発表

2D-067

大学生の一人暮らしに関する認知尺度の作成

[責任発表者] 加藤 杏:1
[連名発表者] 井上 果子:1
1:横浜国立大学

目 的
大学進学に伴い、親元を離れ一人で暮らす青年は物理的な自立をする。その際、家事を自身で行う必要に迫られるため、生活面では自立をするが、必ずしも経済的自立、情緒的自立はしていない(斉藤, 1996)。大学生が一人で暮らす過程で抱く考えや感情の違いによって、大学生の自立意識は異なる。本研究では、大学生が一人暮らし体験を通して抱く「一人暮らしに関する認知」を明らかにする尺度を作成し、その認知の性差を明らかにすることを目的とする。
方 法
1.調査対象者および調査時期:首都圏国立大学2校に通う一人暮らしをしている大学生・大学院生172名(男性110名、女性62名)を対象に、2016年7月から10月に行った。
2,調査方法:個別自記入式の質問紙調査を集合調査形式で実施した。実施時間は約20分であった。
3.質問紙の構成:1フェイスシート、2一人暮らしに関しての質問、3一人暮らしに関する認知尺度:一人暮らしに関する認知を測定するために、感情的側面、物理的側面から、大学院生1名と心理学を専攻する大学生1名とKJ法を援用して検討を重ね、独自に作成をした77項目について5件法で実施した。4アイデンティティ尺度(下山, 1992)。
結 果
1.一人暮らしに関する認知尺度の因子分析結果:全77項目に対して、主因子法Promax回転による探索的因子分析を行った。スクリープロットと因子解釈可能性より、4因子構造が妥当であると判断し、繰り返し因子分析を行った。その結果、全項目中30項目が採用された(表1)。
2.一人暮らしに関する認知尺度の性差の検討:一人暮らしに関する認知尺度の下位因子について性差の検討を行った。その結果「干渉からの解放」「家事の煩わしさ」において男性の方が女性よりも有意に高かった。「独居への不安」においては、女性の方が男性より有意に高かった(表2)。
考 察
 一人暮らしに関する認知は「干渉からの解放」「家事の煩わしさ」「独居への不安」「親への恩義」の4因子が抽出された。一人暮らしを肯定的に捉えるだけでなく、一人で暮らすことへの不安感の存在が示された。
 性差に関しては「干渉からの解放」「家事の煩わしさ」において、男性の方が強く認知していた。内海(2013)は、自律への希求の高い男子は、親の心理的な介入が多いと認識していたことを明らかにしている。男性の方が親の干渉をより意識しているため、一人暮らしによる親からの「干渉からの解放」を強く感じると考えられる。また、家事は女性が行うものだという従来の価値観が、男性の「家事の煩わしさ」の認知を高めていると示唆される。「独居への不安」は、男性よりも女性の方が強く認知していた。警視庁が発表した平成27年度の犯罪統計によると、わいせつなどを含む風俗犯の認知件数の被害者は9割以上が女性である。犯罪被害に狙われやすい女性は、一人で暮らすことへの不安や恐怖を感じやすいと考えられる。
引用文献
斉藤誠一(1996).  青年期の人間関係 培風館
警視庁(2016). 平成27年度犯罪統計
https://www.npa.go.jp/toukei/soubunkan/h27/h27hanzaitoukei.htm 2017年1月6日閲覧

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