発表

2B-043

行動の帰属や抑制が食べ物画像の認知的葛藤に及ぼす影響

[責任発表者] 粠田 千尋:1
[連名発表者] 杉尾 武志:1
1:同志社大学

目 的
摂食障害を含めた食行動パターンの違いが、食べ物画像を用いたフランカー課題の認知的葛藤(cognitive conflict)に影響を及ぼすことが明らかにされている[1]。認知的葛藤は、フランカー課題内の中央ターゲットと周辺フランカーの一致性によって生じるフランカー効果や、課題間のターゲットとフランカーの一致性によって生じる競合適応効果が関係している。先行研究から、食行動パターンとフランカー課題を用いた競合関係は示されたが[1]、食行動パターンは食べ物を食べるときの行動特性であるため、普段の一般的な行動特性がフランカー課題と競合関係にあるかは示されていない。食行動パターンと関連性がある一般的な行動特性には、行動の原因に対する帰属傾向や(内的・外的)、行動の抑制傾向が挙げられている[2, 3]。本研究は、一般的な行動特性である行動の帰属や抑制が、食べ物画像を用いたフランカー課題に対して生じる認知的葛藤に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
方 法
参加者 大学生20名(内男性7名、平均年齢20.95歳)。
刺激と課題 食ベ物の画像を縦横3×3で配置した刺激を用いた(視角16.5°×13.5°)。参加者は、PC画面上(EIZO製液晶モニター23.5型FG2415)に提示されたターゲットの味情報に応じて、反応キーを押し分けることが求められた。
要因計画 課題に用いる要因の1つに、ターゲットとフランカーの一致性を用いた。一致性の条件は、ターゲットとフランカーが同じ一致条件(congruent, 以下C)、ターゲットとフランカーは同じ味のカテゴリーであるが、視覚刺激が異なる条件(不一致刺激;incongruent stimulus, 以下ICS)、ターゲットとフランカーの味のカテゴリーが異なる条件(不一致反応;incongruent response, 以下ICR)であった。要因計画は、画像の味(甘い、苦い)、ターゲットとフランカーの一致性(C、ICS、ICR)の参加者内2要因デザインで行った。
手続き 各試行は、注視点(1750ms)、周辺画像(100ms)、フランカー課題(1500ms)、フィードバック(1000ms)の順で提示した(図1)。参加者は40試行を8ブロック、計320試行実施した。ブロック間に参加者の疲労を避けるための休憩を挟んだ。ディスプレイと参加者の距離は60cmを保ち、暗室で行われた。全ブロック終了後、参加者は行動の帰属統制の所在尺度日本語版と[4]、行動抑制系/行動賦活系尺度日本語版に回答した[5]。
結 果
正答した150msから1000msまでの反応時間を、対数変換を用いて正規分布に近似させた。これを含めた実験データに関して、混合モデル分析を行った。固定因子は味と一致性、ランダム因子は参加者とした。さらに、参加者ごとの個々の尺度得点を中心化し、共変量の固定因子とした。最終的に、AICが最も小さくなるモデルを採用した。最終モデルにおいて分散分析を行った結果、適合性(F(2,17)=3.97, p=.031)、行動の帰属統制の所在尺度(F(1,18)=19.44, p<.001)、行動抑制系尺度において主効果がみられた(F(1,18)=5.39, p=.031)。一致性では、CがICSより反応時間が早くなった。さらに、外的な帰属傾向が高いと反応時間が早く、行動抑制系の活動が高いと反応時間が遅くなった。
競合適応効果では、先行試行とその次の試行の一致性の組み合わせに対して参加者内2要因分散分析を行った。結果、先行試行と次の試行の間に交互作用がみられ(F(4,34)=2.49, p=.051)、先行試行と次の試行がICSであるとき競合適応効果が生じた。葛藤適応効果と個々の尺度について相関分析を行ったが結果は見られなかった。
考 察
外的な帰属傾向が高くなるにつれてフランカー課題全般の反応時間が速くなったという結果は、ターゲットとフランカーが不一致であっても、生じる競合が低くなっていたことを示唆している。このことは、周囲の状況によって食行動が影響されやすいグループが、食べ物に対してより早く注意を定位できることを反映していると考えられる[6]。さらに、甘味と苦味それぞれに対する一般的な食行動は生存的な観点からも目的が異なるため[7]、ターゲットとフランカーそれぞれに対する注意を向けた結果として生じている反応を独立に保持していた可能性がある。不一致刺激条件ではターゲットとフランカーのいずれが、反応をより喚起させたのかを確認する必要があるために反応時間が増加したと考えられる。
一方で行動抑制系の活動が高くなると、課題の反応時間が全体的に遅くなっていた。この結果は、刺激に対して連合している反応の自動的な喚起がより抑制されていたことを意味していると考えられる。食行動をより意図的かつ制御的に行うことが可能なグループにおいて、Go/No-Go課題を用いて食べ物に対する注意にバイアスがかかっていることからも、こうした解釈は支持される[8]。

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