発表

2A-010

特性シャイネスの日米間比較―今なお「日本人はシャイ」か―

[責任発表者] 稲垣(藤井) 勉:1,4
[連名発表者] 澤海 崇文:2,4, [連名発表者] 相川 充:3,4
1:鹿児島大学, 2:流通経済大学, 3:筑波大学, 4:教育テスト研究センター(CRET)

目 的
 シャイネスとは,対人場面において生じ,社会的不安と対人的抑制という特徴を持つ情動的かつ行動的な症候群である(Leary, 1986)。特性としてのシャイネスの高さは,特性不安の高さ (藤井, 2013),孤独感の高さや自尊心の低さ (相川, 1992),対人相互作用における発話の少なさなどと関連している。
 Zimbardo (1977) は,シャイネスは万人に共通した経験であると述べている一方,日本人はアメリカ人に比してシャイネスが高いと推測している。これに関連して,Klopf & Cambre (1979) は,日本人や韓国人は,アメリカ人よりコミュニケーション懸念が高いことを示している。
 彼らの研究から40年ほど経過した現在,その様相はどのようになっているであろうか。近年の研究 (Aizawa & Whatley, 2006) は,日本とアメリカの大学生を比較した場合,日本人大学生のシャイネスはアメリカ人大学生より高いことを示している。ただし,Aizawa & Whatley (2006) のサンプルは各国ともに数十名の大学生であり,限られた人数であることが指摘できる。そこで本研究では,日本とアメリカを対象に大規模な調査を実施し,特性シャイネスの日米間比較を行う。

方 法
 研究対象者 インターネット調査会社のモニタの協力を得て,日本人1448名 (男女各724名,16—69歳),アメリカ人1400名 (男女各700名,16—68歳) から回答を得た。
 材料 特性シャイネス尺度 (相川, 1991) を使用した。アメリカ版への翻訳にあたっては,調査会社に翻訳を依頼した上で,著者全員で項目の確認を行った。16項目,5件法である。
 手続き 調査は2016年3月 (日本) および2017年2月 (アメリカ) に実施した。研究対象者は調査会社より案内されたURLにアクセスし,年齢や性別などのデモグラフィック項目を含む複数の尺度への回答を行った。いずれの国においても,特性シャイネス尺度の他に,複数の尺度を用いた測定を行っているが,本報告の目的とは異なるため割愛する。

結 果
 尺度の得点化 特性シャイネス尺度について,人種ごとに主成分分析を行ったところ,日本人においては45.87%,アメリカ人においては44.16%の寄与率が得られたため,1因子解として逆転項目を処理した上で合算平均値を求め,特性シャイネス得点とした。得点が高いほど,特性シャイネスが高いことを示す。なお,信頼性の推定値としてCronbachのα係数を算出したところ,日本では.92,アメリカでは.91という十分な値が得られた。
 分散分析 続いて,特性シャイネス尺度の得点を従属変数,人種 (日本人・アメリカ人) と性 (男性・女性) を独立変数とする二要因分散分析を実施した。その結果をFigure1に示す。
 まず,人種の主効果が有意 (F (1, 2844) = 41.14, p < .001, ηp2 = .01) であり,日本人 (M = 3.21, SD = 0.72) はアメリカ人 (M = 3.03, SD = 0.77) より特性シャイネスが高かった。
 続いて性の主効果も有意であり (F (1, 2844) = 22.84, p < .001, ηp2 = .01),女性 (M = 3.19, SD = 0.76) は男性 (M = 3.06, SD = 0.74) より特性シャイネスが高かった。
 そして,人種と性の交互作用も有意であり (F (1, 2844) = 6.48, p = .01, ηp2 = .002),単純主効果の検定を行った結果,男女ともに日本人はアメリカ人より特性シャイネスが高かった。また,アメリカにおいて女性は男性より特性シャイネスが高かったが,日本において男女の差は有意ではなかった。

考 察
 本研究は,Zimbardo (1977) やKlopf & Cambre (1979) の調査から40年ほどが経過した現在においても,当時と同様に日本人のシャイネスがアメリカ人と比して高いか否かを検討したものである。また,Aizawa & Whatley (2006) におけるサンプル数の課題を克服するために,大規模なデータを収集して分析を行った。
 その結果,現在においても日本人のシャイネスは男女ともにアメリカ人より高いことが確認された。そして,日本人においてシャイネスの得点に性差がみられなかったことは,相川 (1991) の結果が再現されたといえる。一方,アメリカ人においては男女間で有意差がみられ,Elkind & Bowen (1979) の結果と一致している。
 このように,日米間のシャイネスの差異や性差について,40年前の研究と同様の傾向が観察されたといえるが,本研究で実施した分散分析における効果量は小さく,大きな差とはいえないかもしれない。日本人におけるシャイネスのイメージはややポジティブに変容しているとの報告もあり (藤井・澤海・相川, 2016),こうした点も踏まえて,さらなる検討を行うことも一考に値すると思われる。

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