発表

2C-047

商品を触るイメージと触覚の重要性が商品に対する所有感の生起に及ぼす影響の検討

[責任発表者] 井関 紗代:1
[連名発表者] 北神 慎司:1
1:名古屋大学

目 的
 私たちは買い物をしているとき、商品を手にとって買うかどうか考えるということがしばしばある。しかし、この商品を手にとるという行為自体に、その商品を買いたくなってしまう効果があることは、あまり自覚していないだろう。これまでの研究において、ただ商品を触るだけで、自分の所有物ではないにもかかわらず、所有感(psychological ownership)が生じることがわかっている(Peck & Shu, 2009)。ここで言う所有感とは、事物に対して抱く、「自分の物である」という感覚のことである。そして、所有感は、保有効果を引き起こす(e.g., Brasel & Gips, 2014)。保有効果とは、自分が所有する物に高い価値を感じ、手放すことに強い抵抗を感じることである(Kahneman et al., 1990)。商品を触ることで、所有感が高まり、保有効果が大きくなるため、よりその商品に高い価値を感じて、購入したくなるのである(e.g., Reb & Connolly, 2007)。それでは、商品を触ることができない場合はどうだろうか。仮想世界であっても、商品と自己が相互作用することは、商品に対する鮮明なイメージを想起させ、商品に関する自己の行動を心的にシミュレーションすることにつながる(Schlosser, 2003)。そして、Peck et al. (2013) では、商品を触る代わりに、商品を触っているところを想像するだけで、所有感が高まることが明らかになっている。しかし、商品の購入を検討したり、使用したりするときに、その商品を触ることがどの程度重要であるのか(触覚の重要性)は、商品によってさまざまである。触るイメージが商品と自己の相互作用を促すのであれば、この触覚の重要性が「触るイメージが所有感を高める効果」にどのような影響を及ぼすのか検討する必要がある。

方 法
実験参加者:大学生119名(男性57名, 平均年齢18.52歳)
デザイン:触るイメージ (あり, なし)× 商品に対する触覚の重要性 (高群, 低群)の2要因混合計画
刺激:全12種類のカラー画像(予備調査で選定)。触覚の重要性高群6種類(ボールペン, スウェット, アロマハンドクリーム, スティック型ハサミ, 自立型ペンケース, タンブラー)と低群6種類(イヤホン, 靴べら, エコバッグ, パスケース, USBメモリ, レターセット)
手続き:実験は集団で実施され、実験冊子には、1ページごとに、1つの商品画像が配置された。イメージあり群の参加者は、まず30秒間商品画像を見た後に、1分間、目を閉じた状態で、その商品を触ったり持ったりしてどう感じるかを想像しながら、商品を評価するよう教示された。一方、イメージなし群の参加者は、1分間、単に商品の評価について考えるよう教示された。これらの手続きが12種類の刺激ごとに繰り返され、刺激の提示順は参加者間でカウンターバランスを行った。商品に対する所有感を評定するために、Pierce et al. (2001) の質問項目(3項目)を和訳したものが用いられた。

結 果
 触るイメージと触覚の重要性を独立変数とし、所有感を従属変数とする2要因分散分析を行った。その結果、図1に示すように、触るイメージの主効果は有意であり (F(1, 117) = 11.67, p = .001, ηp2 = .09)、触覚の重要性の主効果は有意傾向であったが(F(1, 117) = 3.82, p = .05, ηp2 = .03)、交互作用は有意ではなかった (F(1, 117) = 0.19, p = .66, ηp2 = .002)。

考 察
 触るイメージが所有感を高める効果は、商品に対する触覚の重要性の高低にかかわらず、頑健であることが明らかになった。このことから、実際に触って使用する商品の場合、スウェットのような触覚の重要性が高い商品であっても、USBメモリのような触覚の重要性が比較的低い商品であっても、その商品の写真を見て、手にとるところを想像するだけで、自分の物であるかのような感覚が高まることを示している。
 加えて、触るイメージをするかどうかにかかわらず、商品を触ることができない状況において、触覚の重要性が低い商品の方が、高い商品に比べて、所有感は高まりやすいことが確認された。商品の写真を見るという手続きの場合、触覚の重要性が高い商品は、実際に触ることによるフィードバックが得られず、商品と自己との相互作用を知覚しづらかったため、所有感が高まりにくかったと考えられる。また、Elder & Krishna(2012)では、商品画像が促進する心的シミュレーションは、利き手で物を握っている場合に、抑制されることが確認されている。本研究においても、筆記用具で利き手が塞がっていた実験参加者も多く、触覚の重要性が高い商品に対して、より心的シミュレーションが抑制された可能性も示唆される。これらのことから、触覚の重要性が高い商品に対して、購買意図を高めるためには、商品と消費者の相互作用をより促進するような方略を用いる必要があると考えられる。

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