発表

2B-065

親による子どもの基本的心理欲求充足の認知について

[責任発表者] 福住 紀明:1
[連名発表者] 石井 僚:2, [連名発表者] 石川 信一:3, [連名発表者] 村上 達也:1, [連名発表者] 村山 航#:4, [連名発表者] 大谷 和大:5, [連名発表者] 榊 美知子:4, [連名発表者] 鈴木 高志:1, [連名発表者] 田中 あゆみ:3
1:高知工科大学, 2:同志社大学研究開発推進機構, 3:同志社大学, 4:University of Reading, 5:北海道大学

目 的
 自己決定理論 (Deci & Ryan, 2000) の下位理論の一つである基本的心理欲求理論では,3つの基本的心理欲求 (自律性・関係性・有能感) が充足されることで,動機づけや精神的健康が高まるとされる。親子関係の文脈では,親による自律性支援などの養育行動によって,有能感や学業成績を予測することが示され (e.g., Grolnick et al., 1991),子どもの自己開示を媒介して親による子どもの行動や精神的健康の認知の精度が高まることが報告されている (Mageau et al., 2016; Soenes et al., 2006)。このように,基本的心理欲求を充足するための親の養育行動に関する研究は,親による自律的な支援のあり方に着目されてきた。
一方,Murayama et al. (2016) は,親による子ども能力への高すぎる期待が学業成績にマイナスの影響を与えるなど,親が子どもの状況を正しく認知していない場合,子どもの学習に一定の悪影響を与えることを指摘している。Murayama et al. (2016) の指摘を踏まえると,親が子どもの基本的心理欲求を充足させるような養育行動を行うためには,子どもの基本的心理欲求充足の状況を親が正しく認知している必要があると考えられる。しかしながら,子どもに対する基本的心理欲求充足の認知は,教師と子どもとの関係では検討されているが (e.g., Lee & Reeve., 2012),親と子どもとの関係においてはほとんど検討されてこなかった。
そこで本研究では,親が子どもの基本的心理欲求充足の認知について,親による基本的心理欲求充足の質や種類も含めて検討することを目的とする。
方 法
調査協力者と手続き 調査会社に登録している30歳以上の親186名 (父40名,母146名) とその子ども186名 (男子88名,女子98名;Mage=14.02歳,SD=0.86) のダイアドデータを分析対象とした。郵送法による質問紙調査を調査会社に委託して行った。
調査内容
欲求充足尺度 Nishimura & Suzuki (2016) が作成したBPNSFSから,自律性への欲求充足 (例: 私はやりたいことを自由に選べていると感じている),関係性への欲求充足 (例: わたしが気に掛けている人は,私のことも気に掛けてくれていると感じている),有能さへの欲求充足 (例: 私は,たいていのことを,うまく行う自信があると感じている) の三因子を用いた。各因子はそれぞれ4項目5件法で構成される。親と子どもに尋ねた。親については,子どもが考えていることを想像して回答することを教示して,親が子どもの欲求充足をどの程度認知できているかについて測定した。
統制変数 属性として,親には子どもとの続柄(回答者が父親か母親か),父母の年齢,父母の学歴を尋ねた。子どもには,性別と年齢を尋ねた。学業成績は,田中・山内 (2000) を参考に5教科 (国語, 社会, 数学, 理科, 英語) の成績を7件法で子どもに尋ねた。5教科の加算平均を学業成績の得点として用いた。
結 果
 統制変数と子どもの欲求充足を独立変数,親による欲求充足の認知を従属変数とした階層的重回帰分析を行った (Table 1)。回帰式は,Step 1で統制変数を投入し,Step 2で子どもの欲求充足を投入した (VIF<4)。その結果,親による欲求充足の認知は,Step 2のモデルにおいて,有意な決定係数の増加が確認された。親による欲求充足の認知と同じ種類の欲求充足から正の影響が確認された。
考 察
階層的重回帰分析の結果,各変数を統制した上でも,子どもの欲求充足と親の欲求充足の認知には正の関連が示された。本研究により,親による子どもの欲求充足の認知について,親は子どもの欲求充足の質や種類を比較的正しく認知していることが明らかになった。今後,欲求充足の子ども認知の正確さによって,子どもに対する養育行動がどのように異なるのかについて検討する必要がある。
引用文献
Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). The" what" and" why" of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. Psychological inquiry, 11, 227-268.
Grolnick, W. S., Ryan, R. M., & Deci, E. L. (1991). Inner resources for school achievement: Motivational mediators of children's perceptions of their parents. Journal of educational psychology, 83, 508-517.
Lee, W., & Reeve, J. (2012). Teachers’ estimates of their students’ motivation and engagement: Being in synch with students. Educational Psychology, 32, 727-747.
Mageau, G. A., Sherman, A., Grusec, J. E., Koestner, R., & Bureau, J. S. (2016). Different ways of knowing a child and their relations to mother‐reported autonomy support. Social Development. Advance online publication.
Murayama, K., Pekrun, R., Suzuki, M., Marsh, H. W., & Lichtenfeld, S. (2016). Don’t aim too high for your kids: Parental overaspiration undermines students’ learning in mathematics. Journal of personality and social psychology, 111, 766-779.
Nishimura, T., & Suzuki, T. (2016). Basic psychological need satisfaction and frustration in Japan: controlling for the big five personality traits. Japanese Psychological Research, 58, 320-331.
Soenens, B., Vansteenkiste, M., Luyckx, K., & Goossens, L. (2006). Parenting and adolescent problem behavior: an integrated model with adolescent self-disclosure and perceived parental knowledge as intervening variables. Developmental psychology, 42, 305-318.
田中あゆみ・山内弘継 (2000). 教室における達成動機, 目標志向, 内発的興味, 学業成績の因果モデルの検討 心理学研究, 71, 317-324.
(本研究はJSPS科研費JP16H06406の助成を受けた。)

詳細検索