発表

2A-098

駅名配置によって変わる垂直方向鉄道路線図の印象

[責任発表者] 神田 幸治:1
1:名古屋工業大学

目 的
 鉄道路線図は駅の位置や乗換場所など,鉄道利用者にとって必要不可欠な情報ツールである。鉄道路線図の視認性や情報獲得の容易性に関して,全体路線図や駅シンボルのデザインに関する研究が行なわれてきたのに対し(e.g. 長尾他, 2002; 鵜飼他,2002),路線図上の駅名の配置方法や書字方向の問題はこれまでほとんど検討されていない。鉄道駅券売機上やホーム上に提示される水平単一路線を想定した実験より,駅名の横書45°配置では縦書垂直配置と同等に近い視覚探索パフォーマンスが示されたが,印象評定得点は45°配置で低下した(神田・小野寺,2015; Kanda, 2016)。
 そこで本研究では,Kanda(2016)で検討されなかった垂直単一路線図について,駅名の配置や傾き(方向)がその印象にどのような影響を与えるかを調べることを目的とする。

方 法
 参加者 視力が正常な日本人大学生及び大学院生234名(19−24歳,平均20.3歳,SD=0.9歳)。
 評価項目 先行研究同様,“図が見やすい”(可視性),“駅を探しやすい”(探索容易性),“バランスがいい”(均整),“駅名が読みやすい”(可読性),“好きである”(好み)の5種類について,7点法によるリッカート尺度を作成した。
 刺激 垂直方向にレイアウトされた架空の鉄道路線図を作成した。路線は1路線で,150mm×30mmの黒色線に直径5mmの白色正円12個を中心間距離11mm間隔に配置して,各駅のシンボルを設定した。駅名はKanda (2006)で使用されたものと同様,漢字2文字及び3文字の実在する12の鉄道駅を採用した。駅名のフォントには一文字の縦横がそれぞれ約4mmからなる黒色メイリオを使用し,路線の左側あるいは右側に横書きで配置された。駅名の書字方向は,左・右各条件につき,水平,右上(反時計回り45°),右下(時計回り45°)の各条件が設定された。これら全6条件の路線図は白色A3用紙(横置き)の左側に,評価尺度が右側に印刷された。
 手続き 実験は大学の講義室に集まった約20名~80名の参加者に対して一度に実施する集合調査形式で実施した。参加者には用紙を配布,実験参加への同意を得た上で教示を行い,各路線図を筆記具にて評価させ,終了後に用紙を回収した。順序効果を考慮して,路線図の呈示順序は調査対象のブロックごとにランダムに決められた。

結 果
 回答に欠損がみられた7名を除く227名のデータを分析対象とした。各評価尺度平均値(Figure 1)について,位置(左・右)×書字方向(水平・右上・右下)の実験参加者内計画による2要因分散分析を実施した結果,“見やすい”“探しやすい”“読みやすい”の3項目で位置×方向の有意な交互作用が認められた(p<.05)。単純主効果検定より,各項目で方向が右上条件で左右配置の有意差が認められなかった以外は,右配置が左配置よりも得点が有意に高く,また左右両条件で水平条件,右上条件,右下条件の順で得点差が有意に示された(Bonferroni法による多重比較,p<.05)。交互作用が有意ではなかった“バランスがいい”“好きである”の2項目について,位置と方向の各主効果が有意であり(いずれもp<.01),多重比較の結果,両項目とも右配置が左配置より得点が有意に高く,水平条件,右上条件,右下条件の順にそれぞれ有意な差が認められた(Bonferroni法による多重比較,p<.05)。

考 察
全尺度で,駅名は路線に対して水平方向に書字した場合に評価が高く,右上方向は右下方向よりも得点が高かった。さらに駅名を路線左側よりも右側に配置する方が,評価は総じて高かった。この結果は,駅の語頭側にシンボルがある方が,また路線に対し駅名が直角に位置する方が,さらに書字方向が右下より右上の方が,それぞれ得点が高くなったという水平単一路線に対する結果と一致する(Kanda, 2016)。これより路線図の印象評価には,路線の方向とは関係しない駅名の絶対配置による評価軸が存在することが示唆される。さらに垂直路線であっても,駅名を右側に配置することで語頭側にシンボルが存在する方が,語尾側にシンボルが存在する左側配置よりも,各評価得点が高かった結果は興味深い。神田・小野寺(2015)による視覚探索実験からは,駅名の語尾側にシンボルが存在することが,駅情報の探索に優位であることが提起されているため,今回の視覚的印象の評価とは結果が一致しない。認知パフォーマンスや主観的評価に関するこれらの結果を考慮したうえで,適切な鉄道路線図ガイドライン作成に向けての知見を,今後も蓄積していくことが重要である。

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