発表

2B-036

洞察問題解決における閾下プライミング効果と認知資源

[責任発表者] 西田 勇樹:1,3
[連名発表者] Valeria Castldi#:2, [連名発表者] 織田 涼:1, [連名発表者] 服部 雅史:1, [連名発表者] Laura Macchi#:2, [連名発表者] Michele Copelli#:2
1:立命館大学, 2:ミラノ・ビコッカ大学, 3:日本学術振興会

Hattori, Sloman, & Orita (2013)は,閾下プライミングによる手がかり(閾下手がかり)の呈示によって洞察問題の成績が促進されることを示した。しかし,閾下手がかりは,洞察を妨害してしまうこともあることが明らかになってきた。西田・織田・服部(2016)は,無意識的に得た情報の有効性を判断するしくみがあるかどうかを確認するため,閾下手がかり呈示後に「実は手がかりがあった」という教示を与えた。閾下手がかりの有効性について,無意識的判断が行われているならば,教示によって閾下手がかりの促進効果が期待されたが,実際には観察されなかった。これは,教示が問題への過剰な集中を促し,教示による促進効果が,集中による妨害効果と相殺されたためかもしれない。そこで本研究では,二重課題を全参加者に課し,過剰集中を緩和した状況で教示の有効性を検討した。

方 法
実験参加者 ミラノ・ビコッカ大学の学生および大学院生127人(男性34人,女性93人,平均年齢24.1歳,SD = 4.0)が実験に参加者した。参加者は,2(閾下手がかり:有/無)× 2(教示:有/無)の4群に無作為に割りつけられた。
手続き 問題の説明と教示の呈示は,デスクトップ型パーソナルコンピュータ上で実施された。課題は,8枚硬貨問題を用い(図1),参加者は画面上の硬貨をマウスで動かして問題を解いた。実験開始から1分経過後,半数の参加者には手がかり画像が挿入された映像が1分間呈示された(手がかり呈示条件)。残りの半数の参加者には,手がかり画像をブランク画面に代えた映像が呈示された(手がかり非呈示条件)。映像呈示後,教示あり条件では,実際の手がかり呈示とは無関係に「先ほどの映像の中に一瞬だけヒントが映し出されていた」と教示が与えられた。問題の再開時に8枚硬貨問題と同時並行的に行う二重課題が与えられた。二重課題は,30秒に1度鳴る音が,一つ前に鳴った音と同じかどうかを判断する課題であった。参加者は,実験開始8分経過後,いつでも実験を終えることができた。


結果と考察
最終的に87人が分析対象となった。まず,洞察問題の解決率については,どの要因にも有意な効果は見られなかった。次に,二重課題の成績の個人差が閾下手がかりの効果にあたえる影響を探索的に検討するため,二重課題の正答率の中央値によって高群と低群にわけた。解の発見前における閾下手がかりの効果を調べるため,制約逸脱率を算出した。制約逸脱率とは,硬貨を重ねる操作の回数が全操作数に占める割合である。この課題では,硬貨を平面的に配置することが暗黙の制約になるため,制約逸脱率をこのように定義した。分析の結果,低成績群において閾下手がかりの主効果が認められた,F(1, 38)= 7.56, p <. 01(図2)。
閾下手がかりの有効性に関する無意識的判断の仮説は支持されなかった。この結果は,閾下手がかりの抑制が,入力情報全体に対して非選択的に行われている可能性を示唆する。二重課題成績の低群でのみ手がかりの効果が現れた理由は明らかではないが,この結果は,認知資源が少ないと外部からの情報を排除する機能がうまくはたらかず,閾下手がかりの取り込みが促されるという仮説と矛盾しない。この仮説の検討には,ワーキングメモリ容量に着目して,閾下手がかりの効果を確かめる必要がある。

引用文献
Hattori, M., Sloman, S. A., & Orita, R. (2013). Effects of subliminal hints on insight problem solving. Psychonomic Bulletin & Review, 20, 790–797.
西田勇樹・織田 涼・服部雅史 (2016). 見えない手がかりを意識的に取捨選択できるか:洞察問題解決と閾下プライミングを用いた検討 日本基礎心理学会第35回大会 東京女子大学 2016年10月.

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