発表

2A-081

機能的行為は幼児のoverimitaionを誘発するか

[責任発表者] 谷口 雄紀:1
[連名発表者] 実藤 和佳子:1
1:九州大学

目 的
ある目的の達成に向けた一連の行為を提示するとき,目的と因果的に関係のある行為だけでなく,因果的に関係のない行為まで模倣する現象,overimitation(以下OI)が近年注目を集めている。乳幼児は目的に無関係な行為を全てOI するわけではなく,様々な要因に影響される。例えば,目的と無関係な行為が,目的から離れた対象より目的と同じ対象に行われるときにOI が生起されやすい。このことから,接触の原理(物理的接触がないときは,相互作用は起こらない)がOI に影響する可能性が想定されている(Lyons, et al., 2007)。
Hoehl(2014)の実験では,4種類の無関連な行為を提示した。その結果,Lyons(2007)と同じように,目的と同じ対象に対する行為が離れた対象に対する行為よりも模倣された。しかし,よりOIされた行為は対象物の機能に関連した行為(ボタンを押す,レバーを引く)であった一方で,OIされなかった行為は対象物とは関係の低いどのような対象でもできる行為だった(手を叩く,こする)。このことから,無関連の行為が対象の機能と関連することはOIに影響する可能性がある。
また,対象物操作に関する模倣研究から,対象物の機能を引き出す行為(機能的行為:functional action)は,どの対象物でもできる行為(恣意的行為:arbitrary action)より記憶に残りやすく模倣率が異なることが報告されている(Otural et al., 2012)。ヒトは模倣を通じて文化や技術を獲得するため,因果的に非合理的な行為の場合も行為の種類が影響する可能性が想定できるが,未だ不明である。
これらのことから,本研究では対象物の機能を引き出す行為がOIに影響するのかについて検討する。そこで,OIの課題において,無関連な行為を操作し(機能的行為もしくは恣意的行為),OIの生起率を比較する。もし機能的行為が恣意的行為よりOI が生起しやすいのであれば,因果的には非合理であっても対象物の機能に関連する行為であることが,幼児のOIをする基準であると考えられる。

方 法
対象者:5-6歳児 55名(女児31 男児24,M = 63)
手続き:目的に無関連な行為に関して,機能的行為条件と恣意的行為条件を設定し,被験者はどちらかの条件に割り付けられた(被験者間)。各条件において,実験者はゴールEと無関連な行為A(機能的行為もしくは恣意的行為)と関連のある行為Bを連続提示したあと,装置を渡し,対象児にゴールのみを達成することを求めた。反応を観察した後,装置を変え同じ手順を行った。この手順を1人に対して5回行った。参加者が行為Aと行為Bの両方を再現したときにOI得点として記録した。得点のレンジは0~5である。実施順序は被験者間でカウンターバランスをとった。

結 果
目的に無関連な行為が機能的行為か恣意的行為の違いによって,OIに差があるのかについてt検定を行ったところ機能的行為がより模倣された(t = 8.43, df = 53, p < .001:図1)。

考 察
本研究では,対象物に対する行為を,機能を引き出す行為(機能的行為)とどのような対象物にでもできる行為(恣意的行為)に分類し,OIへの影響を調べた。行為の種類による差がみられ,行為の種類がOIに影響することが分かった。従来の模倣と同じように,目的に無関連な行為の場合でも,機能的行為が記憶に残りやすいため,機能的行為が恣意的行為よりも模倣された可能性がある。このことから,因果的には非合理であっても対象物の機能を引き出す行為であることが,幼児が模倣・学習する基準であると考えられる。今後,幼児のOIを促進する行為について調べ,幼児におけるOIをするかどうかの境界線(基準)について更に検討をすすめたい。

引用文献
Hoehl, S., et al. (2014). The role of social interaction and pedagogical cues for eliciting and reducing overimitation in preschoolers. Journal of Experimental Child Psychology, 122, 122-133.
Lyons, D. E., et al. (2007). The hidden structure of overimitation. Proceedings of the National Academy of Sciences, 104(50), 19751-19756.
Óturai, G., et al. (2012). The role of object functions for deferred imitation–Do infants selectively retain and forget target actions?. Infant Behavior and Development, 35(2), 195-204.

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