発表

2B-033

書体と音声の協応を規定する要因の検討

[責任発表者] 金谷 翔子:1,2
[連名発表者] 吉田 弘生#:1, [連名発表者] 齋木 潤:1
1:京都大学, 2:日本学術振興会

目 的
 例えば、高い音と小さい図形、および低い音と大きい図形の組み合わせは、逆の組み合わせよりも適合的に感じられる(Spence, 2011)。この現象は感覚間協応と呼ばれ、感覚モダリティを問わず様々な知覚特徴の間に存在する。近年では高低や大小といった単純な次元のみならず、音楽や絵画のような複雑な刺激の間にも協応があることが分かってきているが、何によって特定の刺激同士が結びつくのかはまだよく分かっていない。本研究では、文字の書体と音声の協応を題材として、刺激同士の協応を規定する要因について検討を行った。ある次元に沿った軸の両極に位置する特徴(e.g., 高、低、大、小)同士が結びつく例が多いことから、書体や音声の特徴を表す軸のうち、特に顕著なものの両端に位置する刺激同士が結びつく可能性がある(軸の両端仮説)。一方で、特定の音楽と色から連想される共通の情動がこれらの刺激間に協応を生じさせるという報告によれば(Palmer et al., 2013)、類似した印象を与える書体と音声が結びつく可能性もある(共通印象仮説)。そこで、まずSD法を用いて様々な書体と音声について評定を行わせ、この結果を用いて、両仮説が支持される場合に協応を持つと考えられる複数の刺激を選出した。そして、キー押し課題における反応時間により、これらの刺激の間の協応が客観的に認められるかどうかを確かめた。


方 法

刺激
視覚刺激の候補は、「yngtj」の5文字の英数字を24の英字書体で書き表した24種類の文字列であった。聴覚刺激の候補は、18名の日本語話者が「yngtj」をアルファベット読みで音読した18種類の音声であった。予備調査では、41名の参加者が、14の形容詞対を用いて8件法で全刺激を評定した。視覚刺激と聴覚刺激それぞれの平均評定値について主成分分析を行い、第1主成分の主成分得点が正に大きい書体と音声を二つずつ(視覚刺激群A、聴覚刺激群A)、負に大きい書体と音声を二つずつ(視覚刺激群B、聴覚刺激群B)選出した。軸の両端仮説が支持されるならば、これらの視聴覚刺激群を二通りの方法で組み合わせた場合、一方の組み合わせは適合的、もう一方の組み合わせは非適合的に感じられると考えられる。例えば、視覚刺激群Aと聴覚刺激群A、視覚刺激群Bと聴覚刺激群Bの組み合わせ(A-A、B-B)は適合的に、逆の組み合わせ(A-B、B-A)は非適合的に感じられる、あるいはその逆になる可能性がある。また、同じデータを用いて、書体と音声の全てのペアについてSpearmanの順位相関係数を求めた。そして、視覚刺激群Aとの相関は強いが視覚刺激群Bとの相関は弱い二つの音声(聴覚刺激群C)と、反対に視覚刺激群Aとの相関は強いが視覚刺激群Bとの相関は強い二つの音声(聴覚刺激群D)を選出した。共通印象仮説が支持されるならば、相関の強い刺激群同士の組み合わせ(A-C、B-D)は適合的、逆の組み合わせ(A-D、B-C)は非適合的に感じられると考えられる。

手続き
 20名の参加者が、主成分分析の結果に基づいて選ばれた刺激を用いて実験を行った。異なる20名の参加者が、順位相関分析の結果に基づいて選ばれた刺激を用いて実験を行った。参加者は、呈示された文字列または音声について、左右の矢印キーのうち当該刺激に割り当てられた片方を速く正確に押して回答した。各実験で用いられる四つの刺激群のうち、左キーには視覚刺激群一つと聴覚刺激群一つが、右キーには別の視覚刺激群一つと聴覚刺激群一つが割り当てられた。各実験は二つのセッションで構成され、各キーに割り当てられる視聴覚刺激群の組み合わせがセッション間で逆になっていた。軸の両端仮説が支持されるならば、片方のセッションでは各キーに割り当てられる視聴覚刺激群が適合的となり、もう一方のセッションよりも反応が速くなると考えられる。共通印象仮説が支持されるならば、相関の強い視聴覚刺激群の組み合わせが各キーに割り当てられたセッションでは、もう一方のセッションよりも反応が速くなると考えられる。セッションは複数のブロックに分かれており、練習では視覚刺激と聴覚刺激が異なるブロックで呈示されたが、本試行では視覚刺激と聴覚刺激が同一ブロック内で、ランダム順で呈示された。


結 果 ・ 考 察
 データの記録に不備があった者など一部の参加者のデータを除いて以下の分析を行った。正答試行かつ各参加者の平均反応時間±3SD以内に反応が行われた試行の平均反応時間(単位ミリ秒)を以下の表に示す。

刺激:主成分分析刺激:順位相関分析
キー割り当て視覚聴覚視覚聴覚
A-A(C),B-B(D)513.5650.03495.0657.6
A-B(D),B-A(C)509.8634.49558.5736.1

刺激のモダリティ、反応キーの割り当て(各キーに割り当てた刺激群の組み合わせ)を要因とした二要因分散分析を行ったところ、主成分分析に基づく刺激を用いた実験では、モダリティの主効果のみが有意であった。順位相関分析に基づく刺激を用いた実験では、モダリティに加えてキーの割り当ての主効果が有意であった。この結果は、実験全体を通して音声よりも書体に対して速い反応が行われたこと、および後者の実験では、印象評定値における相関の強い視聴覚刺激を同じ反応キーに割り当てた場合は、反応の割り当てを逆にした場合よりも速い反応が行われたことを示している。このことから、様々な書体と声色のうち、比較的類似した印象を与えるもの同士が特に強く対応して感じられることが示唆される。

引用文献
Palmer, S. E., Schloss, K. B., Xu, Z., & Prado-Leon, L. (2013). Music-color associations are mediated by emotion. Proceedings of the National Academy of Sciences. 110 (22), 8836-8841.
Spence, C. (2011). Crossmodal correspondences: a tutorial review, Attention, Perception, & Psychophysics, 73, 971–995.

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