発表

2B-095

大学運動部の動機づけ雰囲気と部員の動機づけとの関連―競技形態,達成動機,競技年数の調整効果の検討―

[責任発表者] 三ツ村 美沙子:1
[連名発表者] 伴 真莉乃#:2, [連名発表者] 高木 浩人:1
1:愛知学院大学, 2:桶源住興

目 的
 運動部員の動機づけについて考える際,個人の特性だけでなく,個人を取り巻く環境の影響も考慮すべきであろう。集団内の環境要因として,近年注目されている概念に動機づけ雰囲気(motivational climate)がある。動機づけ雰囲気とは,重要な他者(コーチや部員等)によって作られる雰囲気のことであり(西田・小縣, 2008),努力に価値が置かれ,学習や熟達のプロセスそのものが重視されている熟達雰囲気と,能力に価値が置かれ,他者との比較を通しての達成が重視されている成績雰囲気に区別される(中須賀他, 2014)。熟達雰囲気は内発的動機づけとの正の関連が指摘されているが(永田他, 2015; 手嶌, 2009),動機づけ雰囲気が常に同様の影響を及ぼすとは限らない。そこで本研究では,調整変数として競技形態(団体‐個人),部員の達成動機,競技年数を取り上げ,大学運動部の動機づけ雰囲気と部員の動機づけとの関連に及ぼす調整効果について検討する。

方 法
 調査対象および分析対象 7つの大学運動部の部員163名を調査対象とし,このうち回答に欠損のなかった146名(男性97名,女性49名,平均年齢19.59歳,SD=1.12歳)を分析対象とした。部活動の内訳は,団体競技が硬式野球部41名,ラクロス部25名,バレーボール部10名,チアリーダー部7名,個人競技が日本拳法部39名,アーチェリー部12名,水泳部12名であった。
 質問紙の構成 (1)フェイスシート:性別,年齢,学年,部活名,競技年数を尋ねた。(2)動機づけ雰囲気:中須賀他(2016)の運動部活動の動機づけ雰囲気測定尺度を使用。熟達雰囲気4項目,成績雰囲気4項目の計8項目。(3)達成動機:堀野・森(1991)の達成動機測定尺度から,自己充実的達成動機10項目,競争的達成動機9項目の計19項目。(4)動機づけ:杉山(2008)のThe Sport Motivation Scale日本語改訂版から,内発的な動機づけを表す刺激,成就,知識,外発的な動機づけを表す同一化,取り入れ,外的制御,そして非動機づけの7因子24項目を使用。なお,(2)~(4)の回答はすべて5件法で求めた。
 手続き 各部で質問紙の配布,回答,回収をしてもらい,後日受け取った。

結果と考察
 因子分析および信頼性分析 動機づけ雰囲気,動機づけ,達成動機の尺度について因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行い,因子負荷量.40以上の項目を採用した。その結果,動機づけ雰囲気尺度は2因子解が適切であると判断し,第1因子を「熟達雰囲気」(3項目),第2因子を「成績雰囲気」(4項目)とした(順にα=.835, .685)。動機づけ尺度は3因子解が適切であると判断し,第1因子を「内発的動機づけ」(10項目),第2因子を「外発的動機づけ」(9項目),第3因子を「非動機づけ」(4項目)とした(順にα=.906, .892, .898)。達成動機については解釈しやすい結果が得られず,当初の想定通りの項目で信頼性分析を行った。自己充実的達成動機はα=.856,競争的達成動機はα=.814が得られた。
 動機づけ雰囲気と動機づけの関連 動機づけの3因子を目的変数,動機づけ雰囲気の2因子を説明変数とする重回帰分析を行った。その結果,内発的動機づけに対しては熟達雰囲気が有意な正の関連を(β=.346, p<.001),外発的動機づけに対しては熟達雰囲気と成績雰囲気が有意な正の関連を示していた(β=.201, p<.05; β=.278, p<.001)。
 調整効果の検討 競技形態(団体‐個人),達成動機,競技年数の調整効果について検討するため,階層的重回帰分析を行った。目的変数として動機づけ,説明変数としてStep1で動機づけ雰囲気,調整変数,Step2で動機づけ雰囲気と調整変数の交互作用項をそれぞれ1つずつ投入した。なお,競技年数は個人の年数だけでなく各部の平均年数も用い,各部を競技年数が短い群(ラクロス,チアリーダー,アーチェリー,日本拳法)と長い群(バレーボール,硬式野球,水泳)に分類した。
 分析の結果,内発的動機づけに対する熟達雰囲気と競技形態(団体‐個人)の交互作用項のみがb=−.417(p<.01)で有意となった(表1)。この結果をグラフ化したのが図1である。単純傾斜分析を行ったところ,団体競技の場合の単純傾斜は有意であり(b=.466, p<.001),個人競技の場合の単純傾斜は有意ではなかった(b=.050, n.s.)。つまり,団体競技では内発的動機づけに対して熟達雰囲気が有意な正の関連を示したが,個人競技では内発的動機づけに対して熟達雰囲気が有意な関連を示さなかった。
 以上より,競技形態によって熟達雰囲気の影響の仕方が異なり,特に団体競技において熟達雰囲気が内発的動機づけを高めることが明らかとなった。このことから,動機づけ雰囲気研究で調整変数を扱うことの重要性が示唆された。

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