発表

2A-028

コンピュータ心身症状尺度の開発

[責任発表者] 本間 拓人:1
[連名発表者] 守谷 順:1
1:関西大学

目 的
 近年, コンピュータ関連の技術発展によりパーソナルコンピュータやスマートフォンといったコンピュータ機器が広く普及している。コンピュータ機器が普及し始めた1980年代後半には, コンピュータ機器が労働の現場に持ち込まれ始め, コンピュータ機器の使用に対して,どのような精神的負担が強いられるか, 職業従事者を対象に盛んに研究され始めた。
コンピュータ機器の使用による症状について,Craig(1984)は「テクノ依存症」と「テクノ不安症」の2つの症状を提唱している。テクノ依存症は,コンピュータ機器に対して没頭しすぎることにより, コンピュータ機器が無いと不安を感じる, 人付き合いを煩わしいと思うようになる症状である。テクノ不安症は, コンピュータ機器を使う必要に迫られ, コンピュータ機器になじめず, 機器の操作に苦痛を感じることで体調を崩してしまう症状である。井垣・阪本(2014)によればコンピュータ機器を使用する作業の長時間化が眼精疲労,肩こり,腰痛等の身体的疲労症状及び精神的疲労を発症するとして社会問題となっており, その対策が大きな課題であると言及している。本研究は, コンピュータ機器に関する不安・依存・心身の症状について同時に測定することのできる, 職業従事者以外も使用可能なコンピュータ心身症状尺度(Computer Psychosomatic Symptom Scale: CPSS)を開発し, 信頼性と妥当性について検討することを目的とする。予備調査として項目収集の調査を行い, 研究1で探索的因子分析及び確認的因子分析とα係数信頼性の検討を行う。また研究2では, 作成した尺度の基準関連妥当性について検討する。

方 法
 予備調査では, 大学生30名(男性12名, 女性18名,平均年齢21.7 (SD = 4.66))を対象に自由記述による項目収集の予備調査を行った。
 研究1では, 自由記述による調査とテクノ依存症・テクノ不安症の定義より, コンピュータ機器の使用によって生じる症状や特徴の項目を作成した。探索的因子分析(最尤法, Promax回転)と確認的因子分析を行い尺度の検討を行った。また信頼性(α係数)について検討した。分析には回答に不備のなかった216名(男性74名, 女性141名,不明1名,平均年齢19.81(SD = 0.88))分のデータを用いた。
 研究2では, 基準関連妥当性検討を行い, 分析には回答に不備のなかった185名(男性55名, 女性129名, 性別不明1名, 平均年齢19.27(SD = 1.25))分のデータを用いた。質問紙は本尺度とスマホ依存尺度(戸田他, 2015)や日本版精神健康調査票短縮版GHQ30(中川・大坊,1985)などを使用した。

結 果
 予備調査により, コンピュータに対する精神的・身体的症状の傾向について62項目を作成した。
 研究1では, 探索的因子分析により5因子45項目が抽出された。また, 確認的因子分析は, 5つの因子からそれぞれ該当する項目が影響を受け,すべての因子間に共分散を仮定したモデルで分析を行った。修正指数を考慮し, 分析を行ったところ, 適合度指標はχ2 = 1100.869, df = 889, p < .001, GFI = .830,AGFI = .802, NFI=.792, CFI=.951, RMSEA = .033, SRMR=.0498, AIC = 1392.869であった。α係数は, 不安症的特徴α = .916, 身体症状α = .880,没頭症状α = .746,依存症的特徴α = .797, 反応関連ストレスα = .800であった。
研究2では, Pearsonの積率相関係数により他尺度間との相関係数を算出した(Table1)。

考 察
本研究の目的は, コンピュータ機器に関する不安や依存, ストレス, 心身の症状について測定することのできる尺度を作成し, 信頼性及び妥当性の検討を行うことであった。
研究1において5因子45項目(5件法)からなるコンピュータ心身症状尺度(CPSS)を確定することができた。尺度の確定にあたり, 探索的因子分析・確認的因子分析を行い, α係数信頼性を検討したところ, 尺度の構成に問題がないことが確認され, 信頼性も十分に認められるものであった。
次に, 研究2においてCPSSを構成する5因子45項目の基準関連妥当性を検討した。その結果, 本尺度は, 十分な妥当性を有した尺度であったことが確認された。したがって本尺度は,コンピュータ機器の使用によって生じえる心身症状について測定することができる尺度であると考えられる。

引用文献
Craig, B.(1984). Technostress. Addison-Wesley. (クレイグ, B. 池央耿・高見浩(監訳)(1984).テクノストレス 新潮社)
井垣 通人・阪本 一朗. (2014). VDT 作業者の蒸しタオル装用による目の愁訴, 視機能, 作業効率改善効果. 日本職業・災害医学会会誌, 62(1), 8-16.

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