発表

2D-057

児童期における読書が語彙力・文章理解力に及ぼす影響 読書意欲の観点からの縦断研究

[責任発表者] 上田 紋佳:1
[連名発表者] 猪原 敬介:2, [連名発表者] 小谷田 照代#:3, [連名発表者] 塩谷 京子#:4
1:ルーテル学院大学, 2:くらしき作陽大学, 3:静浦小中一貫学校, 4:関西大学

目 的
 児童期の読書が語彙力や文章理解力に及ぼす影響について,近年,縦断研究による検討がされ始めており,「読書が語彙力および文章理解力を向上させる」という因果関係が実証されている。例えば,Echols, West, Stanovich, & Zehr (1996) では,小学4年生から6年生児童を対象として,調査開始時の読書量が,調査開始時の語彙力・文章理解力を統制してもなお,1年後,および,2年後の語彙力,文章理解力を有意に予測することを示している。
 読書に影響を及ぼす要因の一つに読書意欲がある。そこで,本研究では,児童の読書意欲が読書による言語発達にどのような影響を及ぼすのかを検討することを目的とする。読書量として,学校図書室での図書貸出数を用いて,読書量と語彙力・文章理解力との関係に読書意欲がどのように影響を及ぼすかについて,縦断調査によって検討する。
方 法
参加者 公立の小中一貫学校2年生から8年生(2016年度時点)が調査に参加した。1回目の調査(Time 1)は2016年4月に,2回目の調査(Time 2)は2017年2月に行われた。そのうち,2回の調査に参加した生徒を分析対象とした。
測定指標 語彙力・文章理解力の測定として,「Reading-Test読書力診断検査」(福沢・平山, 2009)を用いた。また,読書意欲は,Reading-Test読書力診断検査にある「読書についてのアンケート」の4項目を用いた。
図書貸出数は,2015年度の1年間と,2016年4月から2017年2月までの11か月間の期間の図書貸出数を用いた。
結 果 ・ 考 察
 語彙力・文章理解力の正答率,図書貸出数,読書意欲の平均(SD)をTable 1に示した。
 語彙力,文章理解力のそれぞれに関して,Time 2時点の正答率を目的変数として,階層的重回帰分析を行った。Step 1ではTime 1時点の正答率と読書意欲を投入した。Step 2において,2015年度と2016年度の図書貸出数を投入した。さらに,Step 3で,2015年度および2016年度の図書貸出数と読書意欲の交互作用(以下,2015×意欲,2016×意欲とする)を投入した。語彙力に関して階層的重回帰分析を行った結果,2年生のみでStep 3の二つの交互作用項の偏回帰係数が有意であったので下位検定を行った(2015×意欲:β= -.449, t = -2.35, p < .05;2016×意欲:β= .552, t =-2.80, p < .05)。2015×意欲については,意欲が高い(+1SD)群では, 2015年度の図書貸出数が多い方が語彙力が低くなり(β= -.535,t = -2.28,p < .05),意欲が低い(-1SD)場合には,有意な傾斜は認められなかった(Figure 1 左図)。それに対して,2016×意欲では,意欲が高い(+1SD)群では,2016年度の図書貸出数が多い方が語彙力が高くなり(β=.563,t = 2.28,p < .05),意欲が低い場合には,有意な傾斜は認められなかった(Figure 1右図)。文章理解力に関しては,全学年でStep 3の偏回帰係数は有意ではなかった。
小学2年生において,読書意欲の高さは読書量と語彙力の関係を調整することが示された。しかしながら,その影響は読書意欲が高い方が読書による語彙力へのポジティブな影響が大きくなるというシンプルなものではなかった。直近の読書の効果をみてみると,読書意欲が読書量と語彙力の間の正の関係を促進させていたが,一年前の読書効果については,抑制的にはたらいていた。
今後は,読書意欲を詳細に測定することに加えて,読書のジャンルの影響についても検討する必要があるだろう。

詳細検索