発表

2C-001

創造性と精神的健康の個人差をふまえたマインドワンダリングの質的側面に関する検討

[責任発表者] 山岡 明奈:1,2
[連名発表者] 湯川 進太郎:1
1:筑波大学, 2:日本学術振興会

目 的
 創造性が高い人は,しばしば精神的に不健康であると指摘されてきた(Thys et al., 2013)。しかしながらPaek et al. (2016)は,このような関連の効果量は非常に小さい(0と有意に変わらない)ことを報告しており,現実には,創造性が高くても精神的に健康な人が一定数存在していると考えられる。
 本研究では,創造性や精神的不健康さと関連のある概念としてマインドワンダリング(mind-wandering;以下MWとする)に着目した。MWとは,目の前の課題や周りの環境から注意がそれて,自己生成的な思考を考える現象である(Smallwood & Schooler, 2015)。先行研究において,MWを行うことで創造的な問題解決や洞察問題が増進される可能性が報告されている(e.g., Baird et al., 2013)。また,ネガティブな内容のMWや過去に関するMWが,ネガティブ気分と関連すること,反すう的なMWや無自覚に行われたMWが,抑うつと関連することが報告されている(Hoffmann et al., 2016; Ottaviani et al., 2015)。一方で,MW中に,未来に関する内容や自分にとって興味のあることを考えている場合はポジティブ気分と関連すると言われている(Franklin et al., 2013; Ruby et al., 2013)。
 これらの知見をふまえると,創造性が高く精神的に健康な人と不健康な人の間にはMWの内容,自覚の有無,話題数といった点に違いかあると考えられる。本研究ではこれを実験的に検討することを目的とする。
方 法
参加者
 関東圏内の大学生および大学院生62名(男40名,女22名,平均年齢19.67±2.98歳)が実験に参加した。
質問紙の構成
 創造性を測定するためにUnusual Uses Test (Guilford, 1967)を行った。参加者は靴下と缶詰の缶の通常とは異なる使い方を,各3分間でできるだけ多く挙げるよう求められた。回答は流暢性,柔軟性,評価的独自性,希少的独自性,非重複的独自性の観点から採点された。また,精神的不健康さの指標として,抑うつ傾向を日本語版CES-D(島ら,1985)を用いて,不眠傾向を日本語版Athens Insomnia Scale (Okajima et al., 2013)を用いて測定した。さらに,日本語版DDFS(梶村・野村,2016)を用いて日頃のMW傾向を測定した。
実験手続き
 まず,ワーキングメモリ容量を測定するために,短縮版Operation Span Taskと短縮版Symmetry Span Taskを行った(Oswald et al., 2015)。次に,映像視聴を行い,参加者は動画投稿サイトで公開されていた新幹線の車窓風景を,一部抜粋・編集した映像を見るよう教示された。映像視聴中に2分30秒,1分20秒,2分,3分,1分30秒,1分,2分30秒の間隔で思考プローブを提示し,直前の思考について,内容(映像無関連性・ポジティブ・ネガティブ・過去・現在・未来・他者・自己),自覚の有無,前回のプローブと同じ内容か,感情状態(ポジティブ・ネガティブ)を9件法で回答するよう求めた。
結 果
 創造性の指標間の相関係数を算出したところ,流暢性,柔軟性,希少的独自性間の値がいずれもr=.93を超えていた。このような高い相関は流暢性によってもたらされている可能性が指摘されていることから(Silvia et al., 2008),3つの変数の合成得点を算出し,流暢性Rという変数を作成した。
 抑うつ傾向の高さや創造性(流暢性R,非重複的独自性,評価的独自性)の高さ,そしてその交互作用によって,MWの質的な側面に違いがあるかを検討するため,階層的重回帰分析を行った。思考プローブで測定したMWの質的側面(内容,自覚の有無,話題数,感情状態)を従属変数としたところ,過去の内容に関するモデルが有意であった(Table 1)。
 また,交互作用(a)×(b)について単純傾斜分析を行ったところ,流暢性Rが高いときは,抑うつ傾向が低い方が,MW中に過去のことを考えていないことが示された(β=.49; p<.01)。
考 察
 創造性が高く精神的に健康な人は過去のことをあまり考えていない可能性が示された。本研究ではMWの生起状況を統一して実験を行ったが,今後は生起状況にも着目し,創造性が高く精神的に健康な人が日常のどのような場面でMWをしているかを,経験サンプリング法を用いて検討していきたい。
主要引用文献
Ruby, F. J. M., Smallwood, J., Engen, H., & Singer, T. (2013). How self-generated thought shapes mood – The relation between mind-wandering and mood depends on the socio-temporal content of thoughts. PLOS ONE, 8, e77554.

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