発表

2D-059

変数の性質が因果推論に及ぼす影響

[責任発表者] 斎藤 元幸:1,2
[連名発表者] Patricia Cheng#:1
1:カリフォルニア大学ロサンゼルス校, 2:関西学院大学

目 的
 因果推論の一般的な実験事態では投薬の有無と症状の改善の有無といったカバーストーリーを通して二値変数の提示を行い,実験参加者に因果関係についての判断を求める.症状の改善に程度が存在するように現実場面には様々な連続変数が存在するにも関わらず,連続変数を扱った研究はほとんど存在しない.本研究では,因果パワー理論 (Cheng, 1997) を連続変数の事態へと拡張し,その妥当性を検証する.結果事象が二値変数の場合にはnoisy-OR関数を,連続変数の場合にはlinear-sum関数を使用すると (cf. Lu, Rojas, Beckers, and Yuille, 2016),因果パワーwcはそれぞれ次のように推定される.
wc = ΔP / [1 − P(E = 1|C = 0)] (1)
wc = ∆E = E[e|c] − E[e|¬c] (2)
ここでΔPは条件付き確率の差分を,ΔEは条件付き期待値の差分をそれぞれ表す.本研究の目的は,実験参加者が変数の性質に応じて適切な関数を選択しているか否か,また実験参加者の判断が因果パワー理論の予測と一致しているか否かを検討することであった.
方 法
実験参加者および実験計画 Amazon Mechanical Turkを通じて136名が実験に参加した.実験参加者は,結果事象が連続変数・パーセンテージ・二値変数のいずれかの群に無作為に割り当てられた.また,随伴性情報を実験参加者内要因として操作した (Table 1参照).
実験課題 励ましが宿題の遂行量に及ぼす影響を検討するというカバーストーリーの下で原因事象と結果事象を提示し,因果強度の判断を求めた.いずれの群においても原因事象は二値変数 (i.e., 励ましの有無) であったが,結果事象は各群で異なっていた (i.e., 0-100の遂行量,0%-100%の遂行量,遂行の有無).結果事象が連続変数・パーセンテージの場合には条件付き期待値を,二値変数の場合には条件付き確率を操作し,実験参加者には随伴性情報が異なる複数の課題を遂行することが求められた.
 学習フェイズは16試行で構成されており,各試行ではプレポストデザインの形で原因と結果に関する情報が与えられた.初めに以前の宿題の遂行量がテキストとイラストで表示され (e.g., “A student (ID: 12345) at this school finished 25 out of 100 previous homework problems assigned”),その後励ましの有無が提示され (e.g., “The student received encouragement”),最後に新たな宿題の遂行量が表示された.
 テストフェイズでは反事実的表現を使用して,原因候補の因果強度を推測させた (e.g., “Suppose the next student (ID: 23456) at this school finished 0 out of 100 previous homework problems assigned. If the student now receives encouragement, how many out of 100 new homework problems will the student finish?”).評定は0から100のVAS上で行われた.
結果 および 考察
 Figure 1に各随伴性条件における平均評定値を示す.連続変数やパーセンテージの群では因果強度を条件付き期待値の差分ΔEに基づいて判断しているのに対して,二値変数の群では条件付き確率の差分ΔPと結果の基準率P(E = 1|C = 0)を反映していることが明らかとなった.これらの傾向については統計的支持が得られており,例えば連続変数とパーセンテージにおけるΔE = 50の条件では結果の基準率の効果が見られなかったが (Fs < 1),二値変数におけるΔP = .50の条件では結果の基準率の効果が有意であった (F(1, 36) = 10.95, MSE = 206.5, p = .002, η 2 G = .118).このことは,連続変数に対してはlinear-sum関数が,二値変数に対してはnoisy-OR関数が使用されることを示唆している.また,天井効果が部分的に生じている事態 (i.e., 100-25, 100-50, 100-75条件) では,因果パワーが範囲で推定されることと対応して (e.g., 100-25条件では75以上),実験参加者の判断にも大きなバラつきが見られた.具体的には,範囲の最小値を推定する保守的な反応と最大値を推定する楽観的な反応の二峰性の分布が確認された.これらの結果は因果パワー理論の予測と対応していた.
引用文献
Cheng, P. W. (1997). From covariation to causation: A causal power theory. Psychological Review, 104, 367–405.
Lu, H., Rojas, R. R., Beckers, T., & Yuille, A. L. (2016). A Bayesian theory of sequential causal learning and abstract transfer. Cognitive Science, 40, 404–439.

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