発表

2D-007

食に求める価値に関する研究(2) -性別・家族形態との関連-

[責任発表者] 興津 真理子:1
[連名発表者] 三島 順子:2
1:同志社大学, 2:大阪ガス

目 的
三島・興津(2016)では20−50歳代の成人を対象に,共食・孤食にかかわらず,日々の食事の満足度に影響を与える各人の「食に求める価値」について検討を行った。その結果,20歳代は30代以上50歳代未満と比較して家族と共に食事をすることを重視する傾向が高いことが見いだされた。これは,20歳代は他の年代と比較して,結婚や親になることが未経験の者が多いため,生活全般に対し,現実的な実感よりも理想を回答する傾向があるものと考えられた。
本研究では食に求める価値をさらに検討するにあたり,原家族における食卓経験との関連を明らかにすることを目的とした。性別・未既婚・子どもの有無など個人の経験の要因により,関連を探索的に検討したが,より実生活に基づく実感を拾うため,30代以上50歳代を対象とし,男女別,夫婦と子,夫婦のみ,単身者の3家族形態別に分析を行った。
方 法
調査対象:株式会社マクロミルに登録しているモニタから経営者,自営業でない有職の成人男女1248人(男性624人,女性624人 M=44.04,SD=8.25)
質問項目:食に求める価値,暮らしに求める価値,食卓経験尺度(平岡,2015) ,生活行為の重要度,自己分化尺度(DSI-R(Skowron & Schmitt,2003)の日本語版(中島,2011)) 
手続き:マクロミル社への調査実施委託をし,2016年2月中旬にWeb上で質問紙調査を行った。
結 果 と 考 察
食に求める価値,食卓経験尺度については,対象を30代以上50歳代のみに限定し,それぞれプロマックス法,主因子解による因子分析を行った。その結果,食に求める価値は「家族と食べる食事」「食事時の環境」「食事の好き嫌い」「体に良い食事」「安くて早い」の5因子となった。また,子ども時代の食体験が影響すると考える食卓経験尺度は「個人優先の食事ルール」「食事への配慮の記憶と感謝」「作り手の負担感の記憶」「躾の厳しさ」「食事時の会話の乏しさ」となった。
原家族での食卓経験が現在の食に求める価値に及ぼす影響を明らかにするため,共分散構造分析を性別,家族形態別に行った。分析に用いる因子はピアソンの相関係数で有意な相関がある因子を男女別に選択し,男性においては食卓経験因子から「個人優先の食事のルール」「食事への配慮の記憶と感謝」「作り手の負担感の記憶」「食事時の会話の乏しさ」の4因子,食に求める価値から「家族と食べる食事」「食事時の環境」「食事の好き嫌い」「体に良い食事」の4因子,女性においては「食事への配慮の記憶と感謝」「食事時の会話の乏しさ」「躾の厳しさ」の3因子,食に求める価値から男性と同じく「家族と食べる食事」「食事時の環境」「食事の好き嫌い」「体に良い食事」4因子を使用した。分析結果は表1のようになった。
男女ともに,原家族での食卓経験のうち「食事への配慮の記憶と感謝」因子は,現在の食に求める価値の多くの因子にポジティブな影響を与えており,いずれの家族形態においても同様であった。また,「食事時の会話の乏しさ」因子が与える影響は,有意な場合はいずれもネガティブであった。
さらに,男性においては「夫婦と子」「単身」家族では「作り手の負担感」因子が「家族と食べる食事」因子にポジティブな影響を及ぼしていた。つまり,作り手の負担感の記憶が高いほど,家族と食べる食事を重視する傾向につながっていたといえる。「作り手の負担感」因子は,女性においては当初の相関分析にて有意な相関が認められなかったため,共分散構造分析には含めなかった。したがって当該因子と食に求める価値との関連は男性の特徴と考えられた。男女とも子ども時代は日々の食事の被提供者だったが,成人し,新たに家族を得る過程で日々の食事の提供者という役割の大きさを認識していくと考えられるが,こうしたプロセスにある男女の違いが反映され,現状と過去の食卓経験の比較の仕方に違いが表れている可能性が考えられる。
本研究では3つの家族形態により分析を行ったが,今後はこれに加えて,原家族においても現在の家族においても日々の食事の被提供者であるのか,提供者へと役割が変化したのかという視点も併せて研究を進める必要があろう。

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