発表

2D-035

色字共感覚における共感覚色と物理色感度の対応

[責任発表者] 濱田 大佐:1
[連名発表者] 山本 洋紀:1, [連名発表者] 齋木 潤:1
1:京都大学

目 的
 ごく少数の人において、文字知覚が色の体験を生じさせる色字共感覚と呼ばれる現象が存在する。近年では、文字に結びつく特定の色(共感覚色)がどのようにして決まるのかについて関心が高まっており、様々な文字要因(例:形態類似性、文字順序性、文字頻度など)が共感覚色の決定に寄与することが示されている[1]。しかし、共感覚色の決定は個人差が大きく複雑であり、文字要因の検討だけでは十分な説明ができない。共感覚色の決定過程を明らかにするためには、共感覚色の決定の基盤となっている物理色との関係にも注目する必要がある。共感覚色の選択は基本的に物理色の体験に基づいており、全く知らない色が共感覚色になることはほぼ無い。つまり、物理色の諸特性は共感覚色にも共有されていると考えられる。具体的に、共感覚色には、色字共感覚者によって細かく区別されるという特徴があり、物理色に関しても、色字共感覚者は非共感覚者よりも弁別感度が高い[2]。これは、弁別特性において両者が共通する可能性を示唆する。物理色は共感覚色の決定の基盤であるということに基づくと、感度の高い物理色が共感覚色になる可能性が考えられる。そこで本研究では、共感覚色と物理色感度が対応するのかどうかを検討した。さらに、個人毎の共感覚色の見え方の違いが共感覚色と物理色感度の対応に関与するかどうかを検討した。
方 法
実験1 共感覚者が非共感覚者よりも色の識別色が高いことを確認するためにマンセル100ヒューテストを行った。共感覚群と統制群(非共感覚群)ともに18名であった。この課題では、色コマ25個ずつが4本のサオ型操作板に分けられた検査器を用いる。これらのサオごとに,参加者は両端の固定された2個の色コマの色を頼りに,移動可能な25個の色コマを色相が漸次変化するように並び替える課題を行った。課題後、サオ毎の偏差点を算出し,各偏差点を合計して総偏差点 (total error score,以下TES) を求めた。TESが低いほど色の識別成績が良いことを示す。共感覚者群と統制群の条件間でTESの差をt検定で比較した(分析1)。
実験2 共感覚色になりやすい色となりにくい色を特定して、それぞれの弁別感度をケンブリッジカラーテストにより測定した。まずマンセル色見本を用いて、漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字に結びつく色を調査した。次に、a*b*色度座標上での共感覚色の分布密度を推定して高密度領域(共感覚色になりやすい色)と低密度領域(共感覚色になりにくい色)を特定した。課題について、多数のサイズと輝度が微妙に異なる小円で構成された色度の変化する背景とランドルト環を提示した。参加者は、視力検査と同様に、ランドルト環のギャップ位置を回答した。色弁別の閾値は階段法で測定された。色閾値を従属変数、共感覚の有無 (2条件: 共感覚群,統制群)を独立変数,彩度を共変量とした共分散分析を行った(分析2)。次に、共感覚色の見えの違いが色感度に影響するかどうかを検討するために,独立変数を共感覚色の見えの違い,従属変数を高密度領域の閾値と低密度領域の閾値の差として,回帰分析を行った。
共感覚色の見えの測定 ISEQ[3]を用いて,共感覚色の見えを測定した。この質問紙では、共感覚者は共感覚色を連想的に捉えるアソシエイター(+)と共感覚色を視覚的に捉えるプロジェクター(−)の軸で連続的に色の見えが測定される。
結 果 と 考 察
分析1の結果,共感覚群では統制群よりもTESの値が低かった(t = -3.58, df = 34, p < 0.01)(図1)。これは,共感覚者の色識別成績が非共感覚者よりも良いことを示す。分析2の結果,共感覚者群の色閾値が統制群に比べて有意に小さかった(F (1, 16) = 3.37, p < .01)(図2)。この結果は,共感覚者の色弁別感度が非共感覚者よりも高いことを示す。最後に分析3の結果,統計的に有意な回帰式が得られた(R2 = 0.47, F(1, 10) = 8.85, p < 0.05)(図3)。この結果は,アソシエイターは共感覚色になりやすい色の感度が高いが、プロジェクターでは逆に、共感覚色になりにくい色に対して感度が高いことを示す。これらの結果は,アソシエイターでは感度の高い物理色が共感覚色になるが,プロジェクターでは感度の低い色にあえて共感覚色を結びつける補完的な作用が働いている可能性を示唆する。しかし逆の因果関係、つまり、共感覚色の体験によって物理色感度が変化した可能性もある。この因果関係の問題については今後より詳細な検討が必要である。


















引用文献
[1] Watson, M. R., Akins, K. A., & Enns, J. T. (2012). Psychon Bull Rev, 19, 211–217.
[2] Gimmestad, K. D. (2010). Doctoral dissertation, University of Missouri--Kansas City.
[3] Skelton, R., Ludwig, C., & Mohr, C. (2009). Cortex, 45 (6), 721-729.

詳細検索