発表

2C-099

デートDVを予防・防止する要因の検討(2)──恋人による被支配感を考慮したデートDV被害に葛藤解決方略が与える影響──

[責任発表者] 上野 淳子:1
[連名発表者] 赤澤 淳子:2, [連名発表者] 松並 知子:3, [連名発表者] 井ノ崎 敦子:4, [連名発表者] 青野 篤子:2, [連名発表者] 下村 淳子:5
1:四天王寺大学, 2:福山大学, 3:武庫川女子大学, 4:徳島大学, 5:愛知学院大学

目 的
 本研究では,デートDV予防・防止プログラム開発に向け,研究(1)でデートDV加害との関連が示された葛藤解決方略が,デートDV被害とも関連しているかを検討した。
デートDV被害を捉えるためには,暴力行為を受けた頻度だけでなく,それによって生じる,恋人に支配されているという感覚(恋人による被支配感)も考慮する必要がある(上野他, 2015)。ただ一度の暴力行為が強固な支配−被支配関係を成立させた場合,被害は重大であると言え,一方,暴力にあたる行為が何度あっても恐怖心が全くなく,別れたければ別れられる自由を感じている場合,被害は軽微であると言えるからである。また,本研究では恋人による暴力行為と被支配感が精神的健康に与える影響も考慮してデートDV被害の大きさを捉えることとした。精神的健康度の指標としては,自分らしくある感覚であり,積極的な他者関係とも関連する本来感(伊藤・小玉, 2005)を用いた。
本研究で検討したモデルをFigure1に示した。
方 法
2017年4月に近畿,中部,中国,四国地方の4年制大学に所属する大学生に質問紙調査を実施した。調査対象者となった大学生602名のうち,本研究では,現在交際中の恋人がおり,被支配感および葛藤解決の相手としてその恋人を選択し,社会的望ましさ得点が18点未満で,欠損値のない81名(男性18名,女性63名)を分析対象とした。平均年齢は19.63歳であった(SD=1.10)。主な調査内容は以下の通りである。
本来感尺度(伊藤・小玉, 2005) 全7項目,5件法。
現在最も身近な人物 「同性の友人」,「異性の友人」,「彼氏/彼女としての交際相手」,「その他」から回答を求めた。
恋人による被支配感(上野他, 2015) 上記で選択した人物に対する感情について回答を求めた。全8項目,5件法。
葛藤解決方略 上記で選択した人物に対する行動として,よそよそしい態度をとったり連絡を無視する「回避」2項目,要求や命令を行う「支配」2項目,自分を抑え相手に従う「服従」2項目,話し合ったり解決策を提案する「協調」5項目について,「全くしない」から「かなりする」までの4件法で回答を求めた。
交際相手の有無 「現在交際相手がいる」,「現在はいないが過去にいた」,「これまで交際経験はない」から回答を求めた。
暴力行為被害 身体的暴力,性的暴力,精神的暴力(否定・脅迫・束縛)の全5項目について,交際相手からそのような行為を受けたことがあるか,「一度もない」,「一度だけある」,「何度もある」の3件法で回答を求めた。
結 果
Figure1のモデルについて,共分散構造分析を行った。モデルの適合度は十分な値であった(χ2(5)=.61, p=.99, GFI=.99, AGFI=.99, CFI=1.00, RMSEA=.00)。有意でないパスを削除した結果をFigure2に示した。
考 察
 恋人からの暴力行為は,恋人からの被支配感を高め,それが本来感を損なっていた。暴力行為から本来感への直接的影響は見られなかった。デートDV被害を捉えるために恋人からの被支配感を考慮する必要性が改めて示された。
暴力行為被害と関連する葛藤解決方略は支配方略と協調方略であった。両者とも積極的な葛藤解決方略と言え,そのため相手の暴力行為を引き起こしやすいのだろう。支配方略は研究(1)で示されたように加害行為とも関連するため,双方向的な暴力を引き起こしやすい方略であることがわかった。消極的方略といえる回避方略と服従方略は暴力行為被害を引き起こすことも,低減することもなかった。しかしながら,回避方略は支配方略と相関関係にあったため,デートDV被害・加害を引き起こす方略と同時に用いられる傾向があると言える。協調方略は暴力行為被害に影響するが,同時に被支配感を低める効果もあった。デートDV被害の予防・防止のためには,協調方略を身につけるプログラム開発が有効であることが示された。
引用文献
伊藤正哉・小玉正博 (2005). 自分らしくある感覚(本来感)と自尊感情がwell-beingに及ぼす影響の検討 教育心理学研究, 53, 74-85.
上野淳子・松並知子・赤澤淳子・井ノ崎敦子・青野篤子 (2015). デートDVの被害・加害・ダメージ(3)—恋人による被支配感への影響— 日本心理学会第79回大会発表論文集
*本研究はJSPS科研費JP16K01805の助成を得て行われた。

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