発表

2B-027

ストレッサーのタイプによるレジリエンスの影響の差異

[責任発表者] 西村 史陽:1
[連名発表者] 石垣 琢麿:1, [連名発表者] 丹野 義彦:1
1:東京大学

目的
 ストレスへの抵抗力が近年注目されているが,その一つの心理的要因にレジリエンスがある。レジリエンスとは,「困難で脅威的な状況にもかかわらず,うまく適応する過程,能力,および結果」と定義される包括的な概念で(Masten et al., 1990),多くのストレッサーに曝露されても,レジリエンス得点が高ければストレス反応が抑制されると指摘する研究は多い(小塩ら, 2002他)。しかし,ストレッサー領域別にレジリエンスが及ぼす影響について詳細に検討した研究はほとんどない。本研究では,ストレッサー領域別によるレジリエンスの影響の差異を検討することを目的とする。

方法
被験者
大学生291名(男性202名,女性89名)から回答を得た。平均年齢は19.3歳(SD = 0.88)であった。
質問紙
 a) レジリエンスを測定する尺度:齊藤・岡安(2010)の「大学生用レジリエンス尺度(Resilience Scale for Students: RS-S)」を用いた。「ソーシャルサポート」「重要な他者」「コンピテンス」「肯定的評価」「親和性」の5因子25項目からなり,回答は「全く当てはまらない(1点)」から「非常に当てはまる(4点)」の4件法で求めた。分析では,項目内容や斎藤・岡安(2011)の結果から,前者2項目を「環境レジリエンス」,後者3項目を「個人レジリエンス」と名付けた。
 b) ストレッサーを測定する尺度:高比良(1997)の「短縮版達成・対人領域別ライフイベント尺度」のうち,ネガティブライフイベント(NLE)を用いた。「対人領域」「達成領域」の2因子30項目からなっており,「経験した(1点)」「経験しない(0点)」の2件法で回答を求めた。
 c) ストレス反応を測定する尺度:鈴木ら(1997)の「心理的ストレス反応尺度(Stress Response Scale-18: SRS-18)」を用いた。「抑うつ・不安」「不機嫌・怒り」「無気力」の3因子18項目からなり,回答は「全くちがう(0点)」から「その通りだ(3点)」の4件法で求めた。
手続き
授業終了後に質問紙を配布し,無記名式で回答を得た後回収する一斉法で実施した。配布の際,本調査の趣旨の説明と,調査協力および回答の自由について告知した。

結果
 ストレッサーの領域別に,ストレス反応を従属変数とし,環境レジリエンス,個人レジリエンス,ストレッサーを独立変数,性別を統制変数とした重回帰分析を行った。対人領域について,対人領域NLEと個人レジリエンスで標準偏回帰係数が有意となり(β = .36, -.27, p < .01),環境レジリエンスは,対人領域NLEとの交互作用が有意となった(β = -.12, p < .05)。調整済み重決定係数は .24 で,1%水準で有意だった。次に達成領域について,達成領域NLEと個人レジリエンスで標準偏回帰係数が有意となった(β = .31, -.27, p < .01)。調整済み重決定係数は .20 で,1%水準で有意だった。
 有意となった交互作用について下位検定を行ったところ,環境レジリエンス高群,低群とも傾きが5%水準で有意だったが,高群の方がより緩やかな傾きとなった(Figure 1)。

考察
個人レジリエンスについて,ストレッサーの領域によらず,ストレスに対して直接低減効果をもつことが示唆された。仕事のストレスを個人内要因が抑制するということが報告されており(島津, 2010),また,類似する個人内要因を多く含むハーディネスが,ストレス反応に有効であることは知られている(城, 2010)。「コンピテンス」「肯定的評価」は特に,多くのレジリエンス尺度においても項目として採用されており(小塩ら, 2002他),これらから,個人レジリエンスは様々なストレスへの抵抗力として機能することが推察される。
 環境レジリエンスについて,特に対人領域のストレスに対して緩衝効果をもつことが示唆された。本人を支える周囲の人物の存在が,ストレスの低減に影響を与えることが先行研究でも報告されている(Harmelen et al., 2017)。また,ソーシャルサポートの高さが個人の精神的健康を高めることも知られており(浦, 1992),今回も同様の結果が生じたものと考えられる。一方,学業ストレスには影響を与えない可能性も指摘されており(嶋, 1992),達成領域における今回の結果はこれを支持すると考えられる。

引用文献
Masten, A. S., Best, K. M., & Garmezy, N. (1990). Resilience and development: Contributions from the study of children who overcome adversity. Development and Psychopathology, 2, 425-444.
小塩真司・中谷素之・金子一史・長峰伸治 (2002) ネガティブな出来事からの立ち直りを導く心理的特性: 精神的回復力尺度の作成 カウンセリング研究, 35(1), 57-65.

詳細検索