発表

2B-062

Southampton Nostalgia Scale(SNS)日本語版作成の試み

[責任発表者] 長峯 聖人:1,2
[連名発表者] 外山 美樹:1
1:筑波大学, 2:日本学術振興会

目 的
 ノスタルジアは,“a sentimental longing for one’s past”と定義されており(Sedikides et al., 2008),近年多くの注目を集めている感情概念である。ノスタルジアの主な特徴としては,bittersweetであることや適応的な機能を持つことが知られており,特に青年期と老年期において経験されやすいことが指摘されている(Davis, 1979; Wildschut et al., 2006)。
 ノスタルジアに関する研究の多くは,実験的に喚起させたノスタルジアを検討している。しかし,個人がどの程度ノスタルジアを感じやすいかという特性ノスタルジアの観点からの検討もいくつか行われている。
 特性ノスタルジアは主に,尺度によって測定されることが多い。特性ノスタルジアの代表的な尺度の1つに,Batcho Nostalgia Inventory(BNI: Batcho, 1995)がある。この尺度は20の対象(e.g., 家族)に対し,それぞれどの程度ノスタルジアを感じやすいかを測定するものである。BNIは特定の対象に関する特性ノスタルジアについて検討できる点で優れているが,全般的な特性ノスタルジアの測定には不向きである。この問題点を補う形で作成されたのが,Southampton Nostalgia Scale(SNS: Routledge et al., 2008)である。SNSは全5項目から構成され,日常的にどの程度ノスタルジアを感じやすいかという点から特性ノスタルジアを捉えている。この尺度は数多くのノスタルジア研究で使用されており,高い信頼性と妥当性が確認されているが,未だ日本語版は作成されていない。
 そこで本研究では,SNS日本語版の作成および信頼性と妥当性の検証を行うことを目的とする。

方 法
 調査対象者 関東圏内の大学生242名(女性98名,平均年齢18.68±1.40歳)
 調査手続き 授業の前後の時間を使い,集団形式で質問紙を実施した。
調査内容 以下の尺度を用いた。1. SNS日本語版:原著者であるDr. Routledgeから翻訳権を得たうえで,翻訳およびバックトランスレーションを行った。全5項目。2. 時間的連続性:石井(2015)の時間的連続性尺度のうち,過去と現在の連続性下位尺度4項目。3. 孤独感:豊島・佐藤(2013)のUCLA孤独感尺度第3版短縮版6項目。4. 自尊感情:桜井(2000)の自尊感情尺度10項目。5.過去への態度:石川(2013)の過去の捉え方尺度のうち,過去への否定的態度下位尺度4項目,受容的態度下位尺度6項目。

結果と考察
SNS日本語版の因子構造 SNS日本語版の5項目について回答の偏向状況を確認したところ,回答が著しく偏っている項目がなかったため,5項目すべてを用いて最尤法による探索的因子分析を行った(Table 1)。その結果,固有値の減衰状況(3.80, 0.60, 0.33…)から単因子構造が妥当であると判断した。いずれの項目も高い負荷量(.60以上)を示していたため,全5項目をSNS日本語版とした。各項目の内容と因子負荷量をTable 1に示す。また,Cronbachのα係数を算出したところ,十分な値(.92)が得られたため,高い内的整合性が示されたと判断した。全5項目を合成した得点の平均は18.77(SD=6.65)であった。
SNS日本語版と外的な変数との関連 SNS日本語版の外的な側面における構成概念妥当性を検証するため,各変数との相関係数(Pearsonの積率相関係数,以下同様)を算出した。その結果,SNSは時間的連続性(r=.22, p<.01),孤独感(r=.16, p<.05),過去への否定的態度(r=.15, p<.05),過去への受容的態度(r=.31, p<.01)とは正の相関を示し,自尊感情とは無相関(r=−.11, ns)であった。
 本研究の結果から,SNS日本語版は一定の信頼性を有することが明らかになった。また,外的な変数との関連も原版のSNSと同様の結果を示しており,構成概念妥当性の一部が確認されたといえる。

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