発表

2A-059

コカ・コーラのテレビ広告は条件づけ法則に合致しているか?—1960~1990年代放映のCMフィルム58本の分析—

[責任発表者] 中島 定彦:1
[連名発表者] 三好 由佳子#:1
1:関西学院大学

目 的
 商品広告は古典的条件づけの日常例として、しばしば学習心理学の教科書で取り上げられる(例えば、Chance,2003)。実際、米国コカ・コーラ社は条件づけ原理に基づいて広告を作成している(Koten, 1984)。しかし、テレビCMフィルム(以下、CF)では、商品(条件刺激, CS)が紹介される前に快感情を喚起する画像や音楽(無条件刺激, US)が呈示される逆行条件づけの手続きになっていることが多い。われわれが過去に「化粧品・トイレタリー」のCF56本(15秒CF:46本、30秒CF:10本)を分析したところ、出現タイミングがCS→US(順行条件づけ)であったCFはわずか3本で、US→CS(逆行条件づけ)が33本、残り20本はCSとUSの出現が同時であった(中島, 2010)。本研究では、日本で放送されたコカ・コーラのCFを対象として同様の分析を試みた結果を報告する。なお、同商品のCFでは音楽が冒頭から用いられることが多いため、本研究では音楽をUS事象から除外した。

方 法
 1962~1999年に放映されたコカ・コーラのCF159本を収録したDVD(The Coca-Cola TVCF Chronicles 1 & 2)から、30秒CFすべて(1960年代7本、1970年代7本、1980年代21本、1990年代23本、合計58本)を分析した。各CFについてコマ送りで再生・停止を繰り返し、「商品映像」「商品ロゴ」「商品音声」(以上、CS事象)、「風景・イベント」「タレント」(以上、US事象)の出現・消失を部分インターバル法(1秒間に一瞬でも出現すれば事象ありとする)で記録した。

結 果
 CS事象とUS事象の出現順序は、CS→USが8本、US→CSが28本、同時が6本、CSのみ16本で、逆行条件づけ順序のCFが最も多かった。音楽をUS事象に含めると、逆行条件づけCFはより多くなる。右図に各年代における5カテゴリの生起頻度を時間軸に沿って示す。自然回帰が謳われた1970年代には風景映像が冒頭から使用されており、7本すべてUS→CS順であった。1990年代は順行と逆行が各5本であった。

考 察
 逆行条件づけは順行条件づけよりも条件反応形成に劣る手続きである。商品広告の実験でも逆行条件づけによる商品印象の向上効果は小さいという報告がある(Stuart, Shimp, & Engle, 1987; Kim, Allen, & Kardes, 1996)。実際のテレビCFで感情喚起事象が商品事象より先に呈示されがちであることは、CSとUSの位置づけを反対に捉える(感情喚起CSが商品USを想起させる手続きとみなす)ほうがよいことを示唆している。あるいは、古典的条件づけ以外の心理作用が広告効果の主たる原因であるとみなすべきかもしれない。例えば、感情喚起事象による動機づけの高まりによって、商品が受け入れやすくなるのかもしれない。
引用文献
Chance, P. (2003). Learning & behavior (5th ed.). Belmont, CA: Wadsworth.
Kim, J., Allen, C. T., & Kardes, F. R. (1996). An investigation of the meditational mechanisms underlying attitudinal conditioning. Journal of Marketing Research, 33, 318-328.
Koten, J. (1984, January 19). Coca-Cola turns to Pavlov… Wall Street Journal, p. 1.
中島定彦 (2010). テレビCMは逆行条件づけか? 人文論究(関西学院大学文学部), 60(2), 39-53.
Stuart, E. W., Shimp, T. A., & Engle, R. W. (1987). Classical conditioning of consumer attitudes: Four experiments in an advertising context. Journal of Consumer Research, 14, 334-349.

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