発表

2A-085

大学生の変化・成長と就職内定獲得有無との関連 キャリア教育科目受講前後におけるCAVTプロットの変化は2年後の就職内定獲得を予測するか

[責任発表者] 永作 稔:1
[連名発表者] 纓坂 英子:1
1:駿河台大学

目 的 日本学術会議(2008)は心理学教育が達成すべき10の学習目標のひとつに,「キャリア計画とキャリア開発の技能を習得する」ことをあげている。これは心理学教育の教養的側面のひとつであり,「正確な自己評価に基づくキャリアパス選択ができるようになること」等が望ましい心理学教育の在り方であると示唆されている。一方で近年,高等教育における教育改革の一環として低学年時から将来を見据えたキャリア教育科目を実施することが多くなった。そのような状況下において,大学生に対するキャリア教育の効果を実証しようとする動きが出ている(梅崎・田澤,2013)。キャリア教育プログラムにおける効果測定は、プログラム直後の短期的効果と、その後の長期的効果のそれぞれの側面から検討する必要がある。永作・纓坂(2013)は,下村他(2009)が開発したCAVTを用いてキャリア教育科目受講前後の得点を比較し,当該科目受講生は対照群の学生に比べて有意に得点が上昇することを示している。また永作・纓坂(2014)は,同じ科目の受講生を対象に梅崎・田澤(2013)にもとづいてCAVTプロット分析(アクション得点とビジョン得点のHL2群を組み合わせた4群に分けて質的に接近、分析する手法)を行っている。その結果,全体の52%の学生が受講後にプラス方向の変化があったことが示された。以上により短期的効果についてはある程度十分に実証されているもの,長期的効果については十分な検討が行われていない。そこで本研究では,キャリア教育科目受講後のCAVTプロットの変化は就職内定獲得を予測するかという観点から,当該科目の長期的効果について検討することを目的とする。
方 法
調査対象:首都圏私立大学心理学部を2014年度,2015年度に卒業した大学生でPre,Post,Followのすべての調査に回答した163名のうち,大学院等に進学した14名を除いた149名(男性62名,女性87名)
調査時期:Pre:2012年度および2013年度の2年次後期必修科目「キャリアデザイン」の授業初回,Post:2012年度および2013年度の同授業最終回,Follow:それぞれ約2年後の卒業式当日(2014年3月,2015年3月)
調査内容: Pre,Post: CAVT達成版(下村他,2009)アクションとビジョンの2下位尺度各6項目について5件法で評定する。Follow:就職内定獲得の有無をたずねる項目
結 果 と 考 察
CAVTプロットの変化パターンの分析 
まず, Pre−PostのCAVTプロットを調査対象者ごとに抽出し,その変化パターンを分析した。変化パターンは「停滞」,「維持」,「成長」の3群とした。停滞にはPre時点でBゾーン(HL群/LH群)もしくはCゾーン(LL群)に位置し,Post時点でも同じゾーンに留まっている学生,もしくはマイナス方向への変化があった学生を分類した。維持にはPre-Postの2時点でいずれもAゾーン(HH群)にいる学生を分類した。成長にはプラスの方向に変化した学生を分類した(Table1)。
つぎに,CAVTプロットの変化パターンとFollow時点における就職内定獲得有無の関連について分析を行った(Table2)。カイ2乗検定および残差分析の結果,停滞群は有意に就職内定を獲得していないこと,また成長群は就職内定を獲得する傾向が高いことが示された。
 以上の結果から,2年次後期に必修のキャリア教育科目を受講し,受講後にCAVTプロットがプラス方向に変化した学生は,そうでなかった学生と比べて,2年後の就職活動において有意に内定を獲得する傾向があることが示された。その一方で停滞群は卒業式時点に至っても内定を獲得できていない傾向があることが明らかとなった。以上の結果から,当該科目の長期的効果についてもある程度示されたと考えられる。
引用文献
永作稔・纓坂英子(2014).大学2年生に対するキャリア教育科目の効果測定V〜CAVTプロット分析による検討〜 日本教育心理学会第56回総会発表論文集,851.
下村英雄・八幡成美・梅崎修・田澤実(2009).大学生のキャリアガイダンスの効果測定用テストの開発 キャリアデザイン研究, 5, 127-139.

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