発表

2B-051

ゲーム事態での確率による価値割引Ⅲ 報酬を最大化する際のリスク志向は局所的な選択でもリスク志向か?

[責任発表者] 吉野 俊彦:1
[連名発表者] 山下 博志:2, [連名発表者] 吉野 智富美#:3
1:神戸親和女子大学, 2:大阪学院大学, 3:ABAサービス&コンサルティング

問題と目的
 価値割引の実験研究は一般的に質問紙法を用いるが,筆者らのこれまでの実験でも双曲線関数へのあてはまりがよくないという問題があった。この問題を最小化する方法として筆者らはゲーム事態を用いたところ,質問紙による同様の実験事態に比べて,双曲線関数への高いあてはまりが得られた (山下・吉野, 2015; 吉野・山下・吉野, 2016)。
こうした実験では一連の二者択一の選択を行い,割引率を算出する。こうした局所的な選択に基づいた結果が,ギャンブル依存などの臨床的な問題と関連づけられることがある (eg., Holt, Green, & Myerson, 2003)。
けれども,局所的な選択は,参加者の特性としての衝動性や依存性を必ずしも反映していない可能性がある。Yoshino, Yamashita, & Davey (2016) は,欧米の参加者に実験参加への報酬について,固定報酬 (F) または変動報酬 (V) 条件のいずれかを選んでもらい,ゲーム事態での確率による価値割引実験を行った。V条件では予備実験の結果に基づいた正規分布表によって報酬が変化した。一方F条件ではゲームの結果に関係なく£5が得られた。この全般的な選択が局所的な選択行動を反映するなら,V条件の参加者の方が,F条件の参加者に比べて割引率が低くなることが予測されるが,平均割引率は2 つの条件間で有意な差がなかった。また,V条件の参加者の割引率の範囲はF条件に比べて大きかった。
本実験ではYoshino et al. (2016) の手続きを日本人の参加者を対象として再検証した。1) 参加者が選択したF条件とV条件によって割引率が異なるかどうか,2) 割引率の範囲に同様な違いが生じるかどうかを目的とした。
方 法
参加者 価値割引についての知識を持たない大学生10名。実験内容の説明と,FまたはV条件に基づいて実験終了時に金銭報酬があることを伝えた上で参加についての同意を得た。
装置 パソコンを用いて実験の制御と記録を行った。調査課題 (S)とゲーム課題 (G) とをS-G-SまたはG-S-Gの順に実施した。ゲーム課題ではディスプレイのウィンドウ内に,100個の円形の「くじ」を10行10列に配置し,確実に得られる得点,総得点,試行番号,および試行を進めるためのボタンを表示した。調査課題では確実に獲得できる得点と10点が獲得できる確率とを並置してどちらかを選んでもらった。
手続き いずれの課題でも確実得点とくじの結果による不確実得点のどちらかを選んで,できるだけ多くの得点を得るように教示した。
Fig 1に示す報酬表を見せて,F条件かV条件を参加者に選んでもらった。ゲーム課題の試行は,「当たり」の数のくじが1秒間黄色になることで始まった。この数だけランダムにセットされた「当たり」くじをクリックすると10点 (外れの時は0点) が加算された。ウィンドウ下部中央に表示されている数字をクリックするとその得点 (確実得点) が加算された。9通りの確実得点と当たりの確率 (5通り) との組み合わせからなる45試行を1ブロックとしてランダムに提示した。調査課題では確実得点の数字と確率の数字が表示されたが,選択の結果も累積得点も表示されなかった (プローブ試行)。
結果と考察
V条件とF条件を選択した参加者はそれぞれ5名ずつだった。Table 1に各参加者のゲーム課題と調査課題における割引率を示した。V条件の参加者2の調査課題を除いて,双曲線関数への当てはまり率は0.776~0.974と高かった。ゲーム課題の割引率はF条件では0.795,V条件では1.084と,F条件の方がリスク志向の値を示した。一方調査課題では,それぞれ3.084,1.853と,高い割引率を示した。また,参加者間での割引率のばらつきは調査課題の方がゲーム課題よりも大きく,またゲーム課題ではV条件の方が大きかった。条件と課題の2要因混合デザインによる分散分析を行ったところ,2つの主効果,交互作用のいずれも有意でなかった (ps > .05)。
以上の結果は,Yoshino et al (2016) と共通しており,報酬条件によって設定したリスク志向/ 嫌悪の傾向が,ゲーム事態での局所的なリスク志向/ 嫌悪と必ずしも対応しないことを
示唆する。また,本実験でもV条件で大きなばらつきが観察されたことから,V条件のゲーム課題での反応ストラテジのばらつきがF条件に比べて大きいと考えられる。

詳細検索