発表

2C-064

親切の強みとポジティブ感情への共感が主観的幸福感に及ぼす影響

[責任発表者] 小國 龍治:1
[連名発表者] 大竹 恵子:1
1:関西学院大学

目 的
 強み (strengths) は,ポジティブ心理学における主要な研究テーマの一つであり,思考,感情,行動に反映されるポジティブな特性とされている (Park et al., 2004)。日常生活で強みを活用することは人々のウェルビーイングを高めるが (Seligman et al., 2005),その背景にあるメカニズムについては明らかになっていない (Meyers & van Woerkom, 2016)。
 Peterson & Seligman (2004) が分類した,24の強みの中でも親切の強みは特に重要とされ,他者との良好な関係性の維持・構築に繋がっている (Gillham et al., 2011)。親切行動は,他者に恩恵をもたらす行為とされており (Lyubomirsky et al., 2005),その行動の背景には,他者の感情を理解し,共感することが関連している (Baron-Cohen & Wheelwright, 2004)。従来の研究では,他者のネガティブな感情に対する共感に焦点が当てられてきたが (Eisenberg, 2000),近年の共感研究では,他者のポジティブな感情に対する共感も注目されている (Yue et al., 2016; 以下,ポジティブ感情への共感)。ポジティブ感情への共感は,他者により良い経験をしてほしいという接近欲求と関連していることから,親切行動を促進する要因の一つとなっていることが示唆される。Telle & Pfister (2016) は,ポジティブ感情への共感が向社会的行動やウェルビーイングを促進するという仮説モデルを提案している。本研究では,このモデルを参考に親切の強みがウェルビーイングに及ぼす影響を検討することを目的とした。
 近年の強みに関する研究では,強みを活用するという行動的側面に加えて,強みの活用に対する動機や認識といった認知的側面にも注目がされている (e.g., 小國・大竹, 2017)。強みを活用する背景には,動機や認識といった認知的側面が影響している (Seligman, 2012) ことからも,本研究では,親切行動を行いたいという動機 (親切動機) や親切行動を行なっているという認識 (親切認識) に焦点を当てて検討を行う。
方 法
 対象者 249名の大学生 (男性75名,女性173名,性別未回答1名,M = 19.41歳,SD = 1.57歳) が調査に参加した。
 質問紙 (1) 親切に関する項目 (Otake et al., 2006):親切動機と親切認識について,5件法で回答を求めた。(2) 共感的感情反応尺度 (櫻井他, 2011):共感性の感情的側面について,“ポジティブな感情への好感・共有”と“ネガティブな感情の共有”,“ネガティブな感情への同情”の3因子から構成されており,5件法で回答を求めた。(3) 日本語版主観的幸福感尺度 (島井他, 2004):主観的な幸福感を尋ねる項目から構成され,7件法で回答を求めた。
 倫理的配慮 本研究は関西学院大学「人を対象とする行動学系研究」の承認 (2016-55) を受けて実施した。
結 果
 親切動機と親切認識,ポジティブ感情への共感,主観的幸福感の関連を検討するために相関分析を行った結果 (Table 1),親切動機や親切認識はポジティブ感情への共感や主観的幸福感と中程度の正の相関を示すことが明らかになった。さらにポジティブ感情への共感は主観的幸福感と中程度の正の相関を示していた。
 つぎに,Telle & Pfister (2016) の仮説モデルを参考に,ポジティブ感情への共感や親切の強みが主観的幸福感に及ぼす影響を検討した。なお,本研究では,ポジティブ感情への共感と主観的幸福感を潜在変数として,親切動機と親切認識は観測変数として扱った。構造方程式モデリングの結果,モデルの適合度は許容できる値であった (χ2 (102) = 292.054, p < .01., CFI = 0.93, TLI = 0.90, RMSEA = 0.09 (95%Cl = [0.08, 0.10]) )。Figure 1に標準化された解を示す。
考 察
 本研究の結果から,ポジティブな共感は直接的に主観的幸福感に影響を及ぼすこと,親切動機と親切認識を介して主観的幸福感に影響を及すことが明らかになった。
 強みに関する従来の研究が,強みを活用するという行動的側面に注目してきた。一方で,本研究では親切の強みの認知的側面 (親切動機と親切認識) に焦点を当て,親切の強みに関する新たなモデルを提案した。強みがウェルビーイングを促進するメカニズムを解明するためには,行動的側面からの検討だけでなく,動機や認識といった認知的側面からも捉えていくことが必要であると示唆された。
 今後は本研究の知見を教育・臨床現場で行われている強みの介入研究 (Quinlan et al., 2015) にも応用することで,新たな介入技法の開発を目指していく。

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