と分離する経験が少ないため,SSPで設定される分離場面のストレス価が高いものとなり,母親との再会後の3分間では不安を鎮静化できないことが考えられる。
本研究は,日本で初めて1歳の乳児だけでなく,2歳児以降の幼児を対象にSSPを行った研究である。本研究は,乳幼児の年齢とC型分類結果との関連を検討することにより,日本の乳幼児にとって母親との分離が喚起するストレス価の違いとSSP分類への影響について考察することを目的とする。また,日本でのSSPデータが少ないため,本研究は近年の日本での重要な分類結果の報告である。
方 法
 本研究の対象は1歳から6歳(M = 2歳8ヶ月;SD = 1歳5ヶ月)までの乳幼児とその母親であり,4年間で27名の調査協力者を「Circle of security(COS)プログラム」(親子関係支援)参加者から募った。臨床群ではなく,地域から,子どもとの関係をより良くしたいという動機づけをもって参加したサンプルである。母親の年齢は27歳から43歳(M = 36.00歳; SD = 3.84歳)であった。男児17名と女児10名であった。
 本研究のSSPは,アメリカでSSP実施経験豊富なCOS開発者(Bert Powell)の監督を受けて,COSプログラム開始前に実施された。Ainsworthが開発した1歳児用の評定法の有資格者2名が個別に分類し,分類結果不一致の場合は合議により分類した。幼児のSSP分類信頼性については,幼児6ケースの評定を,幼児版SSPトレーナー(Ellen Moss)に求め,100%の一致率を得たことで確認した。
結 果
 27名中,3分類では,B型17名,A型4名,C型6名に分類された。4分類では,B型17名,A型2名,C型4名,D型4名に分類された。
Table1にSSP実施時の月齢順に4分類/3分類の結果を示した。1歳児10名中4名(4分類では3名)がC型であったが,2歳以降では17名中2名(4分類では1名)であった。
C型とC型以外の群の月齢を片側t検定により比較した(Table2)。サンプル数が少ないにも関わらず,3分類では統計的有意傾向を示し,4分類では有意差があり,C型の平均月齢の低さが示された。
考 察
本研究での分類結果について,B型が最多63%であったことは先行知見と一致していた。しかし,C型が約22%という割合は欧米より多い。また,乳幼児の月齢との関連を検討した結果,C型は乳児より幼児に少ないことが示された。
SSP実施に際しては,ストレスが強くなりすぎないよう,分離の短縮などの判断が必要である。本研究では,そうした手続きについて熟練者の監督を受けて留意して行った。それでも,不安が沈静化されないC型が多く,年齢との関連を示したことは,日常的に分離経験が少ない日本の乳児にとってはSSPが強いストレス場面である可能性が示された。SSP内的妥当性について,引き続き検証が必要である。
引用文献
Van Ijzendoorn, M. H., & Kroonenberg, P. M. (1988). Cross-cultural patterns of attachment: A meta-analysis of the strange situation. Child Development, 59, 147-156.
附記
本研究はJSPS科研費25380967の助成を受けた。

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