発表

2A-078

計算時の指の利用と計算における自己概念との関連ー小学5・6年生を対象とした質問紙調査による検討ー

[責任発表者] 浅川 淳司:1
[連名発表者] 河村 智美#:2
1:金沢大学, 2:三田市立つつじが丘小学校

目的
近年,認知科学などの様々な分野で身体性という言葉がキーワードになりつつある。数学的な能力についてもLakoff&Núñez(2000)が,その獲得過程で生じた感覚と運動経験が数知識の一部を構成していると主張しており,数にとって重要な身体は,手指である。本研究では,特に計算時の指の利用に着目して,計算能力の発達と手指の関係について検討する。杉村・小山(2006)は短大生,専門学校生,大学生を対象に計算時の指の利用の終わる時期と算数・数学の自己概念の関係を検討している。その結果,「小学1・2年生の頃,計算は得意でしたか?」,「小学5・6年生の頃,算数は得意でしたか?」,「現在,算数や数学は得意ですか?」,「現在,算数や数学は好きですか?」という質問に対する回答は,「はい」と答えている割合が,いずれも,「指を使っていない」群で一番高く,「小1まで」群と「小2まで」群,「小3から高校まで」群と「現在も」群の順に低くなっていた。つまり,指を利用していた期間が長い群ほど,計算が不得意で嫌いなものが多いことが示唆された。しかしながら,杉村・小山(2006)の調査は,18歳以上の成人を対象としており,「覚えていない」が25%程度存在した。そこで,本研究では,より記憶が定かでありかつ指の利用が終わっていると想定される小学5・6年生を対象に,計算時の指の利用の時期と計算における自己概念の関係を検討する。
方法
参加者82名の小学5・6年生が参加した(男児=47名,女児=35名)。調査内容第1に,指の利用の有無について尋ね,「はい」,「いいえ」,「覚えていない」の中から選択してもらった。第2に,指の利用時期について尋ね,「小学校入学前」,「小1まで」,「小2まで」,「小3まで」,「小4まで」,「小5まで」,「現在も使用」,「覚えていない」の中から選択してもらった。第3に,小学校1・2年生時の計算の得意・不得意について尋ね,「かなり得意」,「得意」,「どちらかというと得意」,「どちらかというと苦手」,「苦手」,「かなり苦手」,「覚えていない」の中から選択してもらった。かなり得意を6点,かなり苦手を1点とし,順に得点化した。「覚えていない」を選択した場合には,得点として集計しなかった。第4に,現在の計算の好き嫌いについて尋ね,「かなり好き」,「好き」,「どちらかというと好き」,「どちらかというと嫌い」,「嫌い」,「かなり嫌い」の中から選択してもらった。かなり好きを6点,かなり嫌いを1点とし,順に得点化した。最後に,現在の計算の得意・不得意について尋ね,「かなり得意」,「得意」,「どちらかというと得意」,「どちらかというと苦手」,「苦手」,「かなり苦手」の中から選択してもらった。かなり得意を6点,かなり苦手を1点とし,順に得点化した。
結果と考察
まず,いつまで計算時に指を使用していたかについて集計した。手指を使用していた時期は,就学前から小学2年生までが多かった(就学前9名,1年生24名,2年生12名,3年生3名,4年生0名,5年生2名,現在まで4名)。他方で,一定程度手指を利用していない人もいることが示唆された(9名)。また,小学5・6年生を対象にしたものの14名の参加者が利用の有無について覚えていないと回答した。次に,計算時の手指の利用期間と計算に対する自己認識得点の関係について検討した。「3年生まで」,「5年生まで」,「現在まで」が少数であったため,「3年生まで」を「2年生まで」とまとめ,「5年生まで」と「現在まで」をまとめて集計した(Table1)。小学校1・2年生時の計算の得意・不得意については,分散分析の結果,指の利用期間で有意な差が見られた(F(3,47)=9.803,p=.000)。多重比較の結果,「小学校入学前」群および「1年生」群と「2・3年生」群の間に有意な差が見られた(p<.05)。また,現在の計算の得意・不得意についても,指の利用期間で有意な差が見られた(F(3,49)=4.571,p=.007)。多重比較の結果,「小学校入学前」群と「2・3年生」群の間に有意な差が見られた(p<.05)。現在の計算の好き・嫌いについては,群間で差は見られなかった。以上より,早くに指の利用を終えている方が,自分は計算を得意だと思っていることが示唆された。一方で,「5年生から現在」との差はなかったことから,2・3年生で使い終わるかどうかがひとつのポイントになっている可能性が考えられる。

詳細検索