発表

2C-046

握り部分のある対象の把持について -正確さと空間配置の検討-

[責任発表者] 多田 美香里:1
1:関西福祉科学大学

目 的
 ハンドル等の握り部分が明確に存在する対象に関しては、把持対象のハンドルの位置が、観察者の手の方向と一致した場合に反応が促進されると言われている(Tucker & Ellis, 1998)。また、日常生活でよく使用される対象については、過去の把持経験の蓄積から、速やかにかつ正確に把持運動が行われると考えられる(Masson, Bub, & Breure, 2011)。本研究は、握り部分のある対象の把持について、把持の経験がある対象と把持の経験がない対象とを比較したものである。

方 法
実験参加者
 大学生44名(平均年齢19.0歳, SD = 0.9)が実験に参加した。
刺激
 ハンドル等の握り部分が明確に存在する物品のうち、日常生活で把持の経験がある物品(把持経験あり条件:マグカップ等の日常生活用品)と、把持経験がほとんどない物品(把持経験なし条件:機械部品等の専門用品)を刺激対象とした。また、対象が正立していて実験参加者の実際の手の方向と適合した向きのものと(適合条件)、逆の向きにあり適合していないものを用意した(非適合条件)。各条件ごとに異なる3対象の写真を用いた。対象の写真と手の写真を並べて提示した。手の写真は、対象を握る直前の形とした。
手続き
 集団で実験を行った。実験参加者の前のスクリーンに対象の写真を3秒間提示し、2秒経過後に手の写真が1秒間現れるように提示した。次の対象の写真を提示するまでのインターバルは3秒とした。提示順序は、把持経験と適合性のいずれの条件もすべてランダムにした。実験参加者には、各対象について提示されたどちらの手で握るか判断して用紙に回答するよう求めた。
 すべての写真を提示した後、ふたたび対象の写真のみを提示し、普段右手と左手のどちらの手で握るかを回答するよう求めた。手の写真はすべての条件で右手と左手を用意し、実験参加者には把持はきき手で行うことを想定するよう伝え、きき手でない写真の場合は回答しないよう求めた。

結 果
 実験参加者の実験時の判断と実験後の回答とが異なっている場合に誤反応とし、各条件別に平均を求めた(Fig.1)。誤反応について、把持経験(2:対象の把持経験がある場合、把持経験がない場合)×適合性(2:実験参加者の手の向きと対象の適合性がある場合、適合性がない場合)の2要因分散分析を行ったところ、交互作用が有意であった(F (1, 43) = 4.16, p < .01, η2 = .01)。そこで、単純主効果の検定を行ったところ、把持経験の効果については、適合条件と非適合条件の両者ともに有意ではなかった。適合性の効果については、把持経験あり条件でのみ有意であった(F (1, 43) = 11.06, p < .03, η2 = .03)。過去に把持を行った経験のある対象においては、適合条件に比べて非適合条件の誤反応が多いことが示された。

Fig.1 条件別の誤反応数の平均

考 察
把持経験のある対象においては、観察者の手の方向と適合していない場合には、適合している配置よりも把持が不正確になることが示された。対象の把持は過去の把持経験から影響を受けるため、普段の生活で対象を把持するときによく接する機会のある適合した空間配置で正確に行われると考えられる。このような効果は、過去の把持経験がない対象においてはみられず、ハンドルがある対象の把持の正確さには空間配置の適合性は影響しない可能性が示された。この結果は、ハンドル効果は顕在的な空間の適合性には基づかないという先行研究の結果(Saccone, Churches, & Nicholls, 2016)と合致するものであると考える。

引用文献
Masson, M. E. J., Bub, D. N. and Breure, A. T. 2011 Priming of reach and grasp action by handled object, Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 37 (5), 1470-1484.
Saccone, E. J., Churches, O., Nicholls, M. E. R. 2016 Explicit spatial compatibility is not critical to the object handle effect. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 42(10), 1643-1653.
Tucker, M. & Ellis, R. 1998 On the relations between seen objects and components of potential actions. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 24(3), 830-840.

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