発表

2C-101

デートDVを予防・防止する要因の検討(4)—デートDV加害及び被害経験と親密性との関連—

[責任発表者] 井ノ崎 敦子:1
[連名発表者] 赤澤 淳子:2, [連名発表者] 上野 淳子:3, [連名発表者] 松並 知子:4, [連名発表者] 青野 篤子:2, [連名発表者] 下村 淳子:5
1:徳島大学, 2:福山大学, 3:四天王寺大学, 4:武庫川女子大学, 5:愛知学院大学

目 的
 デートDVとは,恋人間の暴力を指す。それは,恋愛関係における不健全な関係性の1つである。デートDV加害者及び被害者はそうでない者に比べると恋愛において不健全な関係性を示すことが予想される。井ノ崎(1999)は,恋愛及び婚姻関係における健全な関係性が親密性であるとし,成人初期女性を対象とした親密性尺度を開発した。親密性は恋愛及び婚姻関係にある相手との情緒的結びつきを示す「一体感」と,その相手に自分の意思や感情を率直に伝える「独自性」の2つの次元から構成されると定義して尺度を開発し,その信頼性と妥当性がほぼ確認された。そこで,本研究では,デートDV加害及び被害経験の有無と親密性との関連について検討することを目的とした。女性の場合,同性同士の情緒的結びつきを大切にする傾向が見られるのに対し,男性は同性同士で女性ほどの情緒的結びつきを求めないことが多い。そうしたことから,性別の違いによって,親密性の意味合いが異なる可能性もあるため,本研究では前述のデートDV加害及び被害経験の有無と親密性の関連について男女別で分析を行う。また親密性は,適度な心理的自立を達成した者同士が構築できる関係性であると考える。従って,親密性の肯定的側面の検討のため,親密性が高いことが「自分自身に感じる自分の中核的な自分らしさの感覚の程度」(伊藤・小玉,2005)を意味する「本来感」の高さにつながるかを検討することをもう一つの本研究での目的とした。
方 法
調査時期と調査対象 2017年4月に近畿,中部,中国地方の4年制大学の大学生に質問紙調査を実施し602名の回答を得た。本研究では,そのうち親密性の相手として恋人を選択した109名(男性27名,女性82名)を分析対象とした。平均年齢は19.46歳であった(SD=1.16)。
調査内容 (1)本来感尺度(伊藤・小玉,2005) 全7項目,5件法。 (2)現在最も身近な人物 「同性の友人」,「異性の友人」,「彼氏/彼女としての交際相手」,「その他」から回答を求めた。 (3)親密性尺度(井ノ崎,1999)の短縮版 全14項目,5件法。上記で選択した人物に対する親密性の感覚や認識について回答を求めた。 (4)デートDV被害 身体的暴力1項目,性的暴力1項目,精神的暴力3項目(否定・脅迫・束縛)の全5項目について,交際相手から受けたことがあるか,「一度もない」,「一度だけある」,「何度もある」の3件法で回答を求めた。 (5)デートDV加害 身体的暴力1項目,性的暴力1項目,精神的暴力3項目(否定・脅迫・束縛)の全5項目について,交際相手にそのような行為を行ったことがあるか,「一度もない」,「一度だけある」,「何度もある」の3件法で回答を求めた。
結 果
親密性尺度の因子分析 親密性尺度得点を因子分析(主因子法,Varimax回転)にかけた結果,井ノ崎(1999)と同様に「独自性」と「一体感」の2因子構造になることがわかった。ただし第1項目については両因子への負荷量に差があまり見られなかったため尺度得点から除外した。従って最終的には第1項目を除く13項目の得点を用いて分析を実施した。
本来感と親密性の関係 本来感と親密性の関連性を検討するために,本来感尺度得点と親密性尺度得点との相関を算出した。その結果,男性では本来感と一体感との間に中等度の正の相関(r=,51,p<.05)が見られた。一方女性では本来感と独自性との間に中等度の正の相関(r=,52,p<.05)が見られた。
デートDV加害と親密性との関係 デートDV加害各項目と親密性の関連性を検討するために,デートDV加害得点と親密性尺度得点との相関を算出した。その結果,男性においてのみ,「束縛」と一体感との間に中等度の負の相関(r=-.62,p<.05)が見られた。
デートDV被害と親密性との関係 デートDV被害各項目と親密性の関連性を検討するために,デートDV被害得点と親密性尺度得点との相関を算出した。その結果,女性においてのみ,「束縛」と独自性との間に低い正の相関(r=.25,p<.10)が見られた。
考 察
本来感と親密性の関係 結果で示したとおり,男性では親密性の中の一体感が本来感と正の相関を示したのに対し,女性では独自性が本来感と正の相関を示した。これは,男性は自分らしさを確認できるのが交際相手との情緒的結びつきを実感できることと関係していることを意味しているのに対し,女性は交際相手に自己主張をできることで自分らしさを確認できることを示唆していると考えられる。つまり男性は交際相手との情緒的結びつきを求めるのに対し,女性は自己主張を受け入れられることを求めると言える。
デートDVと親密性との関係 結果で示したとおり,男性では「束縛」加害と一体感との間に負の相関が見られたのに対し,女性では「束縛」被害と独自性との間に正の相関が見られた。本来感と親密性の関係に関する考察と合わせて考えると,デートDVの「束縛」は個人が恋愛に求める重要な領域と関連すると考えられる。つまり,男性の場合,交際相手との一体感を重視することから,それが満たされない場合に「束縛」加害につながると予想される。一方女性の場合,交際相手への自己主張を重視するので,場合によっては交際相手の不安を刺激して「束縛」被害のリスクにつながると考えられる。
 以上のことから,デートDV予防教育においては,性別によって恋愛に求める側面に違いがあることも考慮した内容を検討することが必要であると考えられる。
引用文献
井ノ崎敦子(1999) 成人初期女性の親密性に関する研究
日本教育心理学会総会発表論文集 (41), 407.
※本研究はJSPS科研費JP16K01805の助成を得て行われた。

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