発表

2C-025

Creative Hopelessness成立プロセスの実験的検討

[責任発表者] 高橋 まどか:1
[連名発表者] 前田 わかな:1, [連名発表者] 嶋 大樹:1,2, [連名発表者] 井上 和哉:1, [連名発表者] 齋藤 順一:1,2, [連名発表者] 熊野 宏昭:1
1:早稲田大学, 2:日本学術振興会

目的
 Acceptance and Commitment Therapy (ACT) が注目する病理的な行動的プロセスの中でも,体験の回避は,個人の行動の幅を狭める中心的な要因として挙げられる(Herzberg et al.,2012)。体験の回避は,コントロール・アジェンダと呼ばれる「思考・感情・性格が制御できれば,行動問題が解決する」という考えによって生起・維持される行動的プロセスである。
 ACTの介入には,コントロール・アジェンダを弱めるために,体験の回避のために払う代償や体験の回避の不機能性を理解させる取り組みとして,Creative Hopelessness (CH) がある(Harris,2009 武藤監訳 2012)。CHは,クライエントにコントロール・アジェンダの存在に気づかせ(Masuda・武藤,2011),コントロール・アジェンダの不毛性を体験的に理解させる介入である(Bach&Moran,2008 武藤他監訳 2009)。一方で,CHは建設的な行動変容に影響する動機づけに関するルールとして作用するとされており(Hayes et al.,1999),言語的理解も必要な側面があると考えられる。CHは体験の回避への固執からその代替行動を増やすアクセプタンスへと動機づけを高めるものとして作用する重要なプロセスであるが,ACTの概念のなかで最も理解が進んでおらず(Hayes et al.,2012 武藤他監訳 2014),CH成立の際に生じうる行動的プロセスの定義が曖昧である(酒井他,2013)。
 そこで,本研究では,CHが成立するプロセスを仮定し(Figure),実験的介入で,CH成立プロセスが実際に進むかどうかを検討することを目的とする。
方法
対象者早稲田大学に通う大学生20名(男性6名,女性14名,年齢19.85±1.31歳)を分析対象とした。
調査材料a)CAQ(嶋他,2016):コントロール・アジェンダの程度,下位尺度「CAQ-f」はコントロール・アジェンダを保持している程度,下位尺度「CAQ-a」はコントロール・アジェンダに沿った回避の程度を測定,b)AAQ-II(嶋他,2013):行動的プロセスとしての体験の回避の程度,c)マインドフルネスルール指標(前田他,2016):代替行動に対してオープンになる有用性を示すルールの獲得度,d)APQ(嶋他,2017):行動的プロセスとしてのアクセプタンスの程度,e)心理教育やエクササイズの理解度(Visual Analogue Scale;VAS)
手続き実験群と統制群に,2回の来室時および1回目来室後1週間のHWで介入を行った。実験群には,介入1回目でCH成立プロセス(1)〜(2),2回目で(3)〜(5)に焦点を当て心理教育やACTのエクササイズを行い,統制群には自己理解の重要性や不快な状況での解決方法について心理教育を行った。HWでは不快な状況においての対処行動について記録し,統制群においてCHが成立するのを避けるため,実験群にのみ対処行動の長期的・短期的効果について記入してもらった。
結果
 群×時期の2要因混合計画の分散分析の結果,CAQ下位尺度「CAQ-f」において,交互作用が有意傾向(F(2.48,44.65)=2.95,p<.10),「CAQ-a」において,時期の主効果が有意傾向(F(3,54)=2.66,p<.10)であった。マインドフルネスルール指標下位尺度「私的出来事を受け入れる選択」において,交互作用が有意傾向(F(3,54)=2.64,p<.10),APQ下位尺度「行動レパートリーの拡大」において,交互作用が有意傾向(F(3,54)=2.27,p<.10)であった。
考察
 CAQ下位尺度「CAQ-f」やマインドフルネスルール指標下位尺度「私的出来事を受け入れる選択」における得点の変化から,コントロール・アジェンダの不機能性を言語的に理解するプロセスとして想定した(1),(2),(4)は成立した可能性が示唆された。一方で,CAQ下位尺度「CAQ-a」における得点の変化より,同じく不機能性を体験的に理解するプロセスの(3)に関しても成立した可能性が考えられたが,AAQ-IIの変化による裏付けは得られなかった。代替行動が選択できることを体験的に理解するプロセスの(5)は,APQ下位尺度「行動レパートリーの拡大」における得点の変化から,部分的には成立した可能性があるが,実際の行動変容にまで至っているかどうかは確認できなかった。今後は,実際の行動の変化も含めて検討をし,さらにフォローアップ期の測定を行う必要があると考える。
引用文献
酒井美枝・武藤崇・大月友(2016).Creative Hopelessnessにおいて獲得されたルールが行動変容に及ぼす効果—動機づけオーギュメンタルの枠組みからの実験的研究— 行動療法研究,42(1),51-62.
嶋大樹・高橋まどか・熊野宏昭(2016).Control Agenda Questionnaire作成の試み:経過の報告 日本認知療法学会第16回大会発表論文集,176.

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