発表

2C-017

ハイヒールは援助行動を誘発する? ハイヒールの魅力と援助行動の関係の検討

[責任発表者] 小川 佳純:1
[連名発表者] 井藤 寛志:2, [連名発表者] 北神 慎司:1
1:名古屋大学, 2:愛知大学

目 的
 身体魅力は個人の魅力を判断するときに大きな影響を与えていることが知られており (Walster, 1966) ,小川 (2017,認知心) はGuénguen (2014) の女性がハイヒールを履くことが男性の援助行動を高めるという結果を踏まえて,ハイヒールによる魅力の向上が援助行動に与える影響が通文化的であるのかということを,実際にフィールド実験を行い追試している。結果はハイヒールを履くことによる魅力の向上が援助行動に及ぼす影響は見られなかったが,フィールド実験であったために実験状況や被験者の統制が困難であったことが結果に影響していた可能性が考えられる。また,実験参加者が実際にハイヒールを魅力的だと思ったから援助行動を行ったのかということが定かではなかった。そのため,今回は実験室実験において動画刺激を用いてハイヒールの魅力と援助行動を検討する。
方 法
 実験参加者 成人32名 (平均年齢22.2歳±5.1) であった。
 実験計画 ヒールの高さ (0㎝,5㎝,9.5㎝) と実験参加者の視点 (後ろと横) の2要因参加者内計画と,性別 (男,女) の1要因参加者間の,3要因混合計画であった。
 実験協力者 22歳の女性1人に協力して頂いた。靴以外の服装は全て統一し, 黒いエナメル生地のヒールの高さの異なる3種類の靴をそれぞれ順番に履いて動画を撮影した。
 材料 靴三種類 (0㎝,5㎝9.5cm) ,ビデオカメラ (GZ-HM110-S Victor社製) ,三脚,Windows 10 を OS とするノート型パーソナルコンピュータ (NY2200S, EPSON 社製) ,質問紙であった。
ビデオ材料 撮影場所は,愛知大学豊橋校舎の梢風館の前で撮影した。ビデオは各ヒールの高さの3条件において,後ろから歩いている様子と横から歩いている様子を撮影した。後ろからの撮影では協力者にビデオカメラの前に後ろ向きに立ってもらい,そこからまっすぐ5mほどなるべく各条件で同じ速度で歩き,2mから3mの位置に来たらパスケースを落とした。横からの撮影においても2mから3m程の位置でパスケースを落とし,そのままフレームアウトするまで歩き続けた。撮影したビデオは5秒ほどであった。
 手続き 実験参加者には動画刺激を見て評価をする実験を行った。まず実験者は「今から女性が歩いているところを写した動画の評定を行って戴きます。5秒ほどの短い動画なので集中して見て下さい。また,歩いている女性を中心に見てください。」と教示した。撮影した動画6つは各実験参加者にランダムに提示された。動画の提示はWindows Media Playerで行った。1つの動画が終わるごとにその動画について魅力度を1から5で評価し,援助したいか,したくないかを二択で質問紙において回答することを6回繰り返した。毎回偶然その場に居合わせたという状況を守るために,動画の提示は各1回ずつとし,ハイヒールの高さが変わっていることは告げなかった。
結 果
 平均魅力度においては後ろから見た魅力度平均の男女別での分散分析を行ったところ,ヒールの高さの主効果が有意であった (F (2,90) = 3.29, p < .05) 。しかし,Bonferroni法による多重比較を用いた下位検定では有意差は見られなかった。横から見た場合においてもヒール間で有意傾向が見られたが (F (2,90) = 2.93, p < .10) ,Bonferroni法による多重比較を用いた下位検定では有意差は見られなかった。
 援助したいと答えた割合においてはヒールの高さ (3) ×性別 (2) の2要因のχ2検定を行った。後ろから見た援助割合の違いは有意ではなかった (χ2(2) = 0.028, n.s.) 。また横から見た場合の援助割合の違いにおいても有意ではなかった (χ2(2) = 0.158, n.s.) 。後ろから見た時と横から見たときの両方における援助したいと思う割合にヒールの高さの影響はなかった。
考 察
今回はまず,平均魅力度においてヒールの要因に主効果が見られた。この結果から,ヒールのある靴を履いたことによる足取りの変化が魅力に繋がった可能性が考えられる。このことについてMorris et al . (2012) においてもハイヒールを履くことで歩幅が小さくなり,より女性らしい足取りになるということを指摘している。また援助したいかという問いに対して援助したくないと答えた人が圧倒的に少なく,ヒール間に違いは見られなかった。このことは社会的望ましさを意識した回答を実験参加者がしていた可能性がある。援助したいかしたくないかの二択で実験参加者に質問していた為に援助したくないとは答えづらかったのではないかと思われる為,質問項目を見直す必要がある。また今回は実験参加者の年齢が大学生中心になっているが,若者よりも年配者の方が援助行動をよくするということから (Lowe & Ritchey, 1973; 坂口ら1978) 年齢別で分けて実験を行うとより興味深い結果が得られるのではないかと思われる。

主な引用文献
Guéguen, N. (2014). High Heel Increase Woman’s Attractiveness. Archivesof Sexual Behavior, 44, 2227-2235

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