発表

2A-079

女子中学生の自己価値の推移と対人関係要因−3年間の縦断データより−

[責任発表者] 相良 順子:1
[連名発表者] 鈴木 悦子:2
1:聖徳大学, 2:聖徳大学保健センター

目 的
 自尊心,自己受容など自己評価に関する概念を扱った研究では,中学生の女子においてそれらの変数が低下することが多くの研究者から指摘されている(e.g. 梶田,1980; 真栄城, 2005)。そのような研究では,女子の他者を気遣う特性が可能性として指摘されている。本稿では,女子中学生のコンピテンスとしての自己価値の推移を縦断的に追い,また,対人関係のあり方に影響を及ぼす要因と思われる社会コンピテンス,及び賞賛獲得と拒否回避との関連を検討した。

方 法
 調査対象 大学の附属の女子中高一貫校の生徒を対象にした。201X年に入学した中学生1 年次(87名),2年次(83名),3 年次(69名)のデータを使用した。
 調査時期 201X年から3年間,毎年7月に調査を実施した。
手続き 質問紙調査法。調査票は担任を通じて配布,回収された。
 内容 (1)自己価値 児童用コンピテンス尺度(桜井,1992)の自己価値と社会コンピテンスを使用した。各10項目,4件法(1点~4点)による回答。 (2)賞賛獲得・拒否回避 小島・大田・菅原(2003)の作成した賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度。賞賛9項目,拒否回避9項目の計18項目。5件法(1点~5点)。
 本研究は,聖徳大学「ヒューマンスタディに関する倫理審査委員会」の承認を得て実施した。

結 果
1.自己価値の推移
 中1から中2,中3までの自己価値の回答が揃っている57名の平均値を算出したところ,中1から中2にかけて自己価値が減少しているのが明らかになった(中1:M=23.9 (SD=6.2 ),中2:21.4(6.0)中3:21.8(6.3))。
2.自己価値の減少群と増加群別分析
 自己価値が1年生から2年生へ減少した群50名の減少得点の平均値を算出し,平均値より大きい群を減少大群, 小さい群を減少小群とした,それに加えて1年生から2年生へかけて増加した群を増加群とした。3年間のデータが揃っている者は,減少大群は16名,減少小群は24名,増加群は17名であった。3群の3年間の得点の推移を図に表したものがFigure1である。減少大群が1年から2年にかけて大きく自己価値が低下するものの,3年生になると増加していた。一方,減少小群は,1年生から2年生にかけて自己価値が低下していたが,減少大群ほど大きな変化はなかった。また,増加群は,1年生のときは減少大群よりも有意に小さかったが,1年生から2年生にかけて急に増加したことがわかった。
3.社会的コンピテンス,拒否回避欲求の推移 
 社会コンピテンス,および賞賛獲得と拒否回避について,分散分析を行った結果,社会コンピテンスにおいて学年と群の交互作用(F=3.53, p<.05)がみられ,Figure1の図と良く似た図が得られた。減少大群は2年生の時の社会コンピテンスにおいて増加群よりも有意に得点が低かった。賞賛獲得と拒否回避では得点の推移の違いは見られず,交互作用もみられなかった。しかし,拒否回避では3群間で異なる推移の傾向がみられた(Figure2参照)。
Figure1 自己価値の3群別推移

Figure2 自己価値変化3群における拒否回避の推移

4.自己価値と社会コンピテンス,賞賛獲得,拒否回避との1年次(N=86)の相関
各変数の相関は,自己価値と社会コンピテンスは.68***,賞賛獲得とは.38***,拒否回避は-.18†であった。

考 察
 先行研究で示されたように,中1から中2にかけて,自己価値の平均値は下がるが,自己価値が低下した者の中には,自己価値が上昇した群や大幅に減少した群とそうでない群があり,大幅に低下した群は,拒否回避が1年生から2年生へかけて上がる傾向が示された。自己価値と社会コンピテンスとの高い相関を考えると,大幅に低下した群は,友人との付き合い方に自信を失い,周囲に気を使いながら対人関係を維持しようとしている者と推察される。この群の中学生を臨床的な観点から検討することが重要であろう。

付記  本研究は科研費(26380949)の助成を受けた

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