発表

2D-066

幼児期における行動抑制の発達的変化(7) 幼児期の自己抑制実験と小学校適応との関連

[責任発表者] 難波 久美子:1
[連名発表者] 河合 優年:2, [連名発表者] 佐々木 惠#:1
1:武庫川女子大学教育研究所, 2:武庫川女子大学

目 的
 Namba et al. (2014) で,幼児期における自己抑制の発達は,必ずしも一本道ではなく,早くに自己抑制が可能な群と,幼児期では不安定で完成されていないと思われる群がいることが分かった。大人の指示に従って欲求を遅延させる,という自己抑制が幼児期に完成されている児は,小学校入学後,先生からの指示に従って行動する,という行動パターンはスムーズに受け入れられると予想される。しかし,幼児期にまだ完成されていないと思われる児は,小学校入学後の適応に苦労すると予想される。
Mischel et al. (1989) の研究では,幼児期に満足の遅延ができなかった児は,その後青年期の学業成績などに影響するということが示されている。しかし,幼児期の実験は,1時点のみの結果をもとにしており,早くから自己抑制が可能であるのか,不安定であるのかまでは考慮されていない。
そこで本研究では,42ヶ月,5歳,6歳の各時点での自己抑制の可・不可と,その後小学校での適応状態との関連が検討された。
方 法
研究協力者と期間 2005年から実施されたJCS(Japan Children’s Study)の協力者のうち,三重中央医療センターで同意を得て観察・調査を実施し,研究終了後のデータ使用許諾と研究協力の継続に同意した139組の児及びその家族。本研究に使用したデータが得られた時期は,2008年から2011年(42ヶ月,5歳,6歳),2013年から2016年(小学校3,4,5年生)であった。 分析対象 42ヶ月,5歳,6歳時自己抑制実験データと,小学校3,4,5年生時実施のQ-U(図書文化社より発行)。 手続き 自己抑制実験による群分けはnamba et al.(2014)を参照。同様の手続きで自己抑制可群,不可群が分けられた。Q-Uは,パネル調査の一部として3学期に送付された。自宅で回答,郵送にて返送された。得点化は,実施要項に従った。Q-Uは,学校生活意欲(下位領域:友達関係,学習意欲,学級の雰囲気),承認得点,被侵害得点から成っている。領域得点は,得点が高くなるほどその領域名の意味が強くなるよう設定された。
結 果
 自己抑制実験(可・不可)を独立変数とし,Q-Uの領域得点を従属変数(繰り返し)とした分散分析(2要因混合計画)を行った。ここでは,自己抑制実験に関わる結果にのみ触れる。42ヶ月自己抑制実験を用いた分析で,Q-U学級雰囲気得点に42ヶ月自己抑制実験の主効果F(1,83)=5.84, p< .05(可群>不可群))と、学年の主効果(F(2,166)=3.38, p< .05(3年>4年))がみられた(Figure1)。また,Q-U承認得点に42ヶ月自己抑制実験の主効果(F(1,84)=5.70, p< .05(可群>不可群))がみられた(Figure2)。
 5歳自己抑制実験を用いた分析では,自己抑制実験に関わる有意な得点差はみられなかった。
6歳自己抑制実験を用いた分析では,Q-U承認得点は,学年と6歳自己抑制実験に交互作用(F(2,192)=6.59, p< .01)と,学年の主効果(Greenhouse-Geisser検定。F(2,192)=7.13, p< .01(3年<5年))がみられた。自己抑制可群はQ-U得点がほぼ変わらず,不可群は学年が上がると上昇していた(Figure3)。
考 察
42ヶ月で自己抑制不可であった児は,小学校では,楽しい雰囲気のクラスでない,周囲から承認されていない,と感じていた。また,6歳で自己抑制可であった児は,得点変化がほとんどないが,不可であった児は,学年が上がるにつれ,得点も上昇する傾向にあった。このことから,幼児期の早い時点で大人の指示に従って行動できる,ということが,学習の意欲や被侵害感には影響せず,クラスでの居心地の良さの感じ方に影響を与え続けている可能性があるだろう。
引用文献
Mischel W. et al. (1989). Delay of gratification in children. Science, 244, 933-938.
Namba, K.et al. (2014). Relationship between self-regulation in early childhood and later index scores in WISC-III. Poster presented at the Developmental Section Annual Conference 2014 of the British Psychological Society. Abstracts, P.85.
附記: 本研究は,JSPS科研費(15H03453)の助成を受けた。

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