発表

2D-065

サルコペニアの有無と身体・認知・精神機能の特徴

[責任発表者] 谷 佳成恵:1
[連名発表者] 津田 彰:1, [連名発表者] 矢田 幸博#:2, [連名発表者] 張 淑珍#:1, [連名発表者] 岡村 祐一:1, [連名発表者] 橋本 正嗣:1, [連名発表者] 加藤 孝:1, [連名発表者] 大杉 紘徳#:3, [連名発表者] 村田 伸:4
1:久留米大学, 2:筑波大学, 3:城西国際大学, 4:京都橘大学

目 的
サルコペニアの定義は「進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群」とする。その如何は生活の質(Quality of Life;QOL)や手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living;IADL)との関連が指摘される(Cruz-Jentoft et al.,2010)。
QOLは人の健康に直接関連する健康関連QOL(health-related QOL;HRQOL)と直接関連のない非健康関連QOL(non-health-related QOL)に大別される(土井,2004)。IADLは社会活動を営むための必要な活動能力であり(古谷野他,1987),その障害はQOLの低下を招く(奥宮他,2002)。
サルコぺニアによる認知,精神機能への影響は看護学,栄養学,理学療法学と多様な分野で検討されるが,その結果について統一した見解はない。
サルコぺニアは生活習慣との関連が深い(谷本他,2013)。本研究は有料老人ホーム利用している生活環境が比較的均質な状態の高齢者を対象とすることによって検討できる。サルコぺニアの有無と身体・認知・精神機能の特徴を比較することにより包括的に分析した。
方 法
調査対象者:A市の有料老人ホーム利用高齢者のうち,参加同意を得た65歳以上の男性20名,女性60名(計80名,平均年齢78.9±7.7歳)
調査:久留米大学御井学舎倫理委員会の承認を得て(研究番号:261),2015年4月,5月,8月,11月の計4回に亘って対象者を募集,測定した。複数回参加した対象者は初回のデータを使用した。
評価方法:年齢,性別は自記式質問紙で記入を求めた。
身体機能:サルコペニアの判定は,歩行速度(シート式圧力センサーウォークWay,MW-1000,アニマ(株)),握力(T.K.K.5401,竹井機器工業(株))と筋量(ポータブル体成分分析装置InBody720,インボディ・ジャパン(株))を測定した。
生活機能:IADLは古谷野他(1987)による老研式活動能力指標(手段的自立,知的能動性,社会的役割,総得点)を用いて測定した。
認知機能:Mini Mental State Examination(MMSE)を用いて見当識や記憶の保持,想起,計算能力を測定した。
精神機能:抑うつ傾向は高齢者用うつ尺度5項目版(Geriatric Depression Scale-5;GDS-5)を用いた。QOLはSF-8(福原他,2005)を使用し身体的健康感サマリー(PCS),精神的健康感サマリー(MCS)によって評価した。
解析方法:サルコペニア分類のアルゴリズムはEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)に準じた(Cruz-Jentoft et al.,2010)。
カットオフ値は下方他(2012)の基準である歩行速度1.0m/s,握力(男性25kg,女性20kg),SMI(男性6.87kg/m2,女性5.46kg/m2)(Sanada et al., 2010)による。サルコペニアは加齢(Yuki et al.,2015),筋肉量の減少は性別の影響があるため(谷本他,2010),年齢と性別を統制変数として,IBM SPSS Statistics ver.22を使用し,共分散分析を行った(p<0.05)。
結 果
サルコペニア該当者は25名(該当率31.3%,平均年齢83.8±5.8歳),非該当者は55名(68.8%,平均年齢76.6±7.5歳)であった。サルコぺニアを有している人の身体機能は以下に示す通り低下した(Table1)。
身体機能:歩行速度(p<0.001,η2=0.994),握力(p<0.001,η2=1.000),SMI(p<0.001,η2=1.000),生活機能:知的能動性(p<0.050,η2=0.701),社会的役割(p<0.001,η2=0.969),IADL総得点(p<0.001,η2=0.986)
考 察
身体機能について,サルコペニアの判定基準である歩行速度,握力,SMIは有意差が認められ,その分類は妥当であると考えられる。生活機能について,身体機能が低下した結果,活動範囲が狭くなったこと(島田他,2002)や,探求意欲の低下(谷本他,2011)が伺えた。
 認知機能について,全体の平均点が27.2点,サルコぺニアに該当した人であっても26.4点であり,得点が満点に近い人が多かった。本研究の対象者は認知機能が保たれていると言える。一方,筋肉量の低下による認知機能の低下が指摘されている(Auyeung et al.,2011)。しかし,本研究ではサルコぺニアとMMSEの関連は認められなかった。MMSEは天井効果があり,認知機能が低下していない人の変化を見るには不適当という指摘もあることから(小長谷他,2012),より精度の高い検査を用いた検討が必要である。
 サルコぺニア該当者の精神機能の低下は認められなかった。身体,精神機能は必ずしも一致しないと考えられる。以上から,サルコぺニアは加齢,性別の影響を除くと身体,生活機能が低下することが明らかになった。

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