発表

2C-098

デートDVを予防・防止する要因の検討(1)―共感性・怒りの制御・葛藤解決方略とデートDV加害との関連―

[責任発表者] 赤澤 淳子:1
[連名発表者] 井ノ崎 敦子:2, [連名発表者] 上野 淳子:3, [連名発表者] 松並 知子:4, [連名発表者] 青野 篤子:1, [連名発表者] 下村 淳子:5
1:福山大学, 2:徳島大学, 3:四天王寺大学, 4:武庫川女子大学, 5:愛知学院大学

目 的
 近年,高校生のデート経験率は50%を超えており(片瀬,2013),10歳代から20歳代の頃に交際相手からの暴力(デートDV)被害に遭っている女性は約5人に1人,男性は10人に1人と報告されている(内閣府,2015).ところが,現在高校で行われている保健教育の中で最も多いテーマは「性感染症のしくみと予防」(76.0%)であり,「異性との交際・デートDV」は54%と最も少なかった(下村・赤澤・井ノ崎・上野・松並,2017).海外では既に若年者を対象としたデートDVの予防・防止プログラムが開発され,それらの効果検証にかかわる研究論文も多い.近年,国内においてもデートDV予防・防止を目的としたプログラムの効果検証が実施されている(e.g. 須賀・森田・斉藤,2013; 富安・鈴井,2014; 笹竹,2015).しかし,それらの研究は,意識面の変化における効果の検討に留まっている.今後はデートDVの被害・加害における意識面のみならず,行動面での変容を促すような予防教育のあり方や効果検証に関する研究が望まれる(赤澤,2016).そこで,本研究では,高校生および大学生を対象としたデートDVの行動面も含めて変容させるためのより効果的な予防・防止プログラムを開発するために,加害行為に影響を及ぼす要因について検討することを目的とした.具体的には,デートDVに関する先行研究を概観し,以下のような仮説モデルを作成し検討した(Figure 1).
方 法
調査時期と調査対象 2017年4月に近畿,中部,中国,四国地方の4年制大学の大学生に質問紙調査を実施し602名の回答を得た.本研究では,そのうち現在および過去に交際経験があり,葛藤解決の相手として「彼女/彼氏としての交際相手」を選択し,社会的望ましさ得点が18点未満で欠損値のない83名を分析対象とした.平均年齢は19.53歳であった(SD=1.13).
調査内容 (1)デートDV加害:身体的暴力1項目,性的暴力1項目,精神的暴力3項目の計5項目を作成し,3件法で尋ねた.その際,暴力の程度が軽微になるよう項目を作成した.(2)共感性:葉山・植村・萩原(2008)の共感性プロセス尺度から認知的側面として「他者の感情に対する敏感性」(以下,敏感性)3項目,「視点取得」3項目,感情的側面として「ポジティブな感情の共有」3項目,「ネガティブな感情への共有」3項目の全12項目を採用し,5件法で回答を求めた.(3)怒りの制御:鈴木・春木(1994)によるSTAXI日本語版の怒りの制御項目8項目を用い,4件法で尋ねた.(4)葛藤解決方略:回避方略2項目,支配方略2項目,服従方略2項目,協調方略5項目を作成し,4件法で回答を求めた.
倫理的配慮:本研究は福山大学学術研究倫理委員会で審査を受け承認された.
結 果
 Figure1のモデルについて,共分散構造分析を行ったところ高い適合度が得られた(χ2(3)=.93, p=.82, GFI=.996, AGFI=.978, CFI=1.00, RMSEA=.00)。有意なパスをFigure 2に示した.
考 察
共感性の認知的側面である他者の視点取得が高いほど怒りの制御も高まり,支配方略が抑制され,デートDV加害も低減する可能性が示された.また,視点取得が高いほど支配方略が抑制されるという関連もみられた.さらに,怒りの制御は直接デートDVを低減させる可能性が示された.一方,他者視点の取得と同じく共感性の認知的側面である他者の感情への敏感性は,支配方略を高め,デートDV加害を間接的に高めるという関連が示された.
デートDV予防・防止プログラムの作成時には,他者の感情に目を向けるだけでなく,他者の立場に立ち理解するというスキルの習得が必要であることが明らかとなった.また,攻撃性はこれまでもデートDVとの関連が示されていたが,怒りを制御するスキルの習得がデートDVの予防において大きな効果をもたらす可能性が改めて示された.さらに,葛藤場面に遭遇した時に使用可能な方略に関する教育の効果の検証が求められることが本研究より明らかとなった.
引用文献
赤澤淳子(2016) 国内におけるデートDV研究のレビューと今後の課題 福山大学人間文化学部紀要,16,128-146.                      他
※本研究はJSPS科研費JP16K01805の助成を得て行われた. 

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