発表

2B-004

マインドフルネス特性と共感性の関係を媒介する要因の検討

[責任発表者] 日道 俊之:1
[連名発表者] 野村 理朗:2
1:高知工科大学総合研究所フューチャーデザイン研究センター, 2:京都大学

目 的
 瞑想訓練が共感性を向上させることが明らかになりつつある(e.g. Weng et al., 2013)が,共感性は複数の次元から構成される心理特性であり(Davis, 1983),瞑想訓練がどのような共感の要素に影響するかという詳細な効果メカニズムは不明である。瞑想訓練によりマインドフルネス特性が向上する(Baer et al., 2008)ため,この特性と共感性の関係を検討することがその理解に貢献すると考えられる。先の研究(Himichi et al., 2016)では,マインドフルネス特性のうちObserving(OB)及びActing and Awareness(AW),Discribing/Labelingが共感性に正の効果,Non-judgementが負の効果を及ぼすことが示唆された。
本研究では,これらの関係の媒介要因として主に着目した1つ目の候補は感情調整であり,瞑想訓練が共感において感情調整に関連する脳領域の活動に影響することが示されている(e.g. Weng et al., 2013)。2つ目はエフォートフル・コントロールであり,瞑想訓練により認知制御が向上すること(Eberth & Sedlmeier, 2012),認知制御が他者の視点取得に重要であること(van der Meer et al., 2011)が示されている。3つ目は,マインドフルネス特性(Baer et al., 2006)や共感性(Bird et al., 2010)と負の関連にあることが示されているアレキシサイミア傾向である。本研究では,これらの特性がマインドフルネス特性と共感性の関係を媒介するか否か検討することを目的とした。

方 法
参加者: 本研究には株式会社マクロミル社にてモニター登録をしている20 – 59歳の成人516名(男女258名,平均年齢39.45歳,SD = 11.10)が参加した。
手続き: 本研究はウェブ調査にて行われた。共感性を測定するIRI(Interpersonal Reactivity Index: Davis, 1980; 日道他, 印刷中),マインドフルネス特性を測定するFFMQ(Five Facet Mindfulness Questionnaire; Baer et al., 2006; Sugiura et al., 2012),感情調整特性を測定する感情調節尺度(Gross & John, 2003; 吉津他, 2013),認知制御能力を測定するエフォートフル・コントロール尺度(Rothbart et al., 2000; 山形他, 2005),アレキシサイミア傾向を測定するトロント・アレキシサイミア尺度(Bagby et al., 1994; 小牧他, 2003)を用いた。
データ分析: FFMQの各尺度得点からIRIの共感的関心(EC: Empathic Concern)・視点取得(PT: Perspective Taking)尺度得点への直接効果,及びそれに対する他の尺度得点の間接効果の95%信頼区間(CI: Confidence Interval)をブートストラップ法(リサンプリング数=2000)により推定した。FFMQの各尺度得点間,媒介変数の各尺度得点間,IRIの2つの尺度の誤差項間の相関を想定したため,飽和モデルであった。

結 果
モデルの再現性: 間接効果の推定に先んじて,先の研究(Himichi et al., 2016)のマインドフルネス特性とIRIのEC・PTの関係性が再現できるか否か検討した。その結果,EC・PTに対するOB・AWの正の効果が有意だという結果が再現された(βs > .15, p-values < .006)。
間接効果: FFMQのOBとIRIのECの関係は,感情調節尺度の再評価(間接効果 = 0.03, 95%CI [.01, .08])やエフォートフル・コントロール(間接効果 = 0.02, 95%CI [.00, .05])により媒介された(図左; 間接効果の合計 = 0.06, 95%CI [.01, .11])。さらに,FFMQのAWとIRIのECの関係をエフォートフル・コントロール(間接効果 = 0.08, 95%CI [.00, .15])やアレキシサイミア傾向(間接効果 = 0.07, 95%CI [.04, .12])が正に媒介した(図右; 間接効果の合計 = 0.15, 95%CI [.06, .22])。

考 察
 結果から,OBと共感的関心の関係を再評価及びエフォートフル・コントロールが媒介することが示された。これは,内的・外的刺激への注意の訓練が,一般的な認知制御や感情のコントロールを向上させ,それらが共感的関心の向上につながる可能性を示唆する。また,AWと共感的関心の関係をエフォートフル・コントロール及びアレキシサイミア傾向が正に媒介することが示された。これは,注意の焦点化能力の訓練が,一般的な認知制御能力の向上やアレキシサイミア傾向(感情の同定困難・感情の伝達困難・外的志向)の改善を介して,共感的関心の向上につながる可能性を示唆する。
本研究から,瞑想訓練の注意制御に関する要素が共感に影響を与えるメカニズムには,共通する部分と個別の部分がある可能性が示唆された。今後の研究では実際に訓練を行い,これらの可能性を検証する必要がある。また,本研究では注意制御に関する要素と視点取得の関係性を媒介する特性がみられなかったため,今後の研究では他の特性を追加してこれを特定する必要がある。
謝辞:藤野正寛氏(京都大学・大学院生)の協力を得た。また,小牧元先生(国際医療福祉大学・教授)にトロント・アレキシサイミア尺度の使用許諾をいただいた。本研究は日本学術振興会特別研究員奨励費の助成により行われた[13J05732]。    (日道俊之・野村理朗)

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