発表

2D-005

大学生における友人間のソーシャルサポート互恵性—互恵性の構成要素の質的検討—

[責任発表者] 浅野 更紗:1
[連名発表者] 大木 桃代:2, [連名発表者] 坂本 真士:1
1:日本大学, 2:文教大学

目 的
望ましいソーシャルサポート(以下,SS)の受容によるポジティブな効果は,様々な研究において示されている(e.g., Cohen & McKay, 1984)。しかし,現実の社会関係の中でのSSのやり取りから考えると,受容の側面のみではなく,提供の側面やその相互的な関係も重要な検討要因と言えよう。近年では,SSの提供と受容の両側面を含めて検討した研究が多くみられている(e.g., Bunnk, Doosje, Jans, & Hopstaken; 1993; 内田・橋本,2013)。これらの研究では,Adams(1965)やWalster, Walster, & Bersheid(1978)の提唱した衡平理論を援用してSSの互恵性を定義しており,本人がSSの受容と提供が同程度と感じていれば,SSは互恵状態(衡平状態)であるとしている。先行研究において,SS互恵性の測定は受容と提供の減算を主として用いている。しかし,その測定方法は必ずしも個人間のSS互恵性の認知を含んで測定できているとは言い切れない。提供と受容の差が同程度であることよりも,やり取りに対する本人の“互恵的である”という認知的評価が互恵性の規定因として重要と考えられる。このことは,望まないSS受容によるネガティブな効果が確認されていることや,不可視的サポート(e.g., Bolger, Zuckerman & Kessler, 2000; Bolger & Amarel, 2007; Howland & Simpson, 2010; Kirsch & Lehman, 2015)という視点から考察される。
以上の議論から,先行研究においてSS互恵性の構成要素やその関係性の検討は十分に行われていないと言えよう。そのため,本研究の目的をSSの互恵性の構造・構成要素の探索的な検討とする。SSの互恵性をより明確にするため,友人関係の中でも,親友と挨拶をかわす程度の友人(以下,中程度友人)の比較を通し,認知を含めたSS互恵性を測定可能な尺度の検討を行う。
方 法
調査協力者:面接の同意が得られた参加者大学生男性15名(平均年齢20.07歳,SD=1.44),女性15名(平均年齢18.93歳,SD=0.80),計30名(平均年齢19.50歳,SD=0.79)であった。これら30名全てのデータを分析の対象とした。
面接調査内容:調査内容は,親友と中程度友人それぞれにおいて,(1)親友/中程度友人との関係における互恵性の必要性・その理由,および(2)互恵性によって得られる感情,(3)親友/中程度友人との関係における調査協力者本人の互恵性,および(4)関係における実際のやりとりと,(5)実際のやりとりの互恵性の認知状態・望ましさの評価,(6)親友/中程度友人との関係における本研究において作成したSS互恵性認知尺度の項目の評価,(7)親友/中程度友人との関係における“与え合う”という表現の評価,(8)親友/中程度友人との関係におけるSS授受内容の一致
以上の8点を主軸とした。面接は半構造化面接によって行われ,時間は20分から40分程度であった。
手続き:調査にあたっては,本研究での調査への参加は強制ではないこと,データは適切に処理され,個人のデータのみが公表されることはないこと,本研究における倫理的配慮を口頭で説明した。そののちに同意文書の作成を求め,調査への同意表明とした。
結果処理法:面接によって得られた回答をテクスト化したものをキーワード化した。そののちに,心理学系の大学院生2名が大学教授の指導のもと,KJ法(川喜田,1967)によるキーワード化によって切片化されたすべての記述を分析した。
結 果と考 察
(1)親友および中程度友人のSS互恵性の構成要素
 面接によって得られた回答をKJ法で分類し,親友および中程度友人のSS互恵性の構成要素を分類した。その結果,親友においては「切磋琢磨」,「安心感・信頼感」,「感情の共有」などの情緒的サポートを主としたSS互恵性の構成要素が得られた。また,親友というひとつのカテゴリ内においても,返報性を求めず,相手の求めるサポートを提供することで満足感を得る「提供過多」というグループも得られ,互恵性の多様な様相が示された。親友関係においては,サポートの返報の即時性は求めないことが特徴として見られた。中程度友人においては「大学における情報共有」・「授業内容共有」・「刺激」などの道具的サポートを主とした構成要素が得られた。また,中程度友人の特徴として,サポートに対して即時的なSSの返報が求められることが特徴として見られた。親友および中程度友人の関係性において一致していたのは「切磋琢磨」などの,相手と関わりあう関係のなかで刺激を得ることであった。
以上のことから,SS互恵性の構成要素や関係性における多様性が見られ,SS互恵性の検討必要性が示されたと言えよう。
(2)SS互恵性認知尺度の信頼性の検討
 SS互恵性認知尺度の信頼性および基準関連妥当性の検討を行うため,大学教授の指導のもと,大学院生3名にて評定者間の一貫性を検討した。まず,本研究における互恵性の内容をディスカッションした。次に,評定基準を説明しながら1名のデータを評定し,結果のディスカッションを行い,評定基準の確認を行った。その後に,29名全てのデータを評定した。
その結果,評定者間の級内間相関は高い相関を示した(r=.97, p<.001)。α係数はα=.97と高い信頼性を示した。一致率をみるために算出したκ係数では,十分な一致率を示した(κ=.50~.64, p<.001)。この結果から,評定は信頼性の高いものと判断した。基準関連妥当性検討のため,面接評定と尺度得点の相関係数を算出したところ,親友および中程度友人においていずれも高い正の相関を示した。
今後は,概念の再検討および尺度の改訂・妥当性の検討の継続が必要であると考えられる。

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