発表

2A-006

保育士のDark Triad (2):バーンアウトとの関連

[責任発表者] 阿部 晋吾:1
[連名発表者] 太田 仁:1
1:梅花女子大学

目 的
 Dark Triadに関するこれまでの研究は,職場における不適切で非倫理的な行動,学校でのカンニングや剽窃,一般的な対人関係における衝動的な性行動や反社会的行動など,非適応的な行動との関連が主に扱われてきた(Furnham et al., 2013)。たとえばDark Triadと職場行動との関連を調べたメタ分析(O’Boyle et al., 2012)においても,マキャベリアニズムとサイコパシーの高さは,職務成績の低下につながること,非生産的活動にはDark Triadの全ての側面が関連していることが明らかとなっている。その一方で,サイコパシーは職業上の成功に結びつく場合があること(例えば,Dutton, 2012)など,Dark Triadの適応的な側面も注目されつつある。Jonason et al. (2012)は,Dark Triadの中でもサイコパシーが高い個人は,ビジネス場面における他者操作方略として,“脅し”などの強硬な方略をとりやすい一方で,自己愛傾向が高い個人は,“お世辞”などの穏当な方略をとりやすく,さらにマキャベリアニズムが高い個人は,強硬と穏当の両方の方略を用いることを明らかにしている。
 こうしたDark Triadと職業生活との関連が明らかになる中で,Dutton(2012)は,職業ごとのサイコパシーの水準を調査し,介護士,看護師,教師といった対人援助職に就いている個人は,サイコパシー得点の水準が他の職業に比べて低いことを明らかにしている。また,発表(1)においても,保育士は大学生を対象者とした従来の研究(田村他, 2015)に比べても,Dark Triadの得点が低いことが示唆されている。こうした職業は,Dark Triadが高い個人には不向きなのであろうか。また,それによって精神的健康に悪影響は生じやすいのだろうか。なお,福井他(2016)は高校生を対象として,Dark Triadと抑うつとの関連について検討し,サイコパシーは抑うつと正の関連を示すことを明らかにしている。
保育士のストレスやメンタルヘルスに関する研究では,環境要因としては職務環境,職場での人間関係などの影響が,また個人要因としては勤務経験年数,ストレッサーへの対処方略などの影響がこれまで検討されてきているが,パーソナリティとの関連について検討した研究は少ない。そこで本研究では,保育士のDark Triadとバーンアウトとの関連について検討する。

方 法
実施方法と対象者 発表(1)と同じ。
質問項目 Dark Triad:発表(1)と同じ。
 バーンアウト:久保・田尾(1992)のバーンアウト尺度を使用した。ただし,“同僚や患者”という表記は,“同僚や園児”に修正した。計17 項目3因子で構成され,選択肢は“1.ない”から“5.いつもある”までの5件法である。本研究における各下位尺度のα係数は,情緒的消耗感がα= .85,脱人格化がα=.77,個人的達成感がα=.77であった。
結 果
 相関分析 保育士経験年数,Dark Triadの下位尺度,バーンアウトの下位尺度の相関係数をTable 1に示す。

Table 1 経験年数,Dark Triad,バーンアウトの相関係数








保育士経験年数と,自己愛傾向および個人的達成感との間に有意な正の相関がみられた。また,サイコパシーは,脱人格化との間に有意な正の相関がみられた。
重回帰分析 次に,保育士経験年数とDark Triadを独立変数,バーンアウトの各下位尺度を従属変数とした重回帰分析を行った。標準偏回帰係数および重相関係数をTable 2に示す。

Table 2 バーンアウト下位尺度を従属変数とした重回帰分析







情緒的消耗感,脱人格化に対しては,いずれの独立変数も有意な関連を示さなかった。個人的達成感に対しては,保育士経験年数が有意な正の関連を示すことに加えて,マキャベリアニズムは有意な正の関連,サイコパシーは有意な負の関連を示すことが明らかとなった。

考 察
重回帰分析では有意とはならなかったものの,単相関においてはサイコパシーが高いほど,脱人格化しやすいという関係がみられた。Dark Triadの中でもサイコパシーに顕著に表れる他者への冷淡さが,バーンアウトの症状としても対人的な側面に現れやすいのかもしれない。一方,単相関では有意にならなかったが,重回帰分析では,マキャベリアニズムが高いほど,またサイコパシーが低いほど,個人的達成感が高まることが明らかとなり,全般的に,サイコパシーはバーンアウトを引き起こしやすい性格特性であることが示唆された。ただし,本研究の結果は限られた調査対象者から得られたデータに基づくものであり,結果の一般化にあたっては,より幅広いサンプルによる詳細な検討が今後必要である。

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