発表

2A-096

IT機器使用時におけるわずらわしさの研究-構成概念と関連要因の検討-

[責任発表者] 藤原 厚志:1
[連名発表者] 紀ノ定 保礼:2, [連名発表者] 篠原 一光:1, [連名発表者] 柿崎 勝#:3
1:大阪大学, 2:静岡理工科大学, 3:デンソー

目 的
 日常生活で様々なIT機器を使用する際、「わずらわしい」と感じる場面が多くある。機器の操作がわずらわしいとその機器の評価が低下したり、ヒューマンエラーが増加したりする可能性がある。しかし「わずらわしさ」の先行研究は少なく、その構成概念やいかなる要因から影響を受けているのかはわかっていない。そこで本研究では若年層と高齢層を対象にわずらわしさについてのアンケート調査を行った。その結果からIT機器を利用する際に関するわずらわしさについて、その構成概念および他の要因との関連を検討した。さらに若年層と高齢層についてわずらわしさの構成概念などに違いが見られるかどうかを比較した。
方 法
 調査対象者 調査はインターネットリサーチ会社の保有する調査システムを利用して実施した。対象者は1600名(30歳代800名、65歳以上800名、男女同数)で、スマートフォンを所有している人とした。
調査票の作成 まずITに関するニュースを扱っているニュースサイト(ITmedia,ITproなど)からIT関連の記事と、インターフェースを対象とする論文から「わずらわしい」という言葉が用いられているものを153件抽出した。これらを研究者が23カテゴリーに分類し、わずらわしいと感じうる状況に関する79つの質問文を作成した。調査対象者はこれらの質問文を読み、7段階評価で回答した。しかし、今回質問文の中には調査対象者が経験したことがない状況が含まれている可能性もあった。そのため7段階評価に「経験なし」という選択肢を加えて調査を行った。
 調査内容 本調査ではわずらわしさについての質問と同時に、調査対象者の個人特性についても質問した。これにより、個人特性とわずらわしさの関連を検討した。個人特性を測定するために、青木ら(1974)の東大式健康調査票から「直情径行性」に関する9項目と「神経質」に関する7項目を用いた。また尾崎ら(2016)のセルフコントロール尺度短縮版13項目も使用した。これはセルフコントロールがわずらわしさを感じることに対して抑制要因として働くと考えられるためである。これらの質問は全て5段階評価で行った。
結 果
 わずらわしさの分析 わずらわしさの質問項目について因子分析を行った結果、適合度や解釈可能性から3因子構造を採用した(CFI=.925,RMSEA=.035,SRMR=.038)。各因子について第1因子を「物理的な使いにくさ、使い方のわかりにくさ」、第2因子を「機器の能力不足による使いにくさ」、第3因子を「強制される手続き」と名付けた。
 個人特性との関係 初めに各個人特性の質問項目についてわずらわしさと同様に因子分析を行った。結果、東大式健康調査票は「神経質」と「直情径行性」の2因子構造(CFI=.931,RMSEA=.065,SRMR=.050)、セルフコントロール尺度は1因子構造(CFI=.962,RMSEA=.065,SRMR=030)となり、それらを分析に用いた。また個人特性とわずらわしさの関係を調べるため、構造方程式モデリングによる分析を行った。
30歳代と65歳以上の集団で、わずらわしさと個人特性の関係を比較するために多母集団同時分析を行った結果、30歳代でのみ「直情径行性」が高いほどわずらわしさは高く評価された。また「神経質」と「機器の能力不足による使いにくさ」の関係や「セルフコントロール」がわずらわしさ3因子に与える影響については、母集団間で差はなかった(図1)。

考 察
IT機器を使用する際、機器の能力、物理的な使いやすさや強制される手続きにわずらわしさの原因があることが示唆された。これらはわずらわしさの少ない機器を開発する上で、重要な要素となりうる。
 いずれの年代においてもセルフコントロールはわずらわしさを抑制する要因となることが示された。一方、直情径行性には年代による違いがあり、30歳代でのみ直情径行性が高いとわずらわしく感じられやすいことが示された。以上のことから、例えば直情径行性が高い若年者に対しては設定や登録のわずらわしさを優先的に軽減するなど、ユーザを想定したわずらわしさの対策をすることが重要であることが示唆された。

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