発表

2A-084

「はしのうえのおおかみ」は,改心したのか?−小学3年生,小学5年生,大学生におけるアタッチメント,共感性,道徳的判断の関連性−

[責任発表者] 中尾 達馬:1
[連名発表者] 浦崎 美由紀#:2
1:琉球大学, 2:開南こども園

問 題 と 目 的
 「道徳性・向社会性」の発達については,2014年に『発達心理学研究』や『Developmental Psychology』において特集が組まれるなど,俄に注目が集まっている(二宮・遠藤, 2014)。このような状況においてKoleva et al.(2014)は,個人差を考慮した道徳性研究が少ないことを指摘し,「アタッチメント→共感性→道徳的判断」というモデルを提案・実証した。しかし,Koleva et al.(2014)の研究は成人を対象としたものであり,児童においても先のモデルが成立するかどうかについては,検討が行われていない。このような検討を行うことは,道徳性発達の道筋を明らかにする上で重要であろう。
 そこで本研究では,小学3年生,小学5年生,大学生を対象に,『はしのうえのおおかみ』を題材とした集団読み聞かせ実験を行い,先のモデルが日本人大学生において成立することを確認した上で,児童期前期,児童期後期においても同様に成立するかどうかを明らかにすることを試みた。
方 法
調査対象者 調査対象者は,小学3年生128名(男子61名,女子67名),5年生68名(男子32名,女子36名),大学生121名(男性66名,女性55名)の計317名であった。
手続き 調査対象者は,はしのうえのおおかみ課題(集団読み聞かせ実験)へ参加した後で,アタッチメント尺度,共感性尺度に回答した。
はしのうえのおおかみ課題 この課題では,物語自体は,『はしのうえのおおかみ』(文溪堂1年生道徳副読本)の「ほら,こうすればいいんだよ,とおおかみを抱き上げて,後ろへ渡してやりました。おおかみは,はしの上から,くまの後ろ姿を,いつまでもいつまでも,見ていました。」で終了させた。そして「あなたは,くまを見送った「おおかみ」はどんな気持ちだったと思いますか」と教示し,解説書に基づき作成した4つの問いについて5件法で回答を求めた:(1)「やっぱり小さい子にはやさしくしなきゃ」と思った,(2)意地悪をした動物たちに,「ごめんなさいを言いたい」という気持ち,(3)「ぼくも,あんなふうになりたい」と思った,(4)「やさしいくまさんだな」という気持ち。以下,これら4項目の平均値を「改心」とする(α=.79)
アタッチメント尺度 小学生にはKSS15項目(中尾・村上,2016,因子名:アタッチメントの安定性)を,大学生には短縮20項目版ECR-GO(中尾・加藤,2004,因子名:不安,回避)を実施した(前者は4件法,後者は7件法)。
共感性尺度 「共感的関心(EC)」「視点取得(PT)」を測定するために,大学生には「共感性多次元性尺度」(明田,1999)を,小学生には「児童用多次元共感性尺度」(長谷川ほか,2009)を実施した(前者は5件法で,それぞれ7項目,5項目,後者は5件法で,それぞれ7項目,9項目)。
結 果 と 考 察
 まず,先行研究に基づき,各尺度の得点を算出した(α=.68~.88)。そして「改心」について,2(性別:男,女)×3(学年:小学3年,小学5年,大学生)の2要因分散分析を行った。その結果,学年の主効果が有意であり(F(2, 297)=29.21, p<.01),TukeyのHSD検定の結果,小学3年生(M=4.07)と小学5年生(M=3.88)は,大学生(M=3.17)に比べて,得点が有意に高かった。
 次に,各学年におけるアタッチメント,共感性,改心の相関係数をTable 1と2に,「アタッチメント→共感性→改心」というパス解析の代表的結果をFigure 1に示した。これらの結果から,Koleva et al. (2014)のモデルが成立するのは,小学5年生以上である可能性が示唆された。今後は,過渡期である小学4年生においても検討が必要であろう。

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