発表

2C-048

広告画像における単純接触効果

[責任発表者] 八木 善彦:1
[連名発表者] 井上 和哉:2
1:立正大学, 2:産業技術総合研究所

目 的
 同一の対象に繰り返し接触するだけで,後にその対象は好意的に評価される(単純接触効果)。単純接触効果は,反復接触刺激に対する顕在的な認知が伴わない場合にも生起することから(Kunst-Wilson & Zajonc, 1980),自動的な好意的態度形成過程を反映する現象として,広告業界からも注目を集めてきた。一方,近年の研究では,単純接触効果の生起が観察者の注意や構えなどの認知的要因の影響を強く受けており,必ずしも全ての反復接触対象において好意的評価が増加するわけでないことが示されている(e.g., Yagi et al., 2009)。そこで本研究では,こうした近年の示唆を背景に,モデルと商品から構成される典型的な広告画像において単純接触効果が生じる構成要素を検討することとした。

方 法
装置 刺激の制御および反応の記録にはノート型PC(ASUS ZenBook UX31E)を用いた。 
刺激 日本を除くアジア圏で実際に使用された広告画像16枚を刺激として使用した。画像は女性モデル1名と商品から構成され,水平方向中心から,女性モデル部分または商品部分に2分割することが可能なものを用いた。
参加者 実験1では25名,実験2では39名,実験3では38名の参加者が参加した。いずれも正常な視力を有しており,複数の実験に参加した者はいなかった。
手続き 実験は接触および好意度評定の2段階から構成された。接触段階における1試行の刺激呈示系列は,注視点500ms,広告画像500ms,空白画面1500mであった。参加者の課題は呈示される広告画像を集中して観察することであった。8枚の広告画像がランダムな順序で8回反復呈示された。好意度評定段階における刺激の呈示系列は,注視点500ms,広告画像(キー押し反応まで呈示),空白画面1500msであった。参加者の課題は,呈示された広告画像の好ましさを5件法(1.好ましくない〜 5.好ましい)で評定し,キー押しによって報告することであった。16枚の広告画像が一度ずつ呈示された。この内,半数は接触段階で反復呈示された画像(接触刺激)またはその一部(女性モデルまたは商品)であり,残りの半数はこの段階で初めて呈示される画像(新奇刺激)であった。
実験間の操作 接触段階では全ての実験において,広告画像全体が用いられた。好意度評定段階では,実験1において広告画像全体,実験2において女性モデル部分のみ,実験3において商品部分のみが呈示された。

結果と考察
 実験目的の察知等の理由から,計4名の参加者のデータを分析から除外した(実験1〜3でそれぞれ,1名,1名,2名)。各実験における,接触刺激と新奇刺激に対する好意度評定値をFig. 1に示す。実験毎に接触の有無(接触vs新奇)が好意度評定値に及ぼす影響を1要因参加者内の分散分析によって比較したところ,実験1(F(1,23)=5.60, p=.03,ηp2=.20)および実験2(F(1,37)=12.20,p<.01,ηp2=.25)においてのみ有意な効果が認められ,実験3では認められなかった。この傾向をさらに確認するため,評定刺激の種類(実験2:モデル部分vs実験3:商品部分)と接触の有無(接触vs新奇)を要因とする2要因混合分散分析を実施した結果,有意な交互作用が認められ(F(1,72)=6.24, p=.01,ηp2=.08),実験2において認められた単純接触効果が,実験3においては消失したことが確認された。
 本研究の結果は,単純接触効果が視野内に呈示された全ての刺激に対して自動的に生じるわけではないことを改めて確認するものであった。同時にこうした結果は,広告デザイン等の分野においても,有益な示唆を提供するものと考えられる。


引用文献
Kunst-Wilson, W. R. & Zajonc, R. B.(1980). Affective discrimination of stimuli that cannot be recognized. Science, 207, 557-558.
Yagi et al. (2009). Attentional modulation of the mere exposure effect. Journal of Experimental Psychology: Human Memory and Learning, 35, 1403-1410.

付記
 本研究は平成27-29年度科学研究費助成事業(基盤研究(C):課題番号15K00211)の補助を受けた。

詳細検索