発表

2A-077

幼児期における子ども同士の共同活動の発達的変化

[責任発表者] 沖田 夏美:1
[連名発表者] 実藤 和佳子:1
1:九州大学

目 的
 就学前児の相互作用について,乳児は1歳以前から他児に興味を示し,じっと見つめるようになることが観察されている(伊志嶺,1989)が,子ども同士の相互作用がいつから始まるのか,具体的には明らかにされていない。また就学前児同士の共同活動とそれに伴う話し合いについて,3歳児よりも5歳児の方が自分の意見の正当化を多くするということ,話し合いが双方の合意に終わりやすいということが先行研究より明らかにされている(Köymen et al. 2014)。しかしこの研究では子ども同士の共同活動場面における相互作用の言語的な側面にのみ着目しており,非言語的な要素については検討されていない。本研究では2〜6歳児を対象とすることで,就学前児同士の共同活動における相互作用の起源や発達の過程を明らかにすることを目的とする。さらに就学前児同士の相互作用について非言語的な側面からも検討し,就学前児同士の相互作用について複数の観点から明らかにすることを目的とする。

方 法
参加者 保育園に通う2〜6歳児。保育園における参加者の担当保育士の推薦に基づき,お互いに顔見知りであり,同年齢・同性同士であるペアを作成した。
課 題 動物園に見立てた布の上に,初めに実験者が動物園の入り口を子どもにどこに置くのがよいか尋ねながら置く。その後実験者が退室し,子ども同士で話し合いながらアイテムを配置して動物園を作ってもらう。アイテムには場面に適したアイテム(一般的に動物園で見られる,普通の動物・檻)と場面にそぐわないアイテム(一般的に動物園で見られない,架空の動物・家具)があり,動物(普通の動物・架空の動物),檻,家具の順で配置してもらう。全てのアイテムの配置が終わったら実験者が入室し,それぞれのアイテムについてそこに配置した理由を子どもたちに尋ねる。
測 定課題の様子をビデオカメラで記録し,子どもたちが2人でアイテムを配置している間の発言及び行動の頻度について以下の項目で分析した。(1)言語的方略:アイテムの配置についての明確な提案,不明確な提案,提案に対する根拠に基づく正当化,事実に基づく正当化,賛成,反対,言語的制御,オープンクエスチョン,その他,(2)非言語的方略(Heater, 2003):非言語的制御,譲渡,ジェスチャー,(3)話し合いの結果:双方の合意,片方の意見,暗黙の合意,相互作用なし,うやむや

結 果
 場面に適したアイテムに関係する相互作用行動と場面にそぐわないアイテムに関係する相互作用行動に差があるかどうかを調べるために,全ての分析項目において,年齢とアイテムの種類を独立変数,それぞれの相互作用行動の回数を従属変数としたアイテムの種類×年齢の2要因分散分析を実施した。
 その結果,言語的方略について,明確な提案の回数に年齢の主効果が見られた(F(4,41) = 8.970 , p < .001)。多重比較を行ったところ,2歳と4・5・6歳の間で有意な差が見られた。また不明確な提案の回数についても年齢の主効果が見られた(F(4,41) = 5.428, p < .001)。多重比較を行ったところ,2歳と3・6歳の間で有意な差が見られた。主張に対する根拠に基づく正当化の回数にも年齢の主効果が見られた。多重比較を行ったところ,2歳と5・6歳,3歳と5・6歳,4歳と5・6歳の間でそれぞれ有意な差が見られた。
 非言語的方略については,全ての項目についてアイテムの種類と年齢の主効果が見られなかった。

考 察
 就学前児同士の共同活動場面における相互作用の起源について,2歳児では自分の意見の提案やそれに対する正当化をする行動は,ほとんど見られなかった。この結果より,相互作用行動のうち言語的なものは3歳ごろから見られ始めるのではないかと考えられる。
 他児に自分の意見を提案する行動について,提案の明確な提示は5歳までにできるようになることが示唆された。提案の不明確な提示については2歳の時点ではまだ難しく,3歳からできるようになるのではないかと考えられる。
 提案に対する根拠に基づく正当化の行動は2・3歳では見られず,4〜6歳では明確な提案の行動と同様に見られた回数が変化した。この結果より,就学前児は4歳から,自分の意見を他児に伝える際,根拠に基づいた正当化を伴う明確な提案を示すことができるようになることが示唆された。これは2歳ごろから家族やきょうだいに対して自分の主張の正当化をするようになるという先行研究(Mercier et al., 2011)とは一致しなかった。先行研究と本研究では子どもがやり取りをする相手が異なるため,その要因が影響したのかもしれない。

引用文献
Heather A. (2003). Preschool children's collaborative problem-solving interactions: The role of gender, pair type, and task. Sex Roles, 48, 505-517.
伊志嶺美津子. (1989).乳幼児の社会的行動について:日米の0・1歳児の観察から. 研究紀要, 6, 1-14.
Köymen, et al. (2014). Reasoning during joint decision- making by preschool peers. Cognitive Dev., 32, 74-85.
Mercier, H. (2011). Reasoning serves argumentation in children. Cognitive Dev., 26, 177-191.

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