発表

2C-100

デートDVを予防・防止する要因の検討(3) -依存的恋愛観と暴力間の関連-

[責任発表者] 松並 知子:1
[連名発表者] 赤澤 淳子:2, [連名発表者] 井ノ崎 敦子:3, [連名発表者] 上野 淳子:4, [連名発表者] 青野 篤子:2, [連名発表者] 下村 淳子:5
1:武庫川女子大学, 2:福山大学, 3:徳島大学, 4:四天王寺大学, 5:愛知学院大学

目 的
 デートDVを予防・防止するためには、DVを助長するような風潮や価値観を認識することが重要である。すなわち、現代の若者に多く見られる「恋人は特別な関係であり二人は一体である。相手は自分のものだから自分の好きなように支配しても良いし、束縛は愛の証である」というような依存的恋愛観がデートDVに与える影響を明らかにする必要がある。そこで本研究では、デートDVに関する暴力観と依存的恋愛観の関連を検討する。
 また、依存的恋愛観の背景には自己肯定感や自己評価の低さがあり、見捨てられるのが怖いがゆえに、恋人に依存したり、支配・束縛する傾向があるとされている(伊田,2010)。そこで、精神的健康度の指標ともされ、自分自身を本当らしく感じられる感覚である本来感(伊藤・小玉,2005)や周囲の人への依存傾向との関連を検討することで、依存的恋愛観の背景にも焦点を当てることとする。
方 法
調査時期と調査対象 2017年4月に近畿、中部、中国、四国地方の4年制大学に所属する大学生602名を対象に質問紙調査を実施した。そのうち、社会的望ましさ得点が18点未満で、欠損値のない547名(男性161名、女性386名)を分析対象とした。平均年齢は19.21歳であった(SD=1.19)。
調査内容
本来感尺度(伊藤・小玉, 2005) 自分についてどのように感じているかを尋ねた。全7項目、5件法。
仲間集団への依存尺度(以下、PGD) Lapan&Patton (1986)が作成し中西・葛西(1992)が邦訳した8項目について5件法で回答を求めた。
依存的恋愛観 松並他(2015)を参考に、恋愛関係や恋人に対する考え方や価値観を尋ねた。全11項目、5件法。
デートDV暴力観 身体的暴力、性的暴力、精神的暴力(否定・脅迫・束縛)の全5項目について、交際相手に対しそのような行為を行った場合、暴力にあたると思うかどうかを「全く暴力にあたらない」~「完全に暴力にあたる」の7件法で回答を求めた。
結 果
 因子分析の結果(最尤法、Promax回転)、依存的恋愛観は1因子構造であることが確認された(α=.84)。本来感尺度もPGDも1因子構造であった(α=.80;α=.77)。
 男女差を検討するためt検定を実施した結果、依存的恋愛観は男性が有意に高く(男性M=26.13, SD=7.47;女性M=23.36, SD=6.74; t(518)=4.11, p<.001)、PGDは女性が有意に高かった(男性M=26.54, SD=5.08;女性M=28.07, SD=5.20; t(539)=3.12, p<.01)。暴力観と本来感には有意差は見られなかった。
デートDV暴力観と依存的恋愛観の関連、および、依存的恋愛観の要因を検討するため、男女別に回帰分析を行った結果を以下に示す(Figure1,2)。
考 察
 一般的な依存傾向は女性の方が高かったが、依存的恋愛観は男性の方が高い傾向が見られ、恋人への依存・執着傾向は男性の方が強いことが示唆された。
 依存的恋愛観の背景には低い自尊感情があるとされているが、本来感と依存的恋愛観に直接的な関連は示されなかった。しかし、低い本来感が依存性に影響を与え、周囲の人への依存性が恋人への依存性にも関連している傾向が、男女ともに示された。自分らしくあると感じられるような感覚が低減することが、対人依存傾向を介して、依存的恋愛観へとつながると考えられる。
 また依存的恋愛観が強まると、恋人への暴力行為を「暴力」と認知しない傾向が、男女ともに示された。恋人と自分は一体であるとする考えを持つ人は、恋人への暴力は許容されると考える傾向があるのかもしれない。一方、一般的な依存性を持つ人はむしろ暴力を認知しやすい傾向が示唆された。
 デートDVの予防・防止プログラム開発にあたっては、本来感を増加させたり、健全な恋愛観を持てるようなエンパワメントの視点を持つことも有効であると考えられる。
引用文献
松並知子・赤澤淳子・井ノ崎敦子・上野淳子・青野篤子 (2015). デートDVの被害・加害・ダメージ(2)—依存的恋愛観との関連— 日本心理学会第79回大会発表論文集
*本研究はJSPS科研費JP16K01805の助成を得て行われた。

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