発表

2C-039

色と甘味の条件付けが甘味閾値に及ぼす影響

[責任発表者] 濱田 洋輝:1
[連名発表者] 佐藤 敬子:1, [連名発表者] 吉岡 昌子:2
1:香川大学, 2:愛知大学

目 的
我々が味を判断する際,味覚だけでなく,視覚,嗅覚,触覚,聴覚の情報を用いて複合的に判断している。Maga(1974)は飲料を着色し,甘味,酸味,苦味,塩味の認知閾値の変化を調査した。その結果,甘味(ショ糖)に関して,黄色で味の促進効果,緑色で抑制効果が見られた。その理由として,個々の経験の中での特徴的な食べ物の色を連想することが味に影響を与えると報告している。ここで,認知閾値とは,人が味を感じ,その味の種類を判断できる最小の濃度のことである。また,本稿では他の感覚との相互作用によって,味覚として元々知覚された感覚量よりも強く感じる効果を味覚の促進効果,弱く感じる効果を味覚の抑制効果と呼ぶ。上述したように,Maga(1974)は着色された飲料からその色に関連する食べ物を想像することで,認知閾値に変化が生じたことを示唆した。これまでの食行動により,色と味覚の間に何等かの条件付けが形成されているという前提をおくとき,条件付けによって味覚と色の連合を変化させることができるだろうか。本稿では,甘味に着目し,甘さをイメージする色彩とイメージしない色彩を条件刺激として用い,それを甘味溶液として呈示する条件付け実験を行った。そして,条件付けが甘味の認知閾値に及ぼす影響を調査した。加えて,潜在的連合テスト(IAT)を用いて,甘味と色彩に対する潜在的連合の変化を調査した。

方 法
参加者 実験参加者は大学生9名(平均年21.8歳,男性6名,女性3名)であった。参加者には,実験1時間前から飲食しないように指示した。9名は,条件刺激の異なる3群に分けられた。実験群Aは甘さをイメージする色(赤),実験群Bは甘さをイメージしない色(青),統制群Cはランダムな色彩で着色した溶液を条件付け刺激として用いた。
刺激 味溶液は,ショ糖を用い,溶液は常温とした。認知閾値実験で用いる色彩は,赤・青・無色の3色とした。味溶液は,コップを装着する箱にLEDとバッテリー,制御基板を組み込み,コップ底から光を照射する構造とし,刺激を光によって疑似的に着色した。実験室の照明が色の見えに影響することを考慮し,約520lxにそろえて実験を行った。濃度は,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0 g/Lの6濃度とした。
手順 まず,条件付けを行う前に,赤・青・無色での甘味の認知閾値を調べた(1回目)。参加者は,ランダムで呈示された6濃度の味溶液と蒸留水を飲み,甘さを感じるかを判断した。これを2回ずつ行った。条件付けは,10.0g/Lの濃度の濃い甘味溶液を,各群に対応する色彩で着色されたものを,1週間の期間で2回飲んでもらった。その後,2回目の認知閾値実験を行った。この操作をもう1度行い,計3回,認知閾値を調べた。
IATは,弁別の反応時間を用いて連合強度を測定する手法の一つである(中村・野寺,2011)。本実験では,弁別にかかった時間を甘味-赤,塩味-青の潜在的連合強度として算出した。

結 果
 濃度別の正答率に対して,ロジスティック回帰分析を行うことで,認知閾値を算出した。認知閾値は,回帰式上で,蒸留水と比べて甘味の感知が50%になる濃度とした。各群の認知閾値(実験群A(a),実験群B(b))とIAT(c)の結果を図1に示す。なおIATにおける時間は長いほど甘味-赤,塩味-青の連合強度が強いことを意味する。

考 察
統制群に関しては,実験参加者人数が少なかったため,認知閾値の算出がうまく行えなかった。実験群A(赤),実験群B(青)に関しては,条件付けによって認知閾値の低下傾向が見られた。つまり,味の促進効果の傾向が見られた。しかし,その効果は条件付けした色彩との関連はみられなかった。このことから,色彩に関係なく,条件付けによって一時的な味覚の促進効果が生じる可能性があることが示唆された。IATの結果,実験群A・B,統制群に関わらず,赤-甘味,青-塩味の潜在的連合強度が強いことが示された。しかし,条件付けの色や期間は影響せず,このことから,条件付けは潜在的連合強度に影響を及ぼさないことが示唆された。

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