発表

2C-089

全人的健康が良好である勤労者の心理社会的特性と健康行動—決定木分析を用いた探索的検討—

[責任発表者] 羽山 順子:1
[連名発表者] 津田 彰:2, [連名発表者] 伏島 あゆみ:3, [連名発表者] 田中 芳幸:4, [連名発表者] 岡村 尚昌:5, [連名発表者] 永田 勝太郎:6, [連名発表者] 山本 哲郎:7
1:広島国際大学, 2:久留米大学, 3:金沢工業大学, 4:京都橘大学, 5:久留米大学高次脳疾患研究所, 6:国際全人医療研究所, 7:TTC,研究センター

目 的
 演者ら(2012)は、働く人のこころとからだの早期健康チェック(Comprehensive Health Check for Workers, CHCW)質問紙を,身体的,心理行動的,社会的,実存面といった,全人的な健康状態を簡便に測定することを目的に開発した。
 本研究は,決定木分析を用いて、この質問紙によって評価される「心身の健康状態および社会的環境が良好であると自己評価し,生きがいを持って生活できている」全人的な健康状態が良好である勤労者の心理社会的特性と健康行動を用いて明らかにすることを目的とした。
方 法
 1.対象者:分析対象者は全国の勤労者3077名(男性1592名,女性1485名,平均年齢±SD43.8±10.1歳)。
2.調査尺度:1) CHCW質問紙: 30項目5件法の質問紙であり,健康状態の4側面(身体的,心理・行動的,社会的,実存的)を測定。4側面の合計得点を全人的健康として用いた。2)心理社会的特性:婚姻歴,勤務形態など社会的属性8項目,肥満度,治療中の疾患の有無の身体健康2項目。3)健康行動:睡眠時間など4項目であった。
3.調査時期:2011年11月から12月の1か月であった。
4.手続き:1)対象者のリクルート:ウェブサイト「生活向上web(http://www. seikatsu-kojo.jp/)」にて参加者を募集し,オンライン上から回答を得た。2)分析手続き:CHCW質問紙のカットオフポイントに基づき,対象者を全人的健康が良好である者とそうでない者に分けた。さらに心理社会的特性と健康行動14項目(年代,性,学歴,婚姻歴,治療中疾患の有無,肥満度,雇用形態,役職の有無,夜勤の有無,休日日数,睡眠時間,一週間の運動回数,喫煙,飲酒, 1カ月間のストレス経験頻度)を用いて,決定木分析(Classification And Regression Tree:CART)で解析した。分岐の基準にはジニ係数を利用した。用いたデータは全てカテゴリカルデータであり,小数点以下の数値で示された分岐点は,全て整数での分岐変数に修正した。
5.倫理的配慮:久留米大学倫理委員会の承認を得た。
結 果
1.対象者の健康状態と健康行動
 CHCW質問紙得点の区別に従えば,全人的健康が良好であった者は844名(27.4%)であった。うつ病などの精神的現在症を有する者は205名(6.7%),BMIから肥満と判定された者は20.2%であった。喫煙習慣のある者は22.2%,飲酒習慣がある者は62.8%だった。
3.全人的健康に関連する心理社会的特性と健康行動
 決定木分析の結果,実存的側面を除く3側面(身体的,心理・行動的,社会的),およびCHCWの合計得点で示される全人的健康に影響を与える因子は「1カ月間のストレス経験頻度」のみが選択された。すなわち,「(この1カ月間に)強いストレスを感じたことがない」ことが,3側面と全人的健康の良好さに影響していた。
 一方,実存的側面の健康に影響を及ぼす変数として,1) 1カ月間のストレス経験頻度,2)一週間の運動回数,3)喫煙習慣,4)雇用形態が選択された(図1)。
考 察
強いストレス経験の頻度が良好な全人的健康に影響していた。全人的健康状態が良好であるかは,強いストレス経験の頻度を尋ねることによって予測できる可能性が示された。また,運動習慣は生きがいや自分らしさなど自身の生き方に関する実存的側面にも影響することが示唆された。
引用文献
津田彰・下光輝一・小田切優子・伏島あゆみ・田中芳幸・岡村尚昌・山口英世・山本哲郎・Mori, H.・Batthyany, A.・Singh, A. N.・永田勝太郎(2012). 働く人のこころとからだの早期健康チェック(Comprehensive Health Check for Workers, CHCW)質問紙の開発 全人的医療11:2-28.
※本研究はストレス・メンタルヘルス研究会(代表:山本哲郎)の調査研究の二次データ解析をまとめたものである。

詳細検索